ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム(ASPIC) 津田 邦和 常務理事に聞く

【ASP・SaaS特集】(インタビュー)

2008年04月08日(火)

[ 79 号]

 SaaS(Software as a Service)への関心が一段と高まっている。今年に入りマイクロソフトなどの大手ソフトウェア企業も相次いで参入を表明。2010年には1兆5000億円市場に成長するとも言われている。総務省は昨年7月に「ASP・SaaS普及促進協議会」を設立。今年3月には経済産業省が中小企業向けにSaaS活用基盤の整備事業計画を発表するなど、官民一体となって普及を後押している状況だ。ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム(ASPIC)は、特定非営利活動法人(NPO)として国と企業の間に立って、普及や市場活性化に向けた支援活動を続けている。津田邦和常務理事に、SaaS市場の現状や普及への取り組み内容などを聞いた。

つだ くにかず◇1954年札幌市生まれ。電気通信大学卒。株式会社リコーPS事業部シニアスペシャリスト。ASPIC設立に参画し、常務理事兼技術部会長として普及啓発活動に注力。総務省ASP・SaaSセキュリティ委員会委員など多数の公職に就く。東海大、法政大エクステンションスクール非常勤講師

つだ くにかず◇1954年札幌市生まれ。電気通信大学卒。株式会社リコーPS事業部シニアスペシャリスト。ASPIC設立に参画し、常務理事兼技術部会長として普及啓発活動に注力。総務省ASP・SaaSセキュリティ委員会委員など多数の公職に就く。東海大、法政大エクステンションスクール非常勤講師


―ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム(ASPIC)設立の経緯と活動内容は

 1999(平成11)年11月にASPに関連する85社が集まって立ち上げました。2002年にNPO法人化し、現在160社以上が企業会員となり、ASP・SaaSの普及に向けた啓発や支援、調査研究活動を展開しています。総務省と合同で「ASP・SaaS普及促進協議会」を設置するなど、国や行政への政策提言や情報提供も行っています。

 優秀なASP・SaaSサービスやIDC(インターネットデータセンター)を表彰するアワードを毎年開催し、企業の開発意欲向上を図っています。ブロードバンド大国の我が国で、ITのリファレンスモデルを作り、振興していきたいと考えています。

―アジアでの普及に積極的ですね

 日本はアジアでのASP・SaaS普及に主導的な立場を担っています。2001年には日本、韓国、シンガポールでアジア国際組織「ASP/IDC Alliance」を結成し、04年に東京で会合を開きました。ブロードバンド普及率の高い韓国とは連携を強化し、今年5月21日には東京で日韓のASPシンポジウムを行います。

―ASPとSaaSの違いは何でしょうか

 SaaSもASP(Application Service Provider)もオンデマンドなどもすべて同じ意味で、言葉が異なるのは企業がブランディングのために言い換えたと捉えるべきでしょう。また、採用する技術やAPI、カスタマイズ性などのことについて違いがあると論じられることがありますが、どの呼称においても同じように利用されます。

『アドレス帳のASP化に注目』

―市場の現状と未来をどう見ていますか

 現在、1000社以上が参入しており、この5~6年で市場は倍以上になっています。今年中に市場規模が1兆円になると見ています。一方でソフトウェア販売という既存の形は、今後も残っていくでしょうが、領域は狭くなっていくと思いますね。

 スマートフォンの普及はASP・SaaS市場成長の原動力となるでしょう。セールスマンが持ち運ぶCRMなどで新たな利用局面が生まれてくるからです。

 特にアドレス帳の分野に注目しています。例えば、名刺のアドレス帳への入力は各個人がそれぞれPCや携帯電話で行っていますが、ASP・SaaS化することでデータが一元化でき、無駄がなくなります。1000万人のビジネスマンが困っていた作業ですので、モバイルのキラーソリューションにもなりうるでしょう。今後、普及に向けた研究を進めていきたいと考えています。

―ASP・SaaSで提供されるソフトウェアの特徴は

 出退勤や給与の管理システム、グループウェアが多いですね。Eコマース関連も目立ちます。また、地方自治体では、公共施設の予約や電子入札システムなどは既にASP・SaaSで導入されています。

―ASP・SaaS活用のメリットにどういうことがありますか

 コスト削減、リテラシー補完、セキュリティ対策の3点に集約されます。従来は業務効率化などの「守り型」でしたが、今後は顧客増や売上アップを狙う「攻めの経営ツール」として使えることも特徴です。

―国の推進政策や関連分野について

 先に述べた通り総務省は推進協議会を設置したほか、昨年6月からは「ASP・SaaSの情報セキュリティ対策に関する研究会」を立ち上げ、昨年12月にガイドラインとして取りまとめました。経産省は基盤整備計画を発表するなど、中小企業への普及政策に力を注いでいます。

 ほかにも多くの省庁がASP・SaaSに関わっており、国交省は工業団地での通信力向上という観点で、農水省はトレーサビリティからそれぞれ関わりがあります。文科省は職員室のIT化や給食のプリペイドカードシステムなど学校教育の現場で、厚労省は健康保険証のIC化や電子カルテ化などで関連してくると考えられます。

『モバイルとIDCで研究会』

―中小企業の導入推進への取り組みについて

 経産省も非常に力を入れていますが、我々も重点テーマとして取り組んでいます。今年5月には中小企業ユーザのための活用セミナーを開き、導入の指針となる活用ガイドを発行する予定です。

―ASP・SaaS導入のチェックポイントを教えてください

 サービスの継続性とセキュリティ、品質が最も重要です。ASPICが事務局となって、ASP・SaaSの事業者認定制度を開始します。ベンダーに最低70項目にわたる開示項目を課すもので、認定マークは一つの目安となるでしょう。

―今後の活動について

 今年4月に「スマートフォンモバイル研究会」を立ち上げました。スマートフォン・携帯電話などをASP・SaaSシンクライアント端末と位置付けて、市場拡大へ向けて研究していきます。IDCについても「IDCプラットフォーム研究会」を3月に立ち上げました。

 5月20.21日には東京・秋葉原で「ASP・SaaSイノベーションシンポジウム」を開催します。ASP・SaaS業者が一同に会し、最新情報を発信する日本最大のイベントとなりますので、ぜひ多くの方々にご参加頂きたいと願っています。

5月20・21の両日に東京・秋葉原で日本最大の「ASP・SaaSイノベーションシンポジウム」を開催(http://www.aspicjapan.org/event_2008/)

5月20・21の両日に東京・秋葉原で日本最大の「ASP・SaaSイノベーションシンポジウム」を開催(http://www.aspicjapan.org/event_2008/)

( 本紙:井上佳国、西村健太郎、写真:岡部ユミ子 )

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