《モバイルマーケティング特集》モバイルマーケティングソリューション協議会の2氏に聞く、次世代マーケの中心はPCから携帯へ

2008年08月26日(火)

[ 96 号]

 高速化する通信速度や各キャリアによるパケット料金定額化などを背景に、携帯電話を中心としたモバイル端末によるインターネット接続者数は年々増加し、総務省の調べでは、平成19年度末には7287万人。利用頻度ではPCを上回り、特に13歳から29歳までの世代では圧倒的に優勢だ。昨年度末にはモバイルビジネス市場が1兆円を突破。企業側でもモバイルを活用したマーケティングの取り組みを活発化させている。一方で企業内での認識やノウハウの不足により、未だモバイルマーケティングに踏み込めていない会社が多いのも現状だ。本特集では、モバイルマーケティングソリューション協議会の2氏をはじめ、モバイルビジネスに造詣の深い各企業の代表者にモバイルマーケティングの基礎や戦略立案のポイントなどを語ってもらった。同時にモバイル業界の著名3企業のソリューション・サービスを紹介する。

 モバイルでは、従来のマーケティングと違って直接消費者にメッセージを届けることができるため、マーケティングの在り方さえ変えてしまう可能性を秘めている。モバイルマーケティングの歴史から戦略のポイントまで、業界団体のモバイルマーケティングソリューション協議会(MMSA)理事の深田浩嗣氏(株式会社ゆめみ代表取締役社長)と小川和也氏(グランドデザイン&カンパニー株式会社代表取締役社長)に話を聞いた。

深田 モバイルマーケティングが始まったのは、2001、2年頃です。飲料メーカーのサイトにアクセスして缶コーヒーに印刷された数字を入力するとプレゼントが当たる、というものでした。チョコレートのパッケージに印刷されたURLにアクセスして応募すると着メロが当たるキャンペーンもありました。応募ハガキがモバイルに変わったようなものでした。

深田浩嗣氏 株式会社ゆめみ代表取締役、MMSA理事。1976年生まれ、京都大卒。友人と自宅のガレージオフィスからスタートし、2000年1月に同社設立

深田浩嗣氏 株式会社ゆめみ代表取締役、MMSA理事。1976年生まれ、京都大卒。友人と自宅のガレージオフィスからスタートし、2000年1月に同社設立


小川 着メロというデジタルコンテンツがインセンティブとして成り立つようになったため、そういうキャンペーンが可能になったのです。その後はプレゼントだけでなく、コンテンツで集客して認知度を上げ、販売につなげるサイトも現れました。

小川和也氏 グランドデザイン&カンパニー株式会社代表取締役社長、MMSA理事。慶應大卒。1995年に安田火災(現損害保険ジャパン)入社。2004年7月に同社創業

小川和也氏 グランドデザイン&カンパニー株式会社代表取締役社長、MMSA理事。慶應大卒。1995年に安田火災(現損害保険ジャパン)入社。2004年7月に同社創業


深田 最近は認知型プロモーションなどに利用されており、PCではなくモバイルのみというケースも増えてきています。高級ブランドのプロモーションにも利用されるなど、ここ1、2年で大きく変わりました。

小川 2006年から07年にかけて、パケット定額、FOMAによる高速通信、ナンバーポータビリティなど、様々な要素が複合してモバイルを取り巻く環境が大きく変わり、モバイルユーザーが増えた。これが要因となって企業がモバイルをマーケティングに利用し始めたのです。それまでは企業にモバイルを使おうという意識はほとんどなかったのですが、従来のマスメディアによるマーケティングを補完しエンドユーザーへのリーチを増やし、タッチポイントを増やすために利用されるようになった。

増える成功事例、月商数千万超も

深田 これまではモバイルECに半信半疑だった企業も、モバイルをやらなければ、と切迫感を持ち始めています。

小川 実際、成功事例が増えましたよね。同じ業界の他社がモバイルで売上を上げているから、自社も参入しようと考える企業が多くなりました。しばらく前の成功事例は単発的だったり、キャンペーンが多かったのですが、コンスタントに月商数千万を売り上げるとなると一過性のものとは言えなくなります。中にはモバイルマーケティング専門の事業部を立ち上げたり、モバイル専門子会社を設立している大手企業もあり、確実に売上を上げています。

