「食育」「食の安全性」「健康増進法」「メタボ」……。最近、ニュースに食をめぐるキーワードを見ない日はない。食べることは生きていく上で最も基本的な事柄だ。それだけに人々の関心は高い。ウェブにもそんな食をめぐるコンテンツがあふれている。株式会社イートスマートでは毎日の食事のカロリー計算と体重管理が出来るサービス「eatsmart(イートスマート)」、有料で携帯にダイエットレシピを配信する「1dp・服部先生の1週間ダイエットレシピ」、16万点の市販食品の口コミサイト「もぐナビ」を展開。食と健康にITを融合させる同社の取り組みについて、代表取締役社長の若林貞伸氏に話を聞いた。

自身の減量、契機に発想
若林氏がこのビジネスを思い立ったのは、氏が株式会社ネットエイジに在籍中、同僚と通うフィットネスクラブでダイエットに挑戦していた時だった。
「自分は何キロカロリー摂取しているんだろうと、ある時疑問を持ちまして(笑)。ジョギングマシーンで一所懸命頑張っても大体200キロカロリー、ビールジョッキ1杯分しか消費しない。あれっ、今日ビール飲むよね、ってショックを受けたんですね」と笑う。
「そもそも、自分が何キロカロリー摂取しているかなんて関心がなかったのですが、摂取カロリーと消費カロリーを調べることができ、さらにその情報をブログや日記の形式で残せて、しかもコミュニティ内に公開出来たら面白いんじゃないか」との考えから生まれたのがイートスマートだという。
ネットエイジでは、新規事業立ち上げに伴う企画や調査を担当していた若林氏。とりわけライフバランスマネジメントやメンタルヘルスを主に取り扱っていただけあって、事業の勘どころをつかんでいた。
「こういう事業があったらいいなと思ったら、自分でやらないとダメ、自ら事業を起こしたいという思いが強くありました」
こうして若林氏は「健康をキーワードにしたネットビジネス」をスタートさせた。

「イートスマート」のサイトでは無料会員のほか、月額315円のプレミアム会員に登録すると、マイページで毎日の食事品目とその摂取カロリー、体重や体脂肪率などの身体情報を入力できる。入力した日数が増えるに従い、数値の変化を折れ線グラフで確認できる仕組みだ。
しかし、毎日の食事のカロリーを調べて記録するのは面倒な作業ではないだろうか?
「確かにその点は課題で、食事を撮影してすぐにカロリー変換して記録できたら便利ですよね。残念ながら今はまだそこまで達していないのですが、男性よりも女性の方が結構継続して記録しているようです。男性はカロリーについて論理的に把握しようとはしますが、記録するとなると続きませんね(笑)」
しかし、作家でプロデューサーの岡田斗司夫氏が著書『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)で、食べたものを毎日すべて記録するレコードダイエットを実践して話題となった。同サイトでもそれと同じ感覚で使うユーザが増えきているという。岡田氏による同書のブームは記憶に新しいところだが、カロリーをきちっと把握しなくても、何を食べたかを記録すれば大まかな摂取量は把握できる。また、過去の記録を振り返ることで食べ過ぎを戒め、抑制する効果があるようだ。
健康機メーカへコンテンツ提供
いわば「ダイエット支援サービス」として2004年9月にスタートした「イートスマート」だが、同ウェブサイトでのB2Cコンテンツとしてだけでなく、B2Bライセンス事業としても運営されている。
企業のニーズに応じてデータ項目のカスタマイズが可能だ。また提供形式もプログラム、ASP、各種コンテンツという形で選べる。
「健康機器メーカ大手のタニタ様にもコンテンツを提供しておりますし、スポーツクラブや健康食品メーカなど、提供先は様々です」
携帯版サイトは20代女性中心
他方、B2Cにターゲットを絞ったビジネスモデルとして運営しているのが05年8月にスタートした携帯公式サイト「1dp」だ。

「1dp 服部先生の1週間ダイエットレシピ」
こちらも月額315円で、ライフスタイルに合わせて、1週間分の献立メニューを百通りの組み合わせから選ぶことが出来る。このコンテンツの売りは、提供するダイエットレシピを服部栄養専門学校校長で料理評論家、服部幸應氏が監修している点だ。「イートスマートを立ち上げる際に専門家の意見を聞くことになり、『ネットで何かやろう』というこちらの呼びかけに、積極的に反応してくださったのが服部さんサイドの担当者の方でした」という。
「それで監修をしていただいたのですが、最近の食生活は基本的な事柄、例えばよく噛んで食べるということが出来ていない。また、若い女性に人気のドリンクダイエットは、安易にやせるけれど安易にリバウンドもする。その点は服部さんも憂慮していて、当社が提供する食のコンテンツは『スタンダードなことを実践する』、『当たり前のことを当たり前にする』を念頭に作っています」と話す。「ユーザは主に20代、30代女性が中心です。おかげさまで独立した部門としてきちんと採算を取れる事業に成長しています」
何かと忙しい現代人のこと、頭で分かっていてもバランスの良い食生活を営むのはやはり難しい。コンビニ弁当や外食続き、朝食抜き、サプリメントへの依存……。そんな時、「1dp」のように専門家が栄養バランスを考えた献立メニューはありがたいものだ。さらに当サイトの献立は、材料使いきりや簡単調理など日常で実践しやすいように作られているので、一人暮らしの女性には最適である。
ユーザ視点の消費文化創る
「イートスマート」や「1dp」が健康管理を念頭に置いた、いわば目的意識的なサービスであるのに対して、「もぐナビ」は市販食品16万点のレビューを消費者同士で共有する「口コミ」の楽しさを前面に出したサイトだ。

「みんなの食品クチコミサイト もぐナビ」。取扱食品数は16万点以上に上る『国内最大級』の食品クチコミサイトに成長
「特に健康というくくりを設けずに、食品全般を扱おうというのがコンセプトですね。消費者がユーザとして利用しているだけでなく、メーカー側もレビューを参考にしているようです。生産者と消費者の接点を作ることで、双方に有益なデータベースを提供できたらと考えています」
「もぐナビ」発の食品開発が夢
利用のされ方も様々だ。食品のトレーサビリティー(原産地表示)を重視するユーザがレビューを参照して購入を判断する、といった「真面目な」使い方がある一方、地域限定のレアな菓子のレビューが紹介されていたりもする。
また、菓子パンだけを集中的に300点以上もレビューし続けるコアなユーザも存在する。
「どう転がっていくか分からない面白さと可能性があります(笑)。ただ当社としてはユーザ視点の消費文化をつくっていきたい。そうして良質なユーザが集まってくれば、企業も『もぐナビ』とタイアップでPRが出来るようになりますし(笑)。ゆくゆくは『もぐナビ』発の食品開発も手掛けるのが夢ですね」
今後も同社のメディア事業として「もぐナビ」を育てて行きたい考えだ。
食と健康にITを融合させたビジネスで独自の地歩を築く同社だが、ところで若林氏が考えるネットビジネスの優位性とはどんなものなのか。
「思いついたことがすぐに具体化できるスピード感じゃないでしょうか。開発期間が短かったりして辛いと思う時もありますが、どんなサービスならユーザはどこまで対価を支払ってビジネスとして成立するか、そこを考えながらビジネスモデルを組み立てるのは面白いですね」
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文:斉藤円華、写真:岡部ユミ子
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『 株式会社イートスマート 代表取締役社長 若林 貞伸 』に対する






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