《マスメディア未来予想図 001 TV×IT》 フジテレビ 『近未来予報ツギクル』 福原伸治ディレクターに聞く

2008年09月02日(火)

[ 97 号]

 マス4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の広告費が3年連続して減少している。それに比べ、ネットの広告費は大きく伸びた。04年にはラジオ広告を、07年には雑誌広告を抜き、新聞広告さえも射程圏内にとらえている。広告に支えられてきたマスメディアはこの先どうなっていくのだろう? 研究者や評論家らによる予測は色々と出ているが、肝心の現場の声はあまり聞えてこない。本特集では実際にマスメディアの最前線で活躍中の業界人にインタビューし、メディアの展望やITとの関わりなど、未来像を探っていく。第1回はフジテレビの深夜番組『近未来予報 ツギクル』のディレクター・福原伸治さんに話を聞いた。

ふくはら・しんじ   株式会社フジテレビジョン情報制作局情報企画部プロデューサー・ディレクター。1963年大阪市生まれ。京都大学経済学部卒。1986年入社。CGを大胆に用いる独特の手法での演出により、斬新な番組を多数生み出した。日本初のヴーチャルスタジオ番組と言われた『アインシュタイン』や子ども番組『ウゴウゴルーガ』などはその代表作。他に『秘密倶楽部o-daiba.com』『快進撃TVうたえモン』『ガチャガチャポン!』など多数

ふくはら・しんじ  株式会社フジテレビジョン情報制作局情報企画部プロデューサー・ディレクター。1963年大阪市生まれ。京都大学経済学部卒。1986年入社。CGを大胆に用いる独特の手法での演出により、斬新な番組を多数生み出した。日本初のヴーチャルスタジオ番組と言われた『アインシュタイン』や子ども番組『ウゴウゴルーガ』などはその代表作。他に『秘密倶楽部o-daiba.com』『快進撃TVうたえモン』『ガチャガチャポン!』など多数


“通信と放送の融合”という言葉を耳にするようになって久しい。しかし、テレビとネットの双方の特性がうまくクロスされた番組はあまり目にしない。そんな中、「近未来予報ツギクル」(フジテレビ木曜深夜27時台)は、ネットにおけるブログマーケティングの手法を取り入れた番組で、色々な可能性を感じさせ、以前から注目を集めていた。

『近未来予報 ツギクル』の番組サイト http://www.fujitv.co.jp/tsugi/

『近未来予報 ツギクル』の番組サイト http://www.fujitv.co.jp/tsugi/


 同番組は、ITアウトソーシングサービスのトランスコスモス株式会社とフジテレビが共同で企画したもの。ブログデータの解析にはソネットエンタテインメント株式会社が開発した「Blog Keyword Visualizer」(BKV)を活用している。

 先月7日、同番組は「2008年ナマで私のツギクル」と題して、Webカメラで視聴者が参加するというインタラクティブな放送を試みた。さらに、テレビ生放送終了後もネットでは番組は続き、ライブストリーミングで視聴を可能にした。

 また翌日からはその模様がフジテレビオンデマンドでCM入りで配信された。いずれも、未だに番組の無料ストリーミング放送に及び腰なテレビ局からすれば画期的な試みだ。

 ディレクターの福原伸治さんは、『アインシュタイン』や『ウゴウゴルーガ』などフジテレビの伝説的な番組の創り手として知る人ぞ知る存在。また、フジテレビサイト内のWebマガジン『少年タケシ』(=エッジの効いたおもしろいコンテンツが満載)の編集長でもある。

飲み込まれる危機感はない

 福原さんは、テレビとネットの関係についてどう考えているのだろうか?

 「『融合』って言葉が使われていますが、僕らは『連携』だと考えています。役割も違うし、お互い得意な分野を補いあう関係。今のところ、外部の人が思っているほど、ネットに飲み込まれるといった危機感は抱いていません。例えば、今回のライブストリーミングにしても、オンエアから続けて見てくれたのはテレビの視聴者の約1%なんです。実感的にもそれくらい影響力の差は感じますね」

 「MACでは視聴できない」「専用のソフトをダウンロードしなければならない」などの要因があったとはいえ意外な数字だ。オンエアが深夜のかなり遅い時間帯であることや、番組の内容から考えて、ネットとの親和性が高いように思われたからだ。

 「でもその力の差が未来永劫続くかどうかはわからない。もし関係がイコールになった場合の準備もしておかなければならない。僕はゴールデンで視聴率をバンバン取るというタイプじゃないし、どちらかというとアウトサイダーなポジションだけど、その分、エッジがよく見える。また『少年タケシ』というサイトの編集長をやっている関係で、テレビで求められている番組と、ネットで求められているコンテンツの違いは多少わかっているつもり。だからこそ、こうやってお互いを活性化させていく役割を担っているのだと思っています」

 コンテンツを作る上で、テレビとネットの最大の違いは「テレビはチャンネル数も限られているし、こちらから仕掛けて降りていかなくてもいい。何かやればとりあえず見てもらえる。でもネットの場合はこちらからリーチをかけないと、待っていても来てくれない。しかも中途半端な仕掛けだと乗ってきてくれない」ことだと福原さんは考える。

 その言葉通り、彼は編集長をつとめるWebマガジン『少年タケシ』で色々な仕掛けを試みている。例えばこの春、テクノポップユニットPerfumeとコラボしミュージックビデオを公募した。入選作は同サイトで公開されている。

 一般の動画サイトに投稿されているモノはグレーゾーンもしくは違法なモノが多い。それを合法的にやろうという試みである。

プロトタイプの番組になる予感

 福原さんのようにネットのリアリティを体感して仕掛けることができる制作者はテレビ局ではまだ少数派のようだ。

 ネットとの連携にしても、テレビ業界全体としてはあまり積極的でない印象を受ける。確かに現時点では、テレビ局にとってメリットは少ないし、従来のビジネスモデルを死守したいという気持ちも理解できる。

 しかし広告出稿では確実に大きな変化が現われはじめている。テレビ局にとっては、一見ピンチのようにも見えるが、逆に大きなチャンスだととらえることもできる。その抜きんでたコンテンツ制作能力をもってすれば、ネットを利用した新しいビジネスモデルを創り上げていけるはずだ。

 それが具体的にどういうモノになるのかはわからない。ただ今回取り上げた『未来予報 ツギクル』は、単にコンテンツのおもしろさだけでなく色々なビジネスに発展させることができる可能性が秘めていることから、今後ネットとの連携を考える時の、プロトタイプと呼べる番組になるのではないだろうか。


『近未来予報 ツギクル』(フジテレビ木曜深夜27時台~)はこれからヒットするモノ・人・現象を予測する新感覚情報エンターテインメント番組。ブログのキーワード集計データをベースに今ヒットしているモノの「ヒットの法則」を完全分析して次の流行りモノ=「ツギクル」を見つけ出す!

▼キャスト:ツギクル予報官・木下あゆ美/椿姫の花予報・椿姫彩菜/デレラ(声)・相川梨絵、▼スタッフ:企画・出澤真理子/ディレクター・福原伸治/プロデューサー・中村百合子
( 川上徹也 )

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