《アカマイ株式会社 代表取締役社長 小俣 修一氏に聞く》 SaaSからHD動画配信までサポート 「アカマイ・サーバ」

2008年11月11日(火)

[ 103 号]

 インターネットを利用して業務アプリを利用するSaaSや、高解像度の映像を配信するサービスが増えてきている。これらを実現するためのインターネットの「高速化」や「信頼性」を支えているのが「アカマイ」なのだ。どこの国から配信されているものでも、世界中で快適かつ安全に利用できるようにするため、インターネットの「高速道路」を構築してきた「アカマイ」。その役割と発展について代表取締役社長の小俣修一氏に聞いた。

こまた・しゅういち 1954年生まれ。慶応義塾大学大学院工学研究科を卒業後、Compaqコンピュータ営業推進本部長、NTTソフトウェア営業統括部長、BEAシステムズ取締役営業本部長、Macromedia常務取締役を歴任し、2005年12月1日にアカマイの代表取締役社長に就任。2008年7月には米国本社日本担当副社長にも就任している

こまた・しゅういち 1954年生まれ。慶応義塾大学大学院工学研究科を卒業後、Compaqコンピュータ営業推進本部長、NTTソフトウェア営業統括部長、BEAシステムズ取締役営業本部長、Macromedia常務取締役を歴任し、2005年12月1日にアカマイの代表取締役社長に就任。2008年7月には米国本社日本担当副社長にも就任している


瞬時に、最も速い経路を選択する技術

 「アメリカの会社にはあまり社是はありませんが、アカマイには『インターネットを予測可能で、信頼のできる、測定可能なものにする』という社是があります」と小俣氏は語る。この社是が示すように、アカマイは世界に広がるインターネットに信頼性と拡張性を与えている。

 アカマイは1998年にMITからスピンアウトした企業だ。インターネットに信頼性を与えることを目的として設立され、現在の高速かつ確実な通信を可能にするシステムへと変貌させた。「ISPの集合体であるインターネットというのはバケツリレーのようなもの。途中で誰かがサボったりすればすぐにエラーが出てしまう。ビジネスで利用できる信頼性を確保するには何らかの措置が必要になると考えられていた」と小俣氏は語る。インターネットが普及する中で、実際にそれが必要とされたのはグーグル創業時だった。「バケツリレーのBGPラインを一般道路とするならば、速度と信頼性を持つ高速道路を作るのがアカマイ・サーバ」だという。

 アカマイ・サーバはインターネット上の主要拠点に設置されることで、インターネット上に「高速道路」を構築する。ユーザーに配信するために一番最適なサーバとコンテンツを配信するサーバとの間に複数の経路を確保し、瞬時に最も速い経路を選択する技術をもっている。これによって、物理的には離れたところにあるサーバとユーザーが高速に接続されるようになり、海外のコンテンツも気軽に楽しめる現在のインターネット環境ができあがっているのだ。

アカマイ社の受付にある、アカマイ・サーバへアクセスがリアルタイムにビジュアル化される地球儀。飛び出す光柱の長さがトラフィック量を表している

アカマイ社の受付にある、アカマイ・サーバへアクセスがリアルタイムにビジュアル化される地球儀。飛び出す光柱の長さがトラフィック量を表している


 現在、世界に3万4000台のアカマイ・サーバが設置されている。「大量のサーバを設置すること以外にも、いくつもの問題がありました。そのうちの一つがセキュリティです。コンテンツサーバを狙う攻撃にアカマイ・サーバは常に晒されることになります。それに対抗する措置をとることで、アカマイ上のオリジン・サーバは非常に安全な状態になります」と小俣氏。

 実際、ホワイトハウスやFBIといったアメリカの政府機関を始め、日本でも東京都や大阪府がセキュリティのためにアカマイを利用している。

「第2日テレ」で採用、次世代のインターネット利用を実現

 アカマイのサービスはEコマース、動画などのエンタテインメント分野、ソフトウェアダウンロード、業務アプリなど、様々なところで利用されている。「ウイルス対策ソフトのupdateや、Windows Updateもアカマイを利用しています。その配信時にユーザーのIPアドレスとアカマイ・サーバを紐づけることでユーザーの在住地域を特定し、限定されたエリアへのコンテンツ配信も可能にしています。これによって、マーケティング広告でも活用されるようになりました」と小俣氏は語る。また業務アプリでの利用については「以前はインターネットは業務に利用できないといわれていましたが、現在ではSaaSが増えてきました。アカマイが一段上のレイヤーでセッションを保障することで、業務利用に耐えられるようになっているのです」とも語る。

 エンドユーザーに身近な採用例としては、任天堂のWiiやソニーのPS3向けのコンテンツ配信への採用がある。最新の事例は、日本テレビの動画ポータルサイトである「第2日本テレビ」での採用がある。

 「HD品質の動画配信にも対応した実験放送も始めている。キャッシュできないコンテンツもアカマイズすることで配信できる。キャッシュの会社ではなく、インターネットに信頼性を与える会社がアカマイです。これが10年前にアカマイがブループリントをもって事業を始め、それを実現した姿なのです」と小俣氏は力強く語る。

アメリカのサーバで配信されているハイデフィニション(HD)コンテンツは、THE HD TV(http://www.thehdweb.com/)で見られる。チャンネル切り替えも瞬時に可能

アメリカのサーバで配信されているハイデフィニション(HD)コンテンツは、THE HD TV(http://www.thehdweb.com/)で見られる。チャンネル切り替えも瞬時に可能


 インターネットの基盤を支え続けてきたアカマイが、エンドユーザーにとってより身近な存在になってきている。

【NEWS】FMS3のコンテンツ保護技術で新世代映像配信を実現

 第2日本テレビでは、インフラとしてアカマイを利用し、配信フォーマットとしてFLVを利用している。日本では映像配信といえばWMV方式がメジャーだが、これはコンテンツに対する著作権保護の観点から採用されているフォーマットだ。「以前はコンテンツ保護といえばWMVのDRMでしたが、すでに海外では切り替わってきています」とアドビシステムズ DMOテクニカルエバンジェリストの太田禎一氏は語る。今回、WMVが採用されなかった理由は、海外では動画コンテンツ配信の多くが無料かつ非会員制のものになってきているからだ。「広告モデルでの無料配信の場合、多くのユーザーにリーチすることが重要です。WMVだとMacユーザーは見ることができません。少ないと言っても10%程度はいるMacユーザーを切り捨てることはできません」と太田氏。

Flash Media Server 3の優位性について語る、アドビシステムズ株式会社・太田禎一氏

Flash Media Server 3の優位性について語る、アドビシステムズ株式会社・太田禎一氏


 WMVの代わりに利用されるようになっているのがFLVだ。コンテンツ保護についても「Flash Media Server 3(以下FMS3)」では強力になっている。「特定のプレイヤーからしか視聴できないように制限することができます」という。暗号化しての配信も可能であり、ファイルをダウンロードされる心配もない。

 今回リニューアルされた第2日本テレビでは、短時間コンテンツだけではなくSD品質で1時間を超える番組も配信されている。

 どのOS、どのブラウザからでも手軽に見られるインターネットテレビは、FMS3とアカマイの組み合わせで実現されつつある。
( 文:増田千穂、写真=更科智子 )


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