SF界の巨匠アーサー・C・クラーク死去

2008年04月01日(火)

[ 78 号]

 3月19日、SF作家アーサー・C・クラーク氏が移住先のスリランカで亡くなった。ロバート・A・ハインライン、アイザック・アシモフと並び、20世紀の三大SF作家と呼ばれたクラークが亡くなったことは、文学界のみならず、科学分野においても大きな衝撃を与えており、NASAは氏の死去に対して正式な追悼声明を発表している。現在の静止軌道衛星のアイデアはクラークが寄稿した科学雑誌の論文が元になっており、この静止軌道は別名「クラーク軌道」とも呼ばれている。また、SF的空想と見られていた「軌道エレベーター」は、近年カーボンナノチューブの発見により実現に向けての研究が進んでいるが、この軌道エレベーターを一躍有名にしたのは、クラークの代表作でもある「楽園の泉」であることは間違いない。

ユーチューブでは、数々の動画が公開されている(画像は昨年12月、90歳の誕生日にコロンボの自宅で撮影されたもの)

ユーチューブでは、数々の動画が公開されている(画像は昨年12月、90歳の誕生日にコロンボの自宅で撮影されたもの)


 三大SF作家をそれぞれ称するなら、ハインラインはアナーキストでタカ派、SFという枠に囚われない小説家。アシモフはミステリー要素も高く、とにかく読者を楽しませるエンターテイナー。そしてクラークは、正しい科学的知識に裏打ちされた、正統派SF作家と呼べるだろう。その著書のほとんどが邦訳されており、近年は若手作家との共著による代表作のひとつ「宇宙のランデヴー」シリーズを展開していた。

 クラークでもうひとつ記憶に残るのは、スタンリー・キューブリックと共に制作したSF映画の金字塔「2001年宇宙の旅」だろう。1968年に公開されたこの映画は、長らくSFファンの間でも最高傑作と謳われ、70年代のSF映画黄金時代の幕開けを飾った作品と言われている。ファーストコンタクトと人類の進化を描いたこの映画は難解だが、のちにクラークが著した小説版は彼による科学的解釈が分かりやすい。

 クラークの作品で個人的に最も印象に残っているのは「幼年期の終わり」だ。これもまたファーストコンタクトと人類の進化を描いた作品。悪魔の姿をした「オーバーロード」によって地球が進化の道を進み始めるというストーリーだ。中でも冒頭のイメージは非常に鮮烈で、後に映画「インデペンデンス・ディ」のオープニングシーンに同じイメージを見ることができる(映画の内容はまったく違ってどうしようもないものだが)。

 クラークの死によって大きな時代は終わったのだろうか? いや、彼らによって育まれた遺伝子は、「想像力」という力となって現代の科学の中に息づいている。そしてそれこそが、科学の発展に最も大切な力なのだ。謹んで氏のご冥福をお祈りしたい。
( 矢橋司 )


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