中小企業/フリーランスのためのフィンテック、FINOLABでセミナー | 東京IT新聞

中小企業/フリーランスのためのフィンテック、FINOLABでセミナー

コンシューマー 産業のIT化

 HANJO HANJOでは中小企業の経営を活性化するものとして、これまでフィンテック(フィナンシャル・テクノロジー)に注目してきました。クラウドキャスト株式会社と協業し、16年8月に資金繰り計画支援ツール「Staple Pulse for HANJO HANJO」をリリースしたのもその一環です。

 フィンテックは特に企業の経理における業務効率を向上させます。その可能性について認知を広めるために、HANJO HANJOでは日本最大のフィンテック産業拠点「FINOLAB」とともに、10月27日にセミナー「日本を元気に!FinTechパワーを中小企業/フリーランスに!!」を共催しました。

■フィンテックによる資金繰りが企業の倒産を防ぐ

 セミナーでは中小企業を支援しているフィンテックサービスが紹介されたほか、それを実際に導入している中小企業経営者による体験談が語られました。このうち、「中小企業のキャッシュフローを自動化・見える化する」というテーマで講演を行ったのが、クラウドキャスト株式会社代表取締役社長で、一般社団法人FinTech協会理事の星川高志氏です。

 星川氏によると、ここ数年はスタートアップが中心となり、既存のビジネスをテクノロジーで変革しようという動きが活発化しているようです。そのひとつがITを活用した金融サービスを指すフィンテックで、会社の業務から日常生活までさまざまなシーンで利用されています。

 ただ、銀行を介するような金融サービスのコアな部分については、まだまだフィンテックの浸透に時間がかかるとのことです。そのため、現在は周辺部分でのサービス展開が進んでおり、家計簿アプリやPOSレジアプリなどが普及しつつあります。先日、Suicaやクレジットカードの代わりに、iPhoneやApple Watchで決済ができる『Apple Pay』が日本での提供を開始しましたが、これもフィンテックサービスのひとつです。

「この分野ではアメリカが先行しており、13年ごろからフィンテックへの投資額が急増しました。これを受けて、決済やオンライン融資など、さまざまなサービスが立ち上がりつつあります。日本でも経費精算や会計、業務支援のサービスが展開され、中小企業の経営を支援しています」

 このような状況を受けて、クラウドキャストがHANJO HANJOと共同開発したのが「Staple Pulse for HANJO HANJO」です。星川氏によると企業の約半分が、起業後に最初の1年で倒産しています。その原因となっているのが資金繰りの悪化で、これを解決するには、例えば“何年何月に資金がゼロになる”といったキャッシュフローの見える化が必要とのことです。

「では、なぜ資金繰りを管理しないのかヒアリングしていると、そこには大きく3つの理由がありました。それが“難しくて時間がない”、“面倒くさい”、“メリットを感じない”です。そこで、開発ではより簡単な操作で、月次の入出金による資金の大まかなトレンドを予測することを目指しました」

 星川氏によると業界では今後、AIが保険や融資に応用され、新しいフィンテックサービスが展開されていくとのことです。また、今後のトレンドを占うキーワードとして、「電子帳簿保存法」や「デジタルレシート」などが挙げられました。前者は現在改正が進んでおり、経理業務でいえば領収書をスキャン、もしくはスマホなどで撮影することで、原本を保存する必要がなくなります。一方、後者についてはまだ実証実験段階ではありますが、店舗などで領収書をデータで発行しようという取り組みです。


■経理でも負担の大きい入力業務を外部委託する

 経理業務におけるフィンテックサービスでは、経費精算の効率化に多くのニーズが集まっています。この分野において“世界初の経理のアウトソーシングサービス”をうたっているのが「MerryBiz」です。

 同サービスを展開しているメリービズ株式会社代表取締役社長で、一般社団法人FinTech協会代表理事を務める工藤博樹氏が注目したのが、ペーパーレスが進んでいない経理の現場です。レシートなどの経理書類をデータ化するために、現場ではExcelなどへの手入力に多くの時間がとられています。会場で紹介された約30店舗を展開する飲食チェーンの事例では、毎日900~1000枚の経理書類を処理するために、10時間近くの作業が必要でした。また、ダブルチェックの必要性から、経営者の負担も大きかったようです。

 MerryBizは経理における入力業務を代行します。封筒に入れて発送した経理書類を、AIと人的処理の両方でデータ化。それをダウンロードし、会計ソフトでそのまま利用できる形式で提供しています。仕訳日記帳でウェブ上で閲覧でき、気になる項目があれば原本のスキャンを画像で表示できるので、不審な項目を精査するときに書類を探す手間も省けるとのことです。

「飲食店の事例でいれば、事務作業に時間を取られていると、本来やるべき業務ができなくなります。小規模な店舗では経理スタッフを雇えないケースもあるでしょう。ですが、業務を外部に委託して時間に余裕ができれば、利益や売上の分析もできるようになります」

■起業1年目の規模ならコストゼロでの導入が可能

 会場ではこれまで紹介したようなフィンテックサービスを実際に利用している経営者として、TOE THE LINE Inc.代表取締役社長の鈴木万梨子氏が登壇しました。鈴木氏は16年3月に同会社を設立。旅行先にマッチするファッションをコーディネートし、現地のホテルなどで受け渡す手ぶら旅行サービス「FIT the Local」を提供しています。

「起業した当初は事業計画のプレゼンなど、色々とやりたいことを考えていました。ですが、いざ株式会社をつくると税金や保険、給料、経費精算などの管理に追われるようになります。資金調達をしても自分に現金管理ができるのか、不安を感じることもありました」

 そこで注目したのがフィンテックサービスでした。導入にあたって鈴木氏が驚いたのが、ほとんどのサービスが無料で使えたことです。特に起業1年目の事業規模であれば無料で利用できるものが多かったため、すぐにいくつかのサービスを導入できました。

「現在は税理士と社労士に5万円から10万円程度をお支払していますが、ある機会に星川さんに相談したところ、これがゼロになる可能性も見えてきました。女性はITリテラシーの低さから、機会損失している部分が多いと思います。これは、地方の自治体や中小企業にも通じるところがあると思うので、こうしたサービスをもっと広める必要があると感じています」

 現在、鈴木氏は“金融ワカラナイ女子のためのコミュニティ”をうたうサイト「きんゆう女子。」を立ち上げ、起業や金融に興味のある女性のための情報発信を手掛けています。「フィンテックは使ってみないとわからないことも多い」とのことなので、こうした現場目線の情報に触れることも、フィンテックを知る上では有効な手段となりそうです。

 そのほか、当日はフリートークとして、クラウドキャストの星川氏に加え、HANJO HANJO運営委員で電通ビジネス・クリエーション・センターの満居優氏、HANJO HANJO編集長の加藤陽之氏による鼎談も行われました。ここでテーマになったのが、日本の成長に不可欠とされる、中小企業の活性化です。

 国内では会社数で99.7%、従業員数で7割、売り上げの53%を占める中小企業。その経営者は景気が足踏みする中で、コスト削減に力を入れています。そこで注目すべきなのがフィンテックです。コストを掛けずに業務を効率化できるサービスが普及したことで、中小企業にとって良い時代になったといえるでしょう。

 これについて星川氏は「日本はモノづくりにおける競争力がある一方で、事務系における生産性がまだまだ低い」と話しています。世界で先行しているフィンテックサービス。これを取り入れた事務作業の効率化では、まだまだ中小企業を成長させる余地が残されているようです。
《HANJO HANJO編集部》

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