音楽配信サービスの進化を追う

(DRMフリー、オンライン・ライブラリ)

2007年06月19日(火)

[ 41 号]

 スティーブ・ジョブズによる「音楽配信はDRM(デジタル著作権管理)フリーで行われるべきだ」という意見書が発表されたのは今年2月。彼はその中で、DRMフリーにすることでユーザーも企業もアーティストも利益をもたらす世界があると説いた。

 実際、DRMフリー化によってiTunesストアで購入した楽曲がiPod以外の機種でも利用できるようになるということは、ユーザーにとってはコピー回数などを気にせず様々な機種で使えることを意味するし、企業にとってはiPodに勝る魅力的な商品を提供できれば利益に繋がる。アーティストは自らの楽曲がどこのオンラインストアにあるかなど、レーベルの壁を気にする必要もなくなる。音楽はより自由に、人々に届くことになるのだ。

 この意見書を受けて4月、アップルは四大メジャーレーベルの一つ、EMIと共に、「DRMフリー楽曲を発売する」ことを発表した。そして5月31日、日本のストアも含む全世界のiTunesストアにおいて、DRMフリーの音楽配信サービス、「iTunes Plus」が開始された。

 驚いたのは日本でもこのiTunes Plusが開始されたことだ。未だiTunesに参加していない企業もあるほど著作権関連には閉鎖的な日本で、DRMフリーの提供もまた「日本的慣習」によって大幅に遅れることが予想されていただけに、これは驚くべきことと言える。しかし現在他の音楽配信サービスは全く反応しておらず、日本で「サービス、レーベルの壁を越えて自由に楽曲を聴けるようになる」のはまだ先の話になりそうだ。

 ちなみにアメリカではAmazonも今年後半にDRMフリー音楽配信ストアの立ち上げをすでに公表しており、DRMフリーの波は世界で一気に進みそうだ。

 一方、日本では5月25日に、ナップスタージャパンの提供する「Nap ster to Go」の機能拡張サービスを開始。これは月額固定で聴き放題、PCを介さず端末に直接楽曲をダウンロードできるサービスで、FOMA904iシリーズ全機種に対応する。月額1980円。

 ナップスターのこれまでのサービスは、PCを介して携帯にも転送可能というものだったが、今回の機能拡張によってPCが不要になる。実はこれは「携帯のメモリ容量に囚われず、数十万曲をいつでもどこでも聴くことができる」点で、非常に画期的なサービスと言える。もちろんラインナップの充実は求められるが、オンライン上に持った自分の音楽ライブラリから直接音楽を聴く、正にWeb2.0的音楽配信と言えるだろう。実際、マイクロソフトのZuneも無線LAN機能を持っているし、iPodもiPhoneの登場から考えても、いずれは直接ダウンロードが可能になると言われている。奇しくも日本は、その特異な携帯文化によって、その道を一歩リードしたとも言える。
iTunesはデフォルト
 一方アメリカでは、「いかにしてiTunesとマッシュアップするか」がこれからのテーマになりそうだ。

 まずCD交換コミュニティのlala.comが、iTunesのプレイリストをオンラインに保存し、再生することができるサービスを開始した。すでにlalaのサーバにある曲はユーザーが共有して利用し、ない曲はア ップロードすることで、自分の音楽ライブラリにどこからでもアクセスが可能になるという。

CD交換コミュニティlala.com (http://www.lala.com/)

CD交換コミュニティlala.com (http://www.lala.com/)


 さらにアメリカ版Myutaとでも言うべき、携帯でiTunesライブラリを利用できるサービス「nuTsie」も発表された。これはユーザーのライブラリ内にある曲をサーバ上の曲と比較し、ライブラリにあるものを携帯でシャッフル再生するという仕組み。

 つまりアメリカでは、すでにデフォルトとなったiTunesをいかに利用し、他のサービスにしていくかということが検討され始めているということだ。そしておそらくその動きは今回のiTunes Plusによって加速されるだろう。DRMフリーになり、楽曲ファイルはさらに扱いやすくなるのだから。

 まだまだ過渡期と言える音楽配信サービス。次のステップは果たしてどこが打ち出してくるだろうか。

iTunes Plus画面では自らのライブラリ内にある曲もバージョンアップが可能。楽曲はこれまでの128kbps AACフォーマットではなく、256kbps AACと高音質になっている。価格は米国でこれまで99セントだったものが、Plus楽曲は1㌦29セントと少し割高。日本でもこれまで150~200円だったものが200円~270円にて提供される。これまで通りDRMのかかったものも並行して販売。
( 矢橋司 )

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