沖縄の訪日観光客はなぜ、ICリストバンドを装着しているのか? | 東京IT新聞

沖縄の訪日観光客はなぜ、ICリストバンドを装着しているのか?

プロダクト ウェアラブル

【記事のポイント】
▼IT導入が、店には省力化を/観光客には利便性を/ツアー会社には利益を生む
▼免税対応のIT機能導入が、お店の商店街加盟へのきっかけに


■コミッション獲得による新ビジネスモデルを確立

 沖縄最大の繁華街である国際通り――県庁の北口スクランブル交差点を起点に、およそ1キロ半の道路沿いに多くの土産店や飲食店が軒を連ね、連日多くの観光客が訪れる那覇のメインストリートだ。現在、21年までの達成を目標として”年間1000万人以上の観光客(200万人以上の外国人観光客)誘致”を目指している同県にあって、ここでのインバウンド対応は重要なテーマとなっている。

 そんな国際通りで店舗側、観光客側の双方にとって利便性の高い、ICチップを埋め込んだリストバンドが14年から導入され、インバウンド対応に顕著な成果を上げている。そのリストバンドの名は「スマイルタグ」。電子マネーとしての利用をはじめ、免税書類の作成、クーポンの入手、体験型エンタテインメントへの参加など、多様な機能を持つウェアラブルデバイスだ。

 スマイルタグはどのような意図から作られたのか? その運用に携わる沖縄ツーリスト執行役員の石坂彰啓氏によると、当時の観光の課題を解決する“3つの目的”があったという。それが観光客の利便性、観光客の受け入れ体制の強化、エンタテイメントの創出だ。

「生活者ではなく観光客をターゲットに定め、地域通貨として使いたいと考えから生まれました。カード型ではなく、リストバンド型の防水タイプとしたのも、沖縄では水着姿の観光客が多いからです」

 スマイルタグは現在同社のツアーで、バス点呼のために利用されているという。添乗員がタブレット端末を使って、乗客の集合をチェックしているとのことだ。

 沖縄ツーリストが開発にかけたコストや、収益効果については現在のところ非公表だが、ビジネスとしての可能性は大きい。その収入源となっているのが、個人客によるショッピングコミッションや飲食コミッションだ。かつてはツアー団体客のみだったコミッションが、スマイルタグの利用によって、個人客からも計上できるようになったという。


■免税対応を担うことで加盟店を増やす

 一方、商店街にとっては、訪日観光客への免税対応の簡素化がメリットとなった。国際通り商店街振興組合連合会理事の石坂氏は、導入当時をこう振り返る。

「2年前にお菓子などの消耗品が免税の対象になったため、店舗のインバウンド対応の手間が大きく増えました。当時の免税の処理は、パスポートの情報を手書きする必要があったので、お客様1人あたり15分~20分かかったんです。パスポートリーダーという機械があるものの、クルーズ船で那覇の港を訪れる外国人観光客の場合、パスポートのコピーを持って降りてくるので使えません。クルーズ船を降りた2000人~3000人の訪日客が国際通りを訪れるため、小さなお店などは免税対応だけでパニックになっていました」

 そこで、商店街ではパスポートのコピーでも読み取れるリーダー端末を開発。データをスマイルタグに読み込み、それをタブレットにかざすだけで免税情報が印刷される仕組みを作った。これによって訪日客はサインするだけで、免税手続きができるようになったという。

 さらに、スマイルタグは呼び込み問題の解消にも結びついた。組合では店舗に客の呼び込みを禁止しているものの、以前から非加盟店の呼び込みが横行し「お客さんが取られる」との声が加盟店から上がっていたという。

「これに対応すべく組合加盟店のみスマイルタグを導入でき、電子マネーとして買い物ができるほか、リアルタイムで特典情報を発信できるようにしました。その情報は訪日観光客の登録しているスマホや、我々のコミュニティの場にしているツーリストラウンジにのみ表示しています」

 スマイルタグは商店街の免税対応という課題解決を担うことで、現在までに78店舗の加盟店を獲得した。訪日観光客と店舗、沖縄ツーリストの3者に利便性を提供するという、まさに理想的なソリューションとなっている。中小の事業者にとってインバウンド対応はコスト負担と人材確保が大きな問題。このうち前者をコミッションという仕組みで、後者をITで解決しているスマイルタグは、全国の観光事業者にとっての良い参考になるだろう。
《本折浩之/HANJO HANJO編集部》

編集部のおすすめ

特集

page top