技術の《極み》をアートに昇華したiPod nanoケース ~きわみ工房・

チタン削り出しのボディとサファイアガラス

2007年07月10日(火)

[ 44 号]

 きわみ工房株式会社は6月5日、チタン削り出しのボディとサファイアガラスを用いた第二世代iPod nano用ケース「Re-nano」を発売した。価格は99,750円で、直販サイトのみでの販売。世界トップクラスの金属精密切削加工技術を誇る株式会社入曽精密と、優れたプロダクトデザインを数多く手がけてきたデザイン会社ファクタスデザインのコラボレートによる製品であり、技術の“極み”をアートにまで昇華したものと同社では位置づける。また、ジュラルミンとクリスタルガラスを用いたモデルも用意している。

 この、もはや宝飾品と呼んで差し支えないiPod nanoケースの開発について、同社取締役CMOの内田研一氏は「デザインにおけるアンチテーゼの提言」であると説明する。

 「企画のきっかけは、Apple製品のデザインに対するアンチテーゼ。Apple製品は非常にデザインに優れており、ユーザーの多くは良くも悪くもそれを完成された最高のデザインとして捉えがちです。しかし一方で、必ずしもそうでなくてもいいのではという思いがあり、あえて“iPod nanoっぽくないもの”を作ってみようかと。そうした意味を込めて、Re-nanoが生まれました」


 企画の初期段階では、ユニセックスなイメージのiPod nanoに対し、あえてマッシブとフェミニンな二種類のデザインを考案するなど、さまざまな“アンチテーゼ”が提案されたという。

 「iPod nanoとしての本質は変わらずに、見え方だけが変わる。そうした意味でも、まさに“Re”というコンセプトなんです」

 企画のもうひとつの柱となったのが、“削り出し”の技術で作るという点だ。これについて内田氏は、「我々の場合、ミクロン単位で加工できる、アートの域にまで達した技術を持っています。それを使って、やはり芸術品のようなケースを作ってみたかったのです」と説明する。

 もちろん、こうしたものは万人に受けるものではないだろう。しかし、「1000円のものを1万個売る商売よりも、1000万円のものを一個だけ作って売る方を選んだのです。つまり、マーケット向けではなく個人向けのモノを作るということですね」と内田氏は語る。

 じつは、こうした手法が取れるのも削り出しの特徴なのである。極論すれば、三次元データさえあれば一個制作するのも100個制作するのもコスト的にはあまり変わらないため、ごく一部の人だけのための小ロット製品を、きわめてローリスクで作ることができるのだ。


 また内田氏は、Re-nanoの存在がデザイナーの可能性を切り拓く役目も担えればと期待を語る。
 「モノづくりと3Dデザインの間には、じつは暗くて深い溝があります。その最たる例が、ゲームなどの3DCGデザイナーの存在。データそのものはモノづくりにも使えるのに、実際にはほとんどのアウトプットは二次元の映像に限られてしまうのです。弊社の削り出し技術は、モノづくりとデザインの溝を埋めるひとつの大きな可能性になるのではないでしょうか」

 こうしたモノづくりのあり方がデザイナーの間にも広まれば、現在はおもに3DCADに限られたモノづくりのインプットに、3DCGという選択肢が増えることも予想される。制作環境はかつてのスパコン並みのレベルになり、流通はインターネットで補える。こういうデジタル環境だからこそ、Re-nanoの持つ制作・流通のあり方にはこれから大きく期待したいところだ。

 内田氏はさらに、同技術を用いた“Re”ブランドの確立にも意欲を見せる。
 「たとえば、超精密な立体模様が刻まれたペンダントヘッドを制作し、結婚式などの記録を収めたメモリカードを永久保存する用途などを考えています。他にも、世の中で当たり前のように思われているものを“Re”していくシリーズが展開できればいいですね」
きわみ工房のメタル削り出しiPod nanoジャケット「Re-nano」
チタンバージョン99,750円
ジュラルミンバージョン39,900円(ともに税込)
( 森田亮 )

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