イデアクロス株式会社 代表取締役兼CEO 中嶋 公栄氏に聞く 中小企業の販路拡大と効率化を支援

2008年09月17日(水)

[ 99 号]

 中小企業向けのウェブ構築システムを中心としたビジネスアプリケーションでのSaaSサービス「Allin 1 OFFiCE」(オールイン・ワン・オフィス)が登場した。提供するのは中小企業向けのホームページ・ネットショップ構築ASPサービスを展開してきたイデアクロス株式会社(東京・中央)だ。代表取締役兼CEOの中嶋公栄氏は、特に地方の中小企業支援に力を入れている。なぜ地方に注目するのか、中小企業向けサービスは今後どう展開するのかなどについて中嶋氏に聞いた。

なかしま・こうえい 岐阜県郡上市生まれ。1993年24歳の時に独立起業、インターネット黎明期にネットショップを開設するなど先進的なビジネスに取り組む。2004年、イデアクロス社を設立し中小企業向けにWeb構築ASPなどを提供。現在に至る

なかしま・こうえい 岐阜県郡上市生まれ。1993年24歳の時に独立起業、インターネット黎明期にネットショップを開設するなど先進的なビジネスに取り組む。2004年、イデアクロス社を設立し中小企業向けにWeb構築ASPなどを提供。現在に至る


 「田舎を元気にしたい。地方の中小企業の底上げが日本経済の復興につながるはず」と語る中嶋氏は、岐阜県山間部の村で生まれ育った。父親が地域貢献に力を入れる様子を「子供の頃は理解できなかった」と振り返る同氏も、長じるにつれて父の思いを継ぐように地方活性化を意識するようになる。

 「郷愁もあるのかもしれないが、地方が元気になって欲しいと思う。農業の近代化やIT化も含めて、何かしたいという思いは常に持っている」と語る中嶋氏が「あえいでいる中小企業のために」用意したのが「Allin 1 OFFiCE」だ。

 「Allin 1 OFFiCE」はネットショップ・ホームページ構築運営システムを中核としたSaaSプラットフォームサービスだ。通常のホームページ構築運営システムの利用料金は、月額6000円。これに、独自ドメインの取得・管理やSSL、グループウェアのアカウント5つ、作成数無制限のメールアドレスといった無料サービスが付属する。

Allin 1 OFFiCEの製品ページ。現在、「ソリューションベース開発で大企業の開発案件を多数受注している」(中嶋氏)という  http://www.allin1.jp/

Allin 1 OFFiCEの製品ページ。現在、「ソリューションベース開発で大企業の開発案件を多数受注している」(中嶋氏)という  http://www.allin1.jp/


 従業員数名程度の中小企業がインターネットを利用したPRやネットショップによる販路拡大を考えた場合、非常に小さな投資で取り組みを開始することができるのが特徴だ。モバイルに対応したホームページやネットショップを直感的な操作で構築することができ、クレジットカード決済などネットショップに必要な機能の全てが無料または安価に提供されている。「国内最高のサービスだと自負している。投資家からは、『機能に対して安すぎる』と指摘されている」という状況ながら、この価格で提供するのは「自分なら個人でも払える金額かどうかを考えて決めた」からだという。

中小企業向けSaaSの時代が到来

 グループウェアやSSL、クレジットカード決済など「Allin 1 OFFiCE」の無料オプション機能は、それぞれ有料サービスとして提供できるクオリティを持っている。しかし中嶋氏は「ホスティングやグループウェアでビジネスをする気はない」と言い切る。

 「グループウェアはある程度成熟した企業の業務をブラッシュアップするもの。ネットショップで販路を広げると同時にグループウェアで業務効率化を計るなど、あえいでいる中小企業の助けになるものを提供したい」と、焦点はあくまでも中小企業に向けられている。

「Allin 1 OFFiCE」はホームページ・ネットショップ・グループウェア・オンライン予約システムをはじめとする各種WEBツールを一元的に提供

「Allin 1 OFFiCE」はホームページ・ネットショップ・グループウェア・オンライン予約システムをはじめとする各種WEBツールを一元的に提供


 サービスの提供形態もユーザー視点だ。2004年に設立されたイデアクロスでは、当初からSaaS型でのサービス提供を行っていた。しかし中小企業向けにSaaSを提供するには、時代が早すぎた。「分かりづらいと言われ、機能ごとにパッケージ化したASPサービスにした」と当時を振り返る。

 中嶋氏はSaaSに限らず、時代の一歩先を行くビジネスに取り組んできた。イデアクロスは現在では独自ソリューションの開発販売や受託開発、ウェブマーケティングなどを提供している。一般的なASP事業者は汎用的なシステムを共同利用することで低コスト化を実現していくビジネスモデルであるが、中嶋社長の発想は違っていた。顧客の要望があるたびにコストにこだわることなく機能追加を重ね、Allin 1 OFFiCEにはユーザー志向のあらゆる機能が網羅。その結果、予想していなかったことが起き始めている。大手企業からの受注が相次いでいるのだという。「Allin 1ベースで開発を行うと基本機能が充実しているため、開発期間が圧倒的に短く、低コストで済む。競合他社の1/4以下の金額で開発できるケースもある。もちろん安定性も高い」(中嶋氏)

 「ユーザーのスキルが底上げされた今、ようやくやりたい形にできた」。本来の構想に立ち戻り、さらに充実したサービスとして提供される「All in 1 OFFiCE」について、イデアクロスでは2年以内に5000社の新規利用を見込んでいる。

従業員の満足は顧客満足につながる

 イデアクロスには、中嶋氏直轄の社長室内にカスタマーサポートが存在する。各サービスユーザーからの要望やクレームは、当日中に同氏の下へと集められる。現在、イデアクロスが提供しているサービスの大半は顧客要望をくみ上げて実現したものだ。

 また、全ての事業を中小企業向けに特化しているわけではない。「Allin 1 OFFiCE」で提供する各種サービスをベースとした大企業向けのカスタマイズなどの大規模開発案件を手がけるほか、韓国の大学と提携して日本企業向けの人材育成にも力を入れている。

 中嶋氏は経営理念として「この会社に入ってよかったと社員が思える経営」を掲げている。「社員に充実感がなければお客様にもホスピタリティは提供できない」と語る同氏は、社員、中小企業、地方と多くの人々を幸福にするための環境とツールをこれからも提供し続ける。


中嶋公栄氏を知る3つのキーワード

《都会嫌い》
イデアクロス設立前は長く名古屋でビジネスを展開。人が多い所が嫌いで、上京してしばらくは名古屋に帰りたくて仕方がなかった。今ではすっかり東京に馴染んだ

《あのまま続けていれば》
インターネット黎明期にネットビジネスに取り組んだ後、飽きてしまった。私の少し後の世代がインターネットバブル。楽天もなかった頃からショッピングモールのことも考えていた。もしあのまま続けていればと考えることもある

《独自性へのこだわり》
研究を重ねた画面構成やサービスが他社に真似られると、自社サービスを変更。独自でありたいという思いがサービスのブラッシュアップにつながっている
( 文:増田千穂、写真:岡部ユミ子 )

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