伊藤さんは、今のウェブ広告業界で最も注目を集めているクリエーターだ。最近の名だたる広告賞を総ナメにしている。今までにないメディア、広告の構造、企画をどんな風にクライアントに通しているのだろう。伊藤さんの所属するGTincにて話をうかがった。

伊藤直樹…CMからウェブ広告までフラットにクリエイティブをこなす。主な仕事に、ナイキジャパン「NIKE iD」、マイクロソフト「BIG SHADOW」、Saab「Saabは、細部だ。」、ロケーションバリュー「LOVE JOBS」、など。アジアパシフィック広告賞グランプリ、東京インタラクティブ・アド・アワードグランプリ、ベストクリエーター賞、カンヌ広告祭サイバー部門金賞をはじめ、多数受賞。
和田: ウェブがこれからこう変わっていく、みたいな所で思っていることはありますか。
伊藤: 実は僕、あんまりウェブ自体には興味はなくて、インタラクティブなものに興味があるので、もっとそういう風に使われて欲しいなって思いますね。特に広告を作っている人たちの意識がそう動いていってくれればいいなって思います。インタラクティブはやっぱりかなり面白いと思うんですよ。だからもっと色々な広告がそうなって欲しいと。その大事な技術がウェブだと、そういう風にしか見ていないですね。コミュニケーションをやりたくて、それをやる上ではインタラクティブが重要で、そのためにウェブがあるっていう話で。別にウェブじゃなくてもいいんですよ。バットとかボールとかで良いんですよ。道具とか、そういうものも。だから、テレビCMも屋外広告も、もっとインタラクティブにできるんだったらそっちの方がいい、っていうぐらいの感覚ですかね。
和田: アイデアを出す時のメソッドとか、特に気をつけている点って何かありますか。
伊藤: まず人のマネは絶対しないってことですね。アイデアは簡単に考えられるんですよ、何秒かで。それが自分の中の試験にどのくらい通過するかって言うと、ほとんど落ちますよね。そうやって、オリジナルであることを追求するっていうのはあると思うんですよ。デジャヴ感があるとか、何かと何かを組み合わせたなっていうのは、見る人が見ればわかるので。僕もやっぱりそう見られたくないから。広告についてはすごく研究する方だと思うんですけど、だからこそオリジナル性を求めますね。情報をインプットする時と、自分の中からなにかを吐き出す時は明確に分けます。そうしないと、何かを見ながらアイディアを出したりすると影響受けちゃうんですよ。流行っているからこういうのがいいんじゃないか、みたいな。そういう意味では、この前あるアワードの審査委員をやったんですけど、9割の作品が人のマネでしたね。なんでこうなっちゃうのかなって思いますね。
和田: 似てきてしまうのは、広告だとサンプルを提示して得意先を説得していくプロセスを経る、というところが大きいんじゃないかと思うんですけど、伊藤さんが自分の案件で“今までにない企画”を通すために用意していくものや、やり方ってあるんですか。
伊藤: 同じ世界のサンプルを見せるからそうなっちゃうんですよ。例えば、大根を一本買って来て、これがインタラクティブですってやった方がよっぽどサンプルとしていいんですよね。同じ業界の中での参考資料を持ってくと皆の意識がそっちにいっちゃう。営業もクライアントも。絵画とか、もしくはインターネットで見つけたクズ画像とか、フリッカーから見つけた画像とか。そういうとんでもないところから持ってきた方がいいんですよ。
和田: それでクライアントに伝わりますか。
伊藤: 伝え方です。一枚じゃ駄目ですよ、作品になっていないから。これとこれとこれを組み合わせてこういうことをしたいんです、って説明する。
和田: 場合によってはデモを簡単に作っていくんですか。
伊藤: 作った方がいい場合もありますね。ケースバイケースだけど。僕は逆に言葉だけでやるようにしているんですよね。ビジュアルはイメージを縛るので。まず最初に、言葉で握るっていうのが超重要ですね。コンセプトレベルで握って、次はビジュアルという風に段階を踏んでいったほうが良いんです。だから最初からこういうイメージでってするよりも、とんでもないものを持っていった方が良い。ただそれは、クライアントってよく病人に例えられますが、その広告が患者の風邪に対して効き目感を持っていかなかったら、ただの変態じゃないですか、大根を持った。そこを見つけるかどうかだと思うんですよね。その大根が説得力を持つのかどうか。そこを探す。
和田: 大根を持った変態(笑)
クリエーター新作紹介
「Webキャンペーンのしかけ方。」
渡辺英輝、阿部晶人、螺澤裕次郎、伊藤直樹(著)
◆発行: インプレスジャパン
◆発売:インプレスコミュニケーションズ
◆1800円+税

インタビュアー 和田宗衛門
2006年、駄犬修一とクリエイティブユニット『LENS』結成。広告業界で実績を残しつつ、多方面での人脈をいかしアーティストとして活動。2007年、メディアアート作品DVD『東京ヌードル』リリース、好評発売中。

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【インタビュアー】和田宗衛門
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