「座っていいとも! 工事だヨ! 全員集合」
人を食ったネーミングだ。
東京・八王子の高尾山で圏央道(首都圏中央連絡自動車道)のトンネル工事が進む中、高尾の自然を守るNGO「エコアクション虔十の会」が中心となり、樹上に設けたデッキで『ウェブ連動型座り込み』を行っている。現地の様子を取材した。
ミシュラン「三ツ星」イギリス一国分の豊かな自然
高尾山は都心から電車で1時間の自然の宝庫だ。標高が600メートル弱にもかかわらず、植物だけで1300種も生息し、イギリス一国分に匹敵する植生の豊かさを誇る。ミシュランガイド日本版でも、「大都市付近にこれほど自然豊かな山が存在していることはパリでは信じがたい」として、京都などと並び三ツ星を獲得している。その高尾山で現在、国が圏央道のトンネル工事を進めている。山が削られ、地下水脈が断たれて一部では既に沢が枯れた。生態系に深刻な影響が出るのは必至と見られる。

京王線高尾山口駅から歩いて15分で工事現場が出現。山肌が削り取られ、痛々しい
そんな中、工事予定地内のトラスト地(自然保護目的で買い上げた土地)に座り込みのための空中フロア「TAKAO和居和居(わいわい)デッキ」が忽然と姿を現した。広さは約40平米、現在も拡張中。先頃屋根も完成し、さながらツリーハウス(※)の様相だ。
今回の座り込みについて「エコアクション虔十の会」代表の坂田昌子氏は「一人でも多くの人がここにきて、工事現場を見てほしい」と語る。デッキの隣には鋼鉄製の柱が何本も打ち込まれ、その上に作業用の巨大な建屋が建設されている。その外壁や、山肌を固めるコンクリートは緑色だ。「環境に配慮するため」と国側は言うが、悪い冗談にしか聞こえない。「見に来た人は工事の状況に呆然とします」(坂田氏)。

デッキの看板はプロのイラストレーターが仕上げた。左が坂田氏。右は現場監督役の永友靖浩氏
デッキでの様子はほぼ毎日ブログで配信する。「こたつを囲んで鍋をつついたり、ミュージシャンとセッションしたりと楽しいですよ(笑)」と坂田氏。一般に『座り込み』から連想される重々しさが一切ないのが特徴だ。坂田氏はブログを使うメリットを「ブログを見てここに来た人が現実を五感で感じ、次に自分のブログやミクシィで書く。それがクチコミの連鎖となって一気に拡がる。見ず知らずの人が和居和居デッキを訪れる」と語る。従来のフライヤーによる宣伝とは比較にならない、情報伝達のスピード感があるという。また、「現場の空気やライブ感を発信するのにブログは最適。みんな軽いノリで足を運ぶ」とも。雑誌『エココロ』編集主幹のマエキタミヤコ氏をはじめ、約半月で既に300人以上が訪れている。
「元々ここは地元の入会地(薪拾いやキノコ狩りなど、地域で共同利用する土地)で所有権があいまいだった場所。私たちのトラスト地も実はまだ境界が確定していない。それなのに国は建設賛成派の地主とだけ立会って、強引に境界を引いて工事を始めた」――そんな国のやりかたに坂田氏は憤る。境界確定に際しては、当然だが全ての地主が立会わなければならない。しかし坂田氏を含むトラスト地の地主が立会に呼ばれることはなかった。
取材当日も国交省の担当者が「国の用地なので撤去を」と申し入れる。しかし坂田氏が「国が勝手に境界を定めて工事を始めたのは認めない。国が鉄柱や建屋を撤去するまでこちらも撤去しません」と応じると、まともに反論も出来ずに退散する。「こちらが『図面を基に全ての地主が立会って決めましょう』と言っても、国交省は逃げ回るばかり。こんな現状を変えられるのは、世論の集中と盛り上がりだけです」と、坂田氏はこの座り込みに期待を寄せる。
強制収用のタイムリミットは今月25日だ。

「TAKAO和居和居デッキ」は現在も拡張中。その目と鼻の先に、工事用の巨大な構造物が迫る
※ツリーハウス:樹上に設けた建物。ちょっとした小屋から本格的な住宅まで種類はさまざま。コーヒーのTVCMでも取り上げられ、現在注目されている。
(
斉藤円華
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