米連邦道路管理局は2004年、10年という歳月を経て、ようやく従来道路標識に使われていたハイウェイフォントから、新デザインのClearviewへの移行を承認し、現在すでに20州以上で新しい標識が使われ始めている。標識のフォントが変更されるのは1949年以来初の試みだ。合衆国全体の道路標識を変えるという莫大なプロジェクトに携わり、全く新しいフォントを開発するという意外な方法で、従来の標識が持つ問題点を見事解消した、環境デザイナーのドナルド・ミーカー氏に、新フォント開発までの経緯について話を聞いた。

環境デザイナーで、Clearviewの生みの親。オレゴン州出身。大学で美術を専攻、ニューヨークに渡り、グラフィックと産業デザインを学ぶ
従来の標識が抱えていた問題このプロジェクト以前、オレゴン州からの依頼で、街に雑然と散りばめられた旅行者用の標識を改善する業務を任されていたミーカー氏。ここで従来の標識が持つ難点に気づくことになる。
ミーカー氏: 「オレゴンでのプロジェクトでフィールドワークを進めるにつれて、これからもっと情報を取り込もうとしていたはずの街の交差点が、すでに雑然とした標識で溢れ返っていることに気づきました。さらに、もともと読みにくかった標識内の文字は、研究してみると予想以上にひどかったのです。従来標識に使われていたのは、1949年に作られた「レロイ文字」と呼ばれる機械製図用の文字システムに基づいて作成されているのですが、もともとは書体のデザインに関する知識はありませんでした」
従来アメリカの道路標識に使われていたのは、米連邦道路管理局が承認するSeries B~FとSeries E Modifiedと呼ばれるハイウェイ・ゴチックフォント。特徴は大文字直径が4インチ、小文字直径が3インチの太字。弱点は、文字内の空白が狭く、車のヘッドライトで標識が照らされると、文字に使用される白いペイントが逆反射材料となり、文字が原型をなくし、電球のように白い塊に見えてしまうハレーションという現象を起こす点であった。
問題は、これが さらに高齢者ドライバー増加の傾向に対する懸念へも繋がる点だった。事実、米国勢調査局によれば、2020年までにはアメリカ総人口の20%以上が65歳以上の高齢者になると予測されており、医学的にも、人間の視力は20歳を境に、以後13年ごとに倍の光の量が必要になるという結果も出ている。
オレゴンでのプロジェクト終了後も、ミーカー氏はこの道路の標準仕様に関する研究を続け、研究者のマーティン・ピエトゥルーチャ氏、とフィラデルフィア交通調査局のフィル・ガーベイ氏の協力のもと、産業・通信からオフィス関連まで幅広く手がける3M(スリーエム)に歩み寄り、1993年に創業資金を受けることになる。
10年に及ぶ新フォントの研究と開発
ミーカー氏: 「目標は、国勢調査の結果から、視認性を20%上げることでした。しかし20%大きな文字を作れば、20%標識の幅を広げ、最終的には50%標識のサイズ自体を大きくする事になる。これを実行しようとすると何十億ドルという事業となり、実質的に不可能でした。したがって、サイズはそのままに視認性を挙げることが必要となったのです」

Clearviewフォント使用前と使用後の標識 (1) カンザス州 Great Bend
全て大文字だった従来の標識を小文字と組み合わせるなど数々の実験を繰り返し、それだけでなく、現存する書体、例えばヘッドラインなどに多用されるサンセリフ書体などを試したが、どれも国の道路標識を一新するほどの条件を満たさず、結果として新しいフォントを開発するアイデアが出された。
研究は民間企業からの資金と州の運輸局からのサポートで支えられた。資金不足に加え、道路規格のように官僚規制を動かす研究には予想以上の時間を要したが、フォントデザイナーのジェームス・モンタルバノ氏も加わり、10年という歳月を経て2004年、連邦政府から新スタンダードとして採用されるに至ったのである。
新フォントによる視認性の上昇
ミーカー氏: 「文字とその背景のバランスが崩れるとハレーションを引き起こします。ポイントは、文字の内側の空白部分と文字の線同士が近く集まる部分に光を閉じ込めてしまうこのハレーション現象を最小限に抑えること。ClearviewHwyはこれを大幅に緩和するようデザインされました」

Clearviewフォント使用前と使用後の標識 (2) ペンシルバニア州 Hazelton
新たに導入されたClearviewHwyフォントの特徴は、大文字直径4インチ、小文字直径3.28インチの細字。文字の幅と高さの割合を緻密に計算し内側の空白を大きく取っている。年齢と性別を均等に配置したドライバーによる路上試験コースでの実験の結果、ClearviewHwyはハイウェイ・ゴチックに比べ20%以上ハレーションを減少、夜間の視認性の上昇と判読時間の大きな短縮化が実証された。
Cleaviewシリーズは道路標識の他にも病院や空港内のサインに適したClearviewADA、またディスプレイ等に適したClearviewTextがあり、ClearviewTextは現在AT&Tの広告に採用されている事で有名である。
(
松本貴子
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『 イメージチェンジするアメリカの道路標識 』に対する






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