~塩見直紀さんにきくアイデア活用法~

ケータイメモで「半農半IT」

2008年02月19日(火)

[ 72 号]

 「半農半X」(はんのうはんエックス)が今、静かなブームとなっている。
 半農半Xとは生活の中に農を取り入れ(=半農)、自分に与えられた天与の才を職業に活かす(=半X)ライフスタイルのことだ。
 提唱するのは京都府綾部市在住の塩見直紀氏。自身も毎年1反(約1000平米)の水田で農薬を使わずに米作りを実践する。
 多数の著書がある塩見氏のアイデアの源は携帯電話のメモ機能。ケータイメモのユニークな活用法について、講演で上京中の塩見氏に話を聞いた。


【塩見直紀氏プロフィール】
半農半X研究所、コンセプトフォーエックス代表。カタログ通販会社フェリシモを経て2000年に半農半X研究所を設立。屋久島在住の作家・翻訳家、星川淳氏のライフスタイル「半農半著」に影響を受け、1995年から21世紀の生き方、暮らし方として「半農半X」を提唱している。著書は『半農半Xという生き方』(ソニーマガジンズ)など多数。塩見直紀ホームページ:http://www.towanoe.jp/xseed/

後世に何を残していくのか

 塩見氏が使用する携帯はauのごく一般的な機種だ。「全角500字で50ページ分の言葉のメモが入っています」。頭に浮かんだヒラメキや気になった言葉などを素早く携帯に入力する。画面には「PR業からムーブメント製造業へ」「お香は仏様の食べ物である」等々のフレーズが並ぶ。

機種はauの一般的な機種。メモは一見地味な機能だが、継続的に入力することでアーカイブとして威力を発揮する

機種はauの一般的な機種。メモは一見地味な機能だが、継続的に入力することでアーカイブとして威力を発揮する


 「そもそもは思いついたことをノートに書き留めていました。でも、満員の通勤電車の中ではとっさにひらめいても思うように書けない。車内での手書きは狭かったのです。やがてポスト・イットに書いたものをノートに貼るようになり、インターネットの時代に移ってからは今の形になりました」

 塩見氏は1989年から通販大手のフェリシモに勤務。28才の時に思想家・内村鑑三の著作『後世への最大事物』を読み「我々は何をこの世に遺して逝かうか、金か、事業か、思想か」という一文に大きな影響を受ける。そして99年に退職、綾部に帰郷して半農半Xの実践と発信を自らのミッションと定めるに至る。

 「自分は明日、死ぬかもしれない。次の世代に何を残せるかと自問して、知恵やアイデアを発信していこうと決めました」と語る塩見さんは、現在、自身のブログでケータイメモを「メモ銀行」と名付けて公開している。その狙いについて塩見さんは、「ブログを見に来てくれた人が、メモ銀行を見て新しいアイデアや自分にとってのXを発見する手助けになれば、これほど嬉しいことはないですね」と説明する。「これからは知恵を私蔵、死蔵しないでどんどん共有する時代。自分だけの独り占めは気持ち悪いじゃないですか」、そう言って塩見さんは笑った。

アイデアや気になったフレーズを、携帯電話のメモ機能に時と場所を選ばずに入力できる

アイデアや気になったフレーズを、携帯電話のメモ機能に時と場所を選ばずに入力できる


ITが開くサステナビリティ

 塩見氏は「アイデアや新しい発想は既存のものを組み合わせることで生まれます」と語る。氏が提唱する「半農半X」も、作家・翻訳家の星川淳氏の言葉「半農半著」(農的暮らしをベースに執筆で社会にメッセージする生き方)から生まれたものだ。そして、「既にある物を活かす」というスタンスも、実は単なる発想技術にとどまらず、地球環境の有限性への氏の洞察に根ざしている。塩見氏は語る―「今あるものをただ消費しているだけでは、資源の限られた地球は持続不可能。受身でなく、既にある物から新しいものを自分で創ることが持続可能につながります」

 そこで求められる知恵の共有に、ケータイやブログといったIT技術は大いに役立っているのである。「知られていないのはないのと同じ。1日1発信、1行動が大切です」と説く塩見氏にとって、ケータイメモは強力なツールとなっている。

 ところで半農半Xについてだが、「生活に農を取り入れる」とは単に田畑を借りることに収まらない。たとえ東京のど真ん中に住んでいようとも、植木鉢に野菜の種をまく所から始められるのが長所だ。大切なのは農を通じて自然や生命を感じること、「センス・オブ・ワンダー」を育むことにある。感性を磨くことが新たな創造に結びつく。

 サステナブル(持続可能)な社会を創造的に生きる作法、それが半農半Xだ。あなたにとっての「X」は、何ですか?
( 斉藤円華 )

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