2ちゃんねるの管理人という、一般世界からは「悪人」「変人」、一部ネットワーカーからは「カリスマ」「トリックスター」と評価が大きく分かれる西村氏。彼の一番新しい取り組みであるニコニコ動画は、10月からRC2という前向きなバージョンアップを行い、著作権への配慮とクリエイティブな部分の強化を図っている。西村氏の目指す「ニコンドライフ構想」とはどこにあるのか? 当日は少し風邪気味という西村氏に聞いた。

1976年11月16日 神奈川県生まれ。中央大学文学部卒。1999年、日本最大の掲示板である2ちゃんねるを開設。現在、ニワンゴの取締役兼管理人。2ちゃんねるに絡む名誉毀損など数々の民事訴訟を抱えるも、一部ネットワーカーにはカリスマとして称えられている。昨年立ち上げたニコニコ動画が好調で、親会社であるドワンゴの株価を大きく上げる要因になったとも言われている
―― ニコニコ動画RC2はどんな状況ですか?
西村: 入れようと思っていたニコスクリプトが延期になったり、アクセス多くて動画見れなくしたりとかしてます。スクリプトは完成してて動いてるんですけど、現在その負荷対策をやっているところです。
―― 映画祭やスクリプトといった動きを見ていると、ニコニコ動画が二次創作による文化を生もうとしているように感じるんですが。
西村: コミケがやってることをやろうとしてるだけなんですけどね。問題は権利関係で。日本の法律上の線引きではグレーだけれども、権利者は文句言わないからどうでもいい。ユーザーは楽しんで使ってる。何もクリアになっていないんですけど、誰も困ってないしみんな楽しんでるんだからいいじゃん、ていう状況になるのがたぶん日本的には一番早い道なんじゃないかなぁと。「暗黙の了解」的なのが日本の風土にはあってる気がするんですけどね。
―― 企業への管理ツールの提供など、著作権者側への配慮も見られますが。
西村: 企業側の論理に乗ってやってみたらどうなるかと思っていて。先日著作権者との話し合いに基づくメジャーアーティストの一斉削除をやった時に、間違ってインディーズの動画を削除してしまって怒られたというのがあって。ほんとにあれは申し訳ないと思うんですけど、企業の論理で権利っぽいものをなんでも消せっていうと、じゃあ誰の権利なのかっていうのがそもそもわからないからそういうミスが発生しちゃうんですよね。企業側の論理が100%正しいかっていうと、それはインディーズの人の権利を侵害する可能性があるんですよ。で、僕らユーザー側の論理も完璧じゃないし、たぶんどっちの手段もいろいろ使ってみて、それで間をとってここらへんじゃないのってのを決めるんじゃないかなぁって気はしてるんですけどね。
今の固いルールでモノを作ってる人たちがいて、それを壊そうとしているわけじゃなくて、固いルールのところは固いルールで、モノによって段階が変わってくると思うんです。アメリカでマイクロソフトとバイアコムなんかが作っている共同ガイドライン(※1)みたいなものを作ってくれるといい。今は権利者によってラインが違うから。

―― ユーチューブが先日コンテンツ監視ツールを発表しましたね。
西村: それでコンテンツ側が満足してこの仕組みなら全然OKっていうんであればうちらは乗るんで、そのときはユーチューブさんにツール売ってくださいと(笑)。線引きは僕らがやる必要はなくて、誰かがどーんと引いちゃってくれればそれはもうそれでやりますってなると思いますけど。
―― ネットワークで生活する人の生活圏という発想で言えば「ニコンドライフ(※2)構想」ってありかなぁと思うんですが。
西村: 「ニコンドライフ」ってキーワードが一発ギャグで面白いから入れただけで、ホントになんの意味もないんですけど(笑)。今の日本っていろんな文化圏があると思うんですよ。その中でニコニコ動画を中心に動いている文化圏の人がいてもいいと思うんです。そういう人たち用の文化圏ていうのは、ある程度ちゃんと確立して作ろうと思えば作れるんじゃないか というのがもともとあって。引きこもってアフィリエイトで稼いで暮らせればいいねっていう。ニコニコ動画のクリエイターにもコンテンツ作ってる企業が投資をするとか、一本釣りをしちゃおうかって世界になれば、それで食えるようになってくる。そういうのに期待してますけどね。

ニコニコ動画(RC2) http://www.nicovideo.jp/
―― 西村さんは基本的に面白いことをやるということを柱にして活動している気がします。
西村: 面白くないことをやってもしょうがないっていう(笑)。面白いモノを買いますっていうのであれば、別にそれを手に入れればいいわけで、自分で作る必要ないわけじゃないですか。そういう意味で買えるモノの中に僕が面白いと思うものがそんなにないんじゃないですかね。そうすると買えないから、場を作って面白いモノを投入してくれるのを待ってるという。
商品になって予想を超えるものってそんなにないんですよね。例えば台湾の人が258人で歌います(※3)みたいなのって、予想もしてないし、別に巧いわけでもないけどインパクトは強いんですよ。うわぁ、変わったもん見たっていう、そういう感覚って商品にはないんですよね、売ってるもんの中には。そーいうところの驚きとかでいくと、お金で買えないので結局面白いものっていうと、作るなり整備するなりっていうので手に入れなければいけないっていうね。
西村氏が目指しているのは面白いモノが集まって生活ができる文化圏―それがすなわちニコンドライフなのかもしれない。企業、権利者、ユーザーがみなニコニコしていられる「グレーな線引き」の上でサービス展開ができることが理想だが、お互いにもう少し歩み寄りも必要だろう。「敵対ではないと思うんですよ」と語った西村氏が非常に印象的だった。【解説】
(※1)10月20日に米国メディア・インターネット関連企業がまとめた、テレビ番組の動画などの著作物のネット利用に関する基本原則
(※2)10月10日のRC2発表会で西村氏が語った
(※3)台湾中央大学の生徒258人が組曲「ニコニコ動画」というアニメソングメドレーを日本語で歌っている動画がニコニコ動画に登録されている
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文:矢橋司、写真:岡部ユミ子
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