深田 最近の流れを見ていますと、ブレークするのは2008年末から09年にかけて訪れるのではないかと感じます。モバイル利用がPCを超えたとはいえ、実際にモバイルマーケティングを行なっている企業は全体から見るとまだ少ない。ただ、以前と違うのはテストではなくビジネス展開する前提で予算検討まで始めた企業が増えていることで、何かのきっかけがあれば一気に加速するという状況だと思います。

小川 モバイルマーケティングを行なうベンチャーには、まだまだクリアしなければならない問題が多く残されています。多くの場合、モバイル単体でマーケティングを行なう訳ではなく、吊り広告やポスターなど他媒体と連動して展開しますから、それらの知識や幅広い視点からの企画が必要です。また、特定エリアで集中展開する場合はエリアマーケティングの理解も必要になるなど、モバイル以外の知識が問われてきます。

深田 確かにモバイルサイト構築やメルマガ制作だけで終わらないケースが多いですね。モバイルECの場合は受発注、在庫管理、物流などが発生しますから、その知識も必要になります。モバイルは入口で、その先に広がるビジネス全般について幅広い対応を求められることが多い。モバイルで成功している企業はサイトで消費者を惹き付けているだけなく、メールマーケティングのノウハウや物流のノウハウで売上を伸ばしています。

小川 モバイルマーケティング業界がサービスを継続的に提供し、ビジネスとして対応できる体制を整えなければならない。マーケティングはスポットでなく長いスパンで運用やメンテナンスに対応する必要があります。これまでモバイル業界は急激に伸びてきたので、さまざまなレベルのベンチャーが混在しています。今年から来年にかけて淘汰が始まり、優秀な企業が生き残っていくのではないかと思います。


PCのノウハウ「役に立たない」

深田 一方で企業がモバイルマーケティングを導入する体制にも課題が残されていますね。モバイルマーケティング事業部を抱えている企業はまずあり得ない。Web担当と兼任になっていることがほとんどで、モバイル関連の担当者を育成する教育体制もありませんから、外注することになります。EC担当者にモバイルの知識をつけさせたいから出向させて欲しい、というケースもありますね。

小川 意識を変える必要があるかもしれませんね。モバイルECと一言で言っても、ジャンルやユーザー層、商品が違えば方法が違う。アパレルとコスメでもまったく違います。PCのECサイトでのノウハウはほとんど役に立ちません。モバイルでの豊富なノウハウを持ち、モバイルビジネスを理解したベンチャーと組む必要があるでしょう。

深田 PCとはユーザーの利用形態が違うということを理解していない企業も多い。PCの場合は自分で検索して購入しますが、モバイルはECサイトなどから送られたメルマガの情報を見て購入します。また、数ある情報の中から自分の気に入ったものをピックアップする、という感覚で利用されており、メルマガの開封も土日などプライベートの時間にゆっくり見るというパターンが多いですね。モバイルの機能が向上したことでPC離れが進んでおり、個人利用はモバイルにシフトするでしょう。そうなった時、消費者の生活と深く結びついたアイテムとして、モバイルは次世代マーケティングの中心となると思います。

モバイル マーケティング ソリューション協議会(高藤丈也理事長= 株式会社IMJモバイル)は2006年に11社が発起人となって設立されたモバイル・マーケティングの事業者団体。モバイルキャンペーンサイト構築や制作時の「MMSAガイドライン」作成やカンファレンスなどを実施している http://www.mmsa.jp/

モバイル マーケティング ソリューション協議会(高藤丈也理事長= 株式会社IMJモバイル)は2006年に11社が発起人となって設立されたモバイル・マーケティングの事業者団体。モバイルキャンペーンサイト構築や制作時の「MMSAガイドライン」作成やカンファレンスなどを実施している http://www.mmsa.jp/

( 文:勝山尚武、写真:更科智子 )

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