都市情報誌「東京ウォーカー」を始めとする「ウォーカー誌」や、ウェブサイト「ウォーカープラス」などを手掛ける株式会社角川クロスメディア(東京・千代田、福田全孝代表取締役社長)。同社は、2006年12月に社内SNSを本格導入し、社員同士のコミュニケーション活性化や、ナレッジ共有力の強化などに役立てている。運用開始から1年半弱が経過した現在、全社員の272名が参加し、アクティブユーザー率は週間で約30%。事業拠点間で暗黙知が行き交ったり、集合知が既存サービスへの新機能付加に直結したりと、社内SNSの活用による効果が徐々に表われ始めている。
同社は、2006年4月に「ウォーカー誌」を編集する紙媒体部隊のウォーカー事業部などが角川書店より分割されて設立。同年6月に、「ウォーカープラス」を運営する株式会社ウォーカープラスと、株式会社角川書店北海道を吸収合併した。先進的に社内SNSを導入するに至った背景には、そうした人の流動によるところがあったようだ。
「紙とウェブ部隊の共存に加え、紙からウェブへのシフト傾向もあり、企業としての社内における新たな試みを模索する中、SNSなら馴染みがあるだろう、との声をトップダウンで受け、導入による変化を見てみよう、といったもとでスタートしました」(同社IT開発部アプリケーション開発第一グループ、清岡健司チーフエンジニア)

「社内SNS上に蓄積された情報は宝の山。常に社員の誰もが気軽に参加・参照が可能で、企画の『種』となるものです。まさに情報を『植える』というイメージですね」と語る同社IT開発部アプリケーション開発第1グループの清岡健司チーフエンジニア
同年11月よりIT開発部で試験運用を開始し、1カ月程で全社的に導入。システムには、株式会社Beat CommunicationのASP型SNSパッケージ「Beat Pro」を採用した。
紙媒体を始め、ウェブやモバイルといった各メディアをクロスさせ、多様に事業展開する同社は、北海道から沖縄まで各地に拠点を有するため、社内SNS導入の最大利点に、拠点間のコミュニケーション活発化による効果が挙げられるという。

株式会社Beat CommunicationのASP型SNSパッケージ「Beat Pro」を採用。「日記」や「アルバム」「Q&A」など、機能を多数備えるが、最も利用率が高いのは「コミュニティ」機能。現在、編集者や営業マン、プログラマーなど、社員それぞれが現場レベルでの様々な提案や議論をコミュニティ上で展開しているという
「誰もが『立ち話』感覚でコミュニケーションを図れるのが社内SNSの特長。活用事例としては、例えば、全国でトップの成績を上げる九州の営業マンのナレッジが、ノルマ達成に悩む他拠点の営業マンと共有されたケースがあります」と清岡氏。面識がない場合でも、質問が投げ易い性質を持つ、社内SNSのメッセージ機能の活用から生まれた効果だ。プログラマーが開発技術をコミュニティ上で提案したところ、評判を集め、実際に既存サービスへ機能として実装されたケースもあるという。
従来は、メールを主とした遣り取りで、担当業務や案件外の社員との連携性が希薄となる面があったが、その緩和にも役立っている模様だ。「他部署が抱える問題に対するノウハウを持っていても、シェアができずにもったいない状態でした」と、清岡氏は導入前を振り返る。
同社SNSの運用上では特に利用ルールを設けていない。「ポリシーを設定しないことがポリシー」としているのが特徴的だ。清岡氏は、「規則で縛ると、管理下に置かれているような感覚を与えてしまいます。利用者の躊躇を生み、効果が見えなくなる懸念がある」と説明する。一方で、積極参加してもらうには、開始当初は管理者が率先して書き込みを行うなど、「運用者側での何らかの仕掛け作りも必要」とのことだ。
必要な情報を少ステップで
社内SNS上に集合知や暗黙知が蓄積されてきたことで、課題も浮上している。その最たるが「ファインダビリティ」と「知識情報処理」だという。
蓄積情報は大きな価値を持つが、欲しい情報や再利用したい情報を検索する際、キーワード自体は知らない場合が多く、だいたいのイメージで検索するケースが大半だ。
「自然文検索やレコメンド機能を組み込んで検索性を改善し、必要情報を少ステップで得られるようにすることが、更なる有効活用へと繋がる」(清岡氏)と話している。

「Walker」ブランドで知られる角川クロスメディア。出版とウェブポータル事業を展開(http://www.kxm.co.jp/)
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文:森村康久、写真:岡部ユミ子
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