《グラムメディア・ジャパン株式会社 CEO 兼 グラムメディアインク・バイスプレジデント 山村 幸広 氏に聞く》 規模が支配するネット広告市場に一石投じたい

2008年09月09日(火)

[ 98 号]

 エキサイトやダブルクリックジャパンの社長を務めた山村幸広氏がこのほど、米グラムメディアの日本法人社長に就任した。同社は女性向けサイトを束ね、高級ブランドを主な広告主とするアドネットワークとして急成長している。日本での事業展開にあたり、日本のネット広告事業の草分けで、女性向けポータル運営の実績もある山村氏を招聘した。その山村社長に、サービスインを11月に予定する日本でのグラムメディアの展望などについて聞いた。

やまむら・ゆきひろ ◇ 1986年、トランスコスモス入社。同社副営業本部長から取締役事業企画開発副本部長を経て、1997年、日本ダブルクリックの代表取締役社長へ就任。1999年にエキサイトの日本法人責任者、翌2000年に同社代表取締役社長に就任。2008年6月エキサイト社長を退任、現在に至る

やまむら・ゆきひろ ◇ 1986年、トランスコスモス入社。同社副営業本部長から取締役事業企画開発副本部長を経て、1997年、日本ダブルクリックの代表取締役社長へ就任。1999年にエキサイトの日本法人責任者、翌2000年に同社代表取締役社長に就任。2008年6月エキサイト社長を退任、現在に至る


 「一番分かりやすい言い方をすると、女性サイトを集めたアドネットワークですね」――山村氏はグラムメディアのビジネスモデルをこう説明する。女性をターゲットにしているサイトの広告枠を集め、ファッションやコスメ、ライフスタイルなどのカテゴリに分類してクライアントに販売する。米国ではもともと、単独のメディアとして2003年にスタートしたが、2年ほどでアドネットワークに業態転換した。現在、約640のサイトが加入しており、月間のユニークリーチ(同一ユーザーの重複を除いた数)は7700万。1位グーグル、以下ヤフー、イーベイ、アマゾンと続くランキングで13位に相当する。過去1年で3倍くらいに増えていて、その伸び率はフェースブック並みという。2008年1~12月の売上高は100億円超を見込む。

グラムメディア(米国) http://www.glammedia.com/

グラムメディア(米国) http://www.glammedia.com/


 成長の理由はサイトの数の伸びだけではない。メディアの価値を高めて「単価を上げることにも成功している」。これまでのアドネットワークは、余った広告枠を集めて安売りする場合が多い。グラムは今ある広告枠の価値を上げる。だから、きちんとした基準を定めて「ちゃんとしたメディアしか集めない」。逆に、広告主も、ナショナルクライアントやラグジュアリーブランドなど「ヤフーには絶対ないクオリティ」を保っていく。メディアとクライアント双方の価値が高まる正のスパイラルに持ち込む戦略だ。CPM(広告表示回数1000回あたりの料金)を「一桁上げたい」。

 クライアントやユーザーにグラムメディアの「テイスト感」をイメージしてもらうために、「ショーケース」と呼ぶサイトも設ける。「リーチがいくら、ページビューがいくらという会社にはしたくない」。

タイミングはいい 今なら成功できる

 「実は、ダブルクリックでも同じようなことがしたかった」と山村氏は打ち明ける。ダブルクリックは山村氏が1997年に日本に導入したアドネットワーク。ただ、山村氏の構想に時代が追いついていなかった。しかし、今は違う。「昨年後半から今年にかけて、高級ブランドの側もネットにも広告を出さなければならないというマインドが高まりつつある」と広告市場の潮流を分析する。「タイミングはいい。グラムが2年前に来てもだめだったが、今なら成功できる」。6月にエキサイト社長を退任した後、しばらくゆっくりしようと思っていたという山村氏がグラム社長についた理由の一つは、リベンジであるのかもしれない。

 山村氏とインターネットビジネスの出会いはその黎明期に遡る。トランスコスモスに勤務していた時代、世界最初のブラウザ「モザイク」を各種の接続ソフトとパッケージして1万9800円で販売。「ネットスケープが無料で配布されるようになるまで1年半くらいの間、かなりの売上規模でした」。

 その後も、ダブルクリックでネット広告、エキサイトでも女性サイトなどを立ち上げ、ネット関連企業の事業で必要不可欠な「スピード経営」を実践し、プロ経営者として実績を残してきた。

 しかし、今回、山村氏はひとまず、スピードを脇に置く。「初年度は急拡大というよりも、いい広告主といいメディアを集めることを最優先に考えている」。いわゆる女性サイトの上位のほか、有力な雑誌のブランドを冠しているサイトの参加も募る。ロングテールの観点から、質が高いブロガーも集める。グラムのテイストに合ったスキンやデザインを提供し、使ってもらうことも検討している。十数年に及ぶネットビジネス経営者としての経験から「テクノロジーはすぐに追いつかれる。強力なブランドをいかに構築するかが、コンシューマーを対象としたネットビジネスで勝つ秘訣」と考えている。

グラムメディアのポジショニングイメージ。女性を中心にラグジュアリーなブランド商品を訴求するのに適した広告だという

グラムメディアのポジショニングイメージ。女性を中心にラグジュアリーなブランド商品を訴求するのに適した広告だという


 「規模が支配する今のネット広告市場に一石を投じたい。とりあえず、ヤフーに出稿して、グーグルのリスティングに出しておけばいいという風潮に納得していないメディアとクライアント、そしてユーザーは少なくないはずだ」。考えを共有できる企業から出資を受け入れ、ジョイントベンチャーとして経営していくこともあり得るという。着実にグラムメディアの質を高め、ブランドを確立することで、来年には10億円の売り上げを達成し、7~9月には利益を出す計画だ。

成功が生まれる瞬間の独特な雰囲気を

 北京オリンピックではソフトボールの優勝に感動したという。「熱投を繰り広げたピッチャーというよりもむしろ、彼女のモチベーションを引き出したチームの雰囲気に思いが至った」と話す。「モバゲーもミクシィも、言ってみれば運があって生まれたと思う。それは偶然ではなく、成功したビジネスが生まれる瞬間には、会社も一種独特な雰囲気になっていることが多い」。ソフトボールチームの様子にそんな雰囲気を感じたという。「グラムメディアも必ずそういう会社にする」。山村氏は新しい挑戦に燃えている。

山村氏を知る3つのキーワード

《座右の銘》 臨機応変
日々新しい技術やサービスが生まれるネットビジネスの世界で生き残るには、企業も変化し続けることが求められる。ミクシィもモバゲーも創業以来の事業にこだわっていては生まれなかったと思う

《最近気に入っているWebサービス》 facebook
実名で、知らなかった人同士が知り合えるのは面白いし便利。大学の同級生をこうやって見つけたらどうですか、というふうに支援してくれる仕組みがいい。ミクシィは知人が使うという前提。日本でも誰か、きちんとやらないかなあ

《交友関係》
先輩経営者の方にはかわいがってもらっていて、マクロメディア社長だった手嶋雅夫さんやマイクロソフト社長だった古川亨さんからは、夢を聞かせてもらいました。古巣のトランスコスモス社長の奥田昌孝さんやサイバーエージェント社長の藤田晋さん、ディーエヌエー社長の南場さんとは、よくお会いしたり、食事をしたりしています

( 麻田桂 )

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