《NTT新ビジネス推進室 中山俊樹 次長に聞く》 NGNとメタバースで新たな一歩、ngi groupにベンチャー投資

2008年07月08日(火)

[ 90 号]

 明治時代、NTTによって敷設された銅線のインフラは、電話という形で社会に浸透し、我々の生活を支えてきた。近年、コミュニケーションはIPベースにシフトし、そのニーズに応えつつ、より高品質なサービスへと進化するNGN(Next Generation Network)がスタートした。NTTは、そのメリットを最大限に発揮すべく、100%子会社のNTTインベストメント・パートナーズ株式会社を通じ、ngi group株式会社とその子会社の3Di株式会社に約16億円を出資し、メタバース(仮想空間)事業に乗り出す。

日本電信電話株式会社 新ビジネス推進室 次長 中山俊樹氏 「NGNの醍醐味はマルチデバイス、利用者中心のサービスが展開されること。NGN×メタバースでは、極めてリアルに近い顧客接点を、低コストで構築・維持可能になるでしょう」と語る

日本電信電話株式会社 新ビジネス推進室 次長 中山俊樹氏 「NGNの醍醐味はマルチデバイス、利用者中心のサービスが展開されること。NGN×メタバースでは、極めてリアルに近い顧客接点を、低コストで構築・維持可能になるでしょう」と語る


大変革期迎えた日本の情報網

 明治時代に敷設されて以来、百数十年の歴史がある電話網。脈々と音声を伝えてきたこのインフラは、十数年前からインターネットのプロトコルが乗るようになるなど、利用用途をさまざまに広げてきたが、「メタル」つまり銅線を中心に構築されたインフラそのものに変化はなかった。

 それが現在、「日本のネットワークインフラや携帯インフラで、世界に類を見ない大変革が起きている」とNTT新ビジネス推進室の中山俊樹次長は言う。

 「これまでのメタルから脱皮し、2010年代にはネットワークがどんどん『光』化されていきます。携帯についても現行の3Gが、最大100Mビット/秒超まで高速・大容量化したシステム「3.9G」へ移行して行く流れがあります。NGNや3.9Gでは、主に音声の伝送を中心とした従来のネットワークから、IP時代に適したネットワークへと進化していきます」

 NTTは、すでに商用のNGNサービスをスタート。本年3月より「フレッツ光ネクスト」を首都圏および大阪府の一部で提供開始している。2008年度の第3四半期までに政令指定都市、県庁所在地級都市に提供エリアを拡大し、2010年度までには現在の光サービス提供エリアにまでその範囲を拡大する予定だ。

 これほど急速に通信インフラの高速化が進んだ例はない。米国やEU、中国などでも起こりえなかったこの画期的な状況に、中山氏は「量が質の変化を起こす。つまりインフラの進化により、サービスの質的な変化が十分に期待できると考えています。その最たる例がメタバースではないかと思うのです」と大きな期待を寄せる。

NGNと仮想空間の接点

 米サンフランシスコのリンデンラボが仮想空間サービス「セカンドライフ」を公開したのは2003年。当時、通信インフラも、グラフィックボードやメモリ、CPUといったデバイスもまだ十分とは言い難く、パソコンで操作できる世界は大雑把で動きもぎこちないものだった。それからたった5年弱で、急激にその質が向上していった。

 「パソコンで平面的にしか見えなかったものが、立体化したり空間化したりする。大げさかもしれませんが、この進化には身の震えるような思いを感じました」

 そう話す中山氏は、NGNを含め日本のブロードバンドが2010年以降の変化を迎えるにつれ、これまで二次元だったものが三次元に変わるのは必然的な流れだと感じ取ったという。

 「これらの進化にはインフラの高速化と共に、デバイスの進化も欠かせなかったといえます。CPUやグラフィックボードなどの性能も進化し、インフラとデバイスの両面で本格的に環境が整ったと言ってもいいでしょう」

 つまり、今後インフラとデバイスの進化が加速することで、仮想空間サービスはより高度で使いやすくなる。単にリアルになるのではなく、さまざまなサービスと連携し合うことで、これまでにはないリッチな『エクスペリエンス』を提供できる場に進化していく。それに伴い、ネットワーク・コミュニケーションそのものの有り様が変わっていくというのである。

