約20年前に発見されたカーボンナノチューブ。導電材料として使われる場合、銅と比較すると、銅は細くなると強度が弱くなり、必要な電流量に対して耐久力も落ちる。一方、ナノサイズ(10億分の一メートル)のカーボンナノチューブは、ダイヤモンドと同等の強さを持ち、電流量に対しては銅の1000倍まで耐えられるとされている。現在は電池やバッテリーなどさまざまな分野で活用されており、そのマーケットは4~7年で、20億ドル規模に達する見通しといわれている。
さて、このような期待が高まる中、カーボンナノチューブを吸引した場合、アスベストと同様に作用し、悪性中皮腫を引き起こす可能性があるという研究結果が、5月20日、アメリカのネイチャー誌に英・米の研究者らによって発表された。実験方法は、長繊維状と短繊維状のカーボンナノチューブと、長繊維状と短繊維状のアスベストファイバーを、それぞれマウスに投与。その結果、長繊維状のカーボンナノチューブは、長繊維状のアスベストファイバーと同様の作用を示したという。ただ、大気中のカーボンナノチューブが吸入可能かどうか、また、吸入された場合、肺まで届くかどうかなどは分かっていない。なお、短繊維状のチューブや湾曲したチューブにはアスベストのような働きは確認できなかったという。
この報道に対して、研究開発・製造にかかわる国内各方面へ水を向けると、発言にナーバスというか、答えるべき筋の問題ではないといった様子。
「弊所におきましては、生体へのカーボンナノチューブの影響評価、安全性についての研究は行っていません。従って取材への対応も致しかねます」(産業技術総合研究所・広報担当)といった答えが主流で、突然の横やりに戸惑いを隠せないようだ。
現状の体制は万全
そんな空気の中、富士通は以下のようにコメントを寄せてくれた。
「今の段階で人体への影響に関しては分からないが、弊社の研究室では定期的に粉じん調査を行い、外部へ漏れることがないよう、万全の体制で取り組んでいる。もちろん、研究員もマスクや手袋の着用をしっかり行っている」
一方、冷静に分析してくれたのは昭和電工。まず、富士通と同じ体制を強調した上で、マウスに直接吸引させていない点が「想定される危険にそぐわない」と話してくれた。「しかるべき状況下にいれば吸引することはあるだろう。ただ、衣類の上から体内へナノチューブが入り込むことは考えづらい。無論、研究は否定するものではないし、今後も継続されるべきと考えている。その結果を我々は冷静に見つつ、健康への配慮が必要であれば行っていくだけ」。また、ナノチューブの製品への応用については、「現在、弊社ではリチウムイオンバッテリーくらい。パッケージがしっかりしているