【人手不足にロボット】今日から成果が上がる現場は? | 東京IT新聞

【人手不足にロボット】今日から成果が上がる現場は?

ソリューション ロボット

【記事のポイント】
▼実用レベルで代行できる、いちばんわかりやすい業務は問診(事前調査)
▼ロボットによる接客負荷の軽減が、現場で必要とされる人員の削減につながる
▼アンケートでは集計の自動化、回収率の向上といった利点も


■町で見かけるロボットは、人手不足を解消するか?

 就職活動における売り手市場の状況が続いている。文部科学省が発表した「平成26年度大学等卒業者の就職状況調査」によると、リーマンショックの影響を抜けた10年以降、就職率は5年連続で上昇。特に16年4月の卒業生は就職率が97.3%と、97年以降の統計データでも最も高い数値を見せている。しかし、それは裏を返せば、企業の人手不足が深刻さを増しているという見方もできる。特に、中小企業では募集をかけても、思うような人材を確保できないケースが増えた。

 雇用において絶対数を確保できない以上、企業としては別の形で生産性を向上させる必要性に迫られている。いちばんわかりやすいのはITの導入による業務の自動化だろう。中でも今注目を集めているのが、ソフト面ではAI、ハード面ではロボットだ。

 このうち、ロボットについては製造業での活用がめだつため、そのほかの産業とはまだ縁遠いものという印象が強かった。しかし、ソフトバンクの「Pepper」が登場したことで、我々の身近でもいわゆるコミュニケーションロボットを見かける機会が増えている。この存在は中小企業にとっても、人手不足の解消に一役担う存在となっているのか? 15年に「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)を出版し、ロボット情報ウェブマガジン「ロボスタ」で連載記事を執筆している、ITジャーナリストの神崎洋治氏に話を伺った。

■接客の前段階となる情報収集をロボットに任せる

 コミュニケーションロボットのビジネスでの利用を検討する際に、そのわかりやすい用途として神崎氏が提案するのが問診だ。例えば、中古車の買い取り業務では、その前段階として車の情報を顧客から聞き出す業務を、すでにセールスマンに代わってロボットが行なっているという。

 中でも、全国で実績が上がっているのが診療所での運用だ。外来業務において患者から症状を聞き出す問診をロボットが代行。入力データは分析され、高熱の患者がいた場合にはアラートを出すこともできる。優先して診察したり、ほかの患者と隔離するなど、その処理についてもある程度自動化できるのが、紙の問診票にはない利点だ。これは、神奈川県藤沢市の「あいあい耳鼻咽喉科医院」における事例とのことだが、こうした地方にある中小規模の診療所でもロボットの導入が進んでいるという。

「情報を聞き出したり、問診票を手入力でデータ化するといった労力を軽減できるのが、コミュニケーションロボット導入によるいちばんわかりやすい省力化だと思います。また、子供を相手にしたり、セールスを行なうような接客では、ロボットを相手にする方が楽しいせいでしょうか。顧客にとっても応対しやすく、時間の短縮にもつながるようです。問診の際にも質問部分をロボットが話しかけた方が、何ページにもわたる質問事項を読むよりも、顧客の負担を軽減できます」

 実際に「Pepper」が発売されたときに、最も引き合いが強かったのが診療所だったという。また、受診時に行なう検査内容などについての説明を、事前にロボットが行なうことで、診療時間を短縮できたケースもあるようだ。


■アンケート調査員や通訳業務をロボットが担う

 業界で見ると今コミュニケーションロボットが最も普及しているのが介護の現場だ。特にレクリエーション業務では、認知症予防のゲーム、リハビリの体操などをロボットが主導。介護スタッフは要介護者の見守りに専念し、現場に必要な人手を減らすこともできるという。この分野では富士ソフトの「PALRO」が先行しており、登録されたさまざまなレクリエーションを提供するうえでの、司会進行役を務めているようだ。

 また、ロボットを購入するのではなく、短期的に利用するニーズも高い。イベントなどでは案内やアンケート調査などの人手が必要になるが、これをロボットに任せる機会も増えた。レンタル使用料を払い続けるのが難しい中小企業でも、比較的に利用が容易で、客寄せというプラスアルファのメリットもある。

「実際にロボットがアンケート調査を行なったところ、調査員を雇うよりも回収率が10~20%程度伸びたという話を聞きます。人がアンケートをお願いするよりも、ロボットが『アンケートに答えてよ』と話しかける方が注目されるというシーンは、さまざまな場所にありそうですね」

 さらに、接客業務としてはインバウンド対策が必要となる現場でも注目度は高い。こちらはまだ導入が始まりつつある状況で、観光協会が中心とのことだが、いずれ民間企業にも利用が増えていくだろう。神崎氏によると決められたシナリオに沿って受け答えをするだけであれば、すでに人と同じレベルで行なえる状況にあるという。

「以前にドン・キホーテがPepperを導入したときには、外国人が1日に200回前後利用したそうです。バーコードをスキャンさせると、Pepperが商品説明を行なうという取り組みでしたが、同じことはほかの店舗でもできると思います」

■ロボット導入のコスト、目安は“月額5万5000円”

 人手不足をロボットで解消しようと考えた時、気になるのは予算だ。それには、まずロボットを選ぶ必要があるが、神崎氏によると「介護のような特定の業種に特化したものをのぞけば、ビジネスの現場で実用レベルにあるのはPepperだけじゃないでしょうか」とのこと。ビジネス向けの「Pepper for Biz」が本体レンタル料と基本プランで月額5万5000円なので、これがひとつの目安となる。

 「Pepper for Biz」には「フリーテンプレート」機能が標準で用意されており、来店者への声かけから商品紹介、アンケート回収までの一連の動きを基本機能で行なえる。テンプレートに文字や画像を入力するだけなので、別途開発費用は必要ない。

 ただ、インターフェースの見栄えなどに手を加えるには別途開発が必要となり、外国語を話させるにも翻訳などを外部に依頼する必要があるだろう。先ほどの診療所の例でいえば、問診票から危険度の高い患者を識別することも、基本機能では対応していない。

「とはいえ、Pepperは開発の仕組みがものすごく簡単なので、外部に委託したとしても開発費は数万から数十万で収まると思います」

 また、コミュニケーションロボットというと、やはり注目されるのが会話機能だが、これはまだまだ発展途上にあるという。AIによる学習機能を利用するという手段もあるが、現状ではコストが高いので、タブレットを介した応対がまだしばらくは続きそうだ。

 こうした現状を考えると、コミュニケーションロボットのビジネス利用は、サービス産業における接客業務が主となる。それも汎用性を考えると、基本的には人間が同席するような現場で、そのアシストをロボットが担う形になるだろう。業務の分担によって複数人が必要だったスタッフの数を減らすというのが、考え方の骨子になりそうだ。

 これはスーパーにおける、客とセルフレジの関係性に近いかもしれない。接客対応が混雑しているときにロボットを使うことで、客は待ち時間を短縮でき、スタッフは負荷を軽減できる。事業者にとっては現場からの人員増強への要望対策となり、空いた時間をサービス向上につなげることもできそうだ。

【人手不足にロボット:1】今日から成果が上がる現場は?

《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》

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