NTTグループとngiの連携

 冒頭で述べたNTTとngi group、子会社3Diの業務・資本提携は、NGNなどを活用したサービスの普及と拡大のために行われたもので、仮想空間ビジネス以外にも、この路線でさまざまな協業も検討されている。

 NTTからngi group・3Diへの出資は、国内外のベンチャー企業への投資を目的として設立されたNTTインベストメント・パートナーズ株式会社(以下、NIP)を通じて行われた。NIPとngiは、ベンチャーファンド運営のノウハウなど情報の共有も図る。また、ngiは、パートナー企業とNGN向けサービスを生み出すべく誕生した「次世代サービス共創フォーラム」にも積極的に参加することとなっている。今回の提携は、まさに「インフラとデバイスの融合」の先端を走るための画期的合意といっても過言ではないのである。

ICT業界に限らず、さまざまな分野や組織に携わる人が次世代サービス開発に共同で取り組める「次世代サービス共創フォーラム」(http://www.ngs-forum.jp/)を設立。NTTグループが技術・資金面で支援する

ICT業界に限らず、さまざまな分野や組織に携わる人が次世代サービス開発に共同で取り組める「次世代サービス共創フォーラム」(http://www.ngs-forum.jp/)を設立。NTTグループが技術・資金面で支援する


 業務提携における第一弾となるメタバース事業では、NTTはグループとして3Diと連携。2008年10月にメタバースSI事業の営業を開始し、その後NGNに対応した仮想空間の開発・提供を行っていく予定。1~2年後にはNGNと携帯連携のマルチバースビジネスも視野に入れているという。なぜ、3Diをパートナーとして選んだのか。中山氏はこのように話す。

 「第一の理由は、オープンソースのプラットフォームを使っているということです。世界中のコミュニティの知見を受け入れつつ、速いスピードで開発できる点は大きな魅力です。3Diはコミュニティにも積極的に貢献しており、安定的かつ信頼性の高いサービスの提供が期待できます。また、3Diが取り扱う『3Di OpenGrid』『3Di OpenSim』『3Di Studio』により仮想空間を構築するすべての要素をワンストップで提供できる点を評価しました」

ngi group 子会社の3Di株式会社(http://3di.jp/)。NTTグループとの連携により、オープンソースのメタバースプラットフォーム開発・提供を行っていく

ngi group 子会社の3Di株式会社(http://3di.jp/)。NTTグループとの連携により、オープンソースのメタバースプラットフォーム開発・提供を行っていく


 仮想空間サービスには、セカンドライフを筆頭に、多種多様な「メタバース」が存在する。しかし、プラットフォームごとにそれぞれの世界観とルールが存在するため、企業が独自にカスタマイズを行うことが難しい。ところが、3Diのオープンソース・ソリューションを用いれば、顧客企業が独自の世界を構築することが可能で、収益に直結するビジネス・インフラを提供することが可能になるという。また、SIサービスのみならず、SaaS的に仮想空間のアウトソーシングサービスも想定できる。

メタバース×NGNの将来

 それではメタバースビジネスは、NGNでどう変わっていくのだろうか。

 「例えば、仮想空間内のボイスチャットと、NGNの品質確保(QoS)を組み合わせれば格段に音質が向上します。また、ハイビジョンクオリティの動画を仮想空間内で再生するなど、NGN上で展開されるさまざまなサービス・アプリケーションと連携することで、よりリアルでリッチな体験を提供できるようになるでしょう」と話す中山氏は、仮想空間プラットフォームは、多様なサービスを連携させる母体となりうると考えている。

 NGNにより、仮想空間が新たな局面を迎える可能性が高まっている。NGN×メタバースで大きなビジネスの潮流が生まれる日は、想像以上に近いのかもしれない。

NTTが主催する「次世代サービス共創フォーラム」の概念図

NTTが主催する「次世代サービス共創フォーラム」の概念図

( 増田真樹 )

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