昨年4月、すべての授業をインターネットで行う日本初の大学として福岡に設立されたサイバー大学。スクーリング不要ということから、学生の構成比率の60%以上が社会人という本校は、1単位ごとの学費が明確なだけにコスト意識の高い学生が多く、出席率も高いという。他にも最高12年をかけて卒業できる就学システムなど様々なユニークな面を持つ「株式会社立大学」だ。IT総合学部の石田晴久学部長に、創立1年目の成果などを聞いた。

サイバー大学・IT総合学部 学部長 石田 晴久氏
石田 晴久◆ 現サイバー大学IT総合学部長、東京大学名誉教授。日本ネットワークセキュリティ協会会長も務めた。日本のコンピュータの歴史、インターネットの歴史をよく知る人物として有名。多摩美術大学教授を退官後に現在のサイバー大学に移る。日本のIT産業が「3K」であることを嘆き、人材育成に力を入れている―創立までの経緯を聞かせてください
福岡県が埋め立て地を作って、そこに最初は一般の大学を作りたかったらしいですね。でも今どき普通の大学を作っても学生が集まらないということで、たまたま早稲田大学に相談に行ったところ、福岡にゆかりのある吉村作治先生(現サイバー大学学長)に相談したのがきっかけです。
吉村先生が提案したのはネット上の大学、サイバー大学を福岡でやろうということ。こういった特殊な大学は文科省はなかなか認可をしてくれないのですが、教育特区の形にして認可を出してもらった。通学制の4年制の大学と同じように、卒業すればちゃんと学士の資格が取れるという形になったのです。
文科省が気にしていたのは、一つはスクーリングがなくて大丈夫かという点です。そこは吉村先生の早稲田での通信教育の経験や、韓国やアメリカの例を出してご理解いただきました。もう一点は株式会社立という点ですね。利益が出るようになったら会社が吸い上げてしまうのではないかという懸念を持たれたようです。でもこちらは利益が出たら学生に還元する。これはソフトバンクの孫社長にも何度か念を入れてますが、サイバー大は利益を求める事業ではありませんし、ソフトバンクとしても社会貢献事業としてやっています。
―授業はすべてネット上からストリーミングで行われていますが、ネットワークのトラブルなどはありませんか
非常に安定してます。まだ一度もサーバがダウンしたことはないですね。私もシステムダウンを恐れてたのですが、でも現在のところは時間的に集中しても大丈夫。思った以上に安定しています。
―現状対応可能なOSは何ですか
Vistaに対応しています。去年スタートの時点では授業の収録や生徒が行うプレゼンにエクスパートというシステムを使っていて、XPしか対応していませんでした。Macは一部の学生から対応して欲しいという話はありますが、今のところ対応予定時期は決めていません。
―出席や授業の進捗率など、生徒の利用状況は把握できていますか
これはきっちり把握できてます。通常の大学だと出席率を把握しづらいのですが、本学の場合は授業のストリーミングをちゃんと見てクリックしたかなどを管理しています。基本的な講義は1時間ですが、それを4つの章に区切り、15分毎のセッションを見たかどうかをチェックします。講義をどこまで見終わったかまで管理できるようになっているのです。授業では、小テストを行ったりレポートを書くなどの課題を出しており、授業を見ていないと答えられないような内容になっています。
―他の大学よりもしっかり勉強していないと着いていけないということですね
そうです。社会人の方が多いこともあって勉学の意識が非常に高く感じますよ。遊び半分のつもりでこれに入ってくる人はいないですね。単位を取り損ねた人はもう1回だけ、無料で再履修を認めてます。
―この1年で判明した運営上の改善点は
やはり学生の本人確認ということですね。最初はIDとパスワードで可能だろうと思っていたのです。
仮になりすましなどがあったとしても、これは個人の資格ですから、他の人にレポートを書いてもらって単位を取って卒業しても意味がないんですよね。この点は当初から文科省も気にはしていたようです。
ただ本人確認をしないで単位を出しているということはないですし、そもそも単位を出すのは3月末です。そこまでには本人確認を行います。
(注:なお、同大学は2月29日に本人確認を完了した旨を文科省に報告している。また今年度からはオリエンテーションや入学式などの機会に本人確認を実施し、授業開始までには本人確認を実施することを発表している)
―スクーリングがないということは学生同士が顔を合わせる機会もないわけですが、学生間の繋がりというのはあるんでしょうか
学生有志が設置したSNSがありますし、それ以外にも正式なSNSを8月から開設しています。
そこでいろいろ盛り上がって、オフラインミーティングのような形で各地で集まったりしているようですよ。先生にも出てきて欲しいというようなリクエストが来たりもするので、なるべく行ってもらうようにしています。
―学生へのサポート体制について
各科目に「メンター」という専門スタッフがついています。学生からの質問は教員とメンターが連携して回答しています。ディベートルームも設け、課題を出して議論をしましょうという方法をとっています。複数の学生が集まり議論をすることで知識を深め、それを共有できることが利点です。また、インターネット上の大学ですから、分からないことはできるだけインターネットで調べましょうということも言ってます。
―サイバー大学としてこれからの目標は
やはり学生を増やしたいですね。IT関連は今人材が足りないですから、サイバー大から多くの優秀な人材を輩出していきたいと考えています。
始まって1年のサイバー大学はまだいろいろと課題はあるものの、学生の学習意欲が高く、有益な学習手段であることが感じられた。ここから次代のIT業界を担う人材生まれる日も遠くなさそうだ。

(
文:矢橋司、写真:岡部ユミ子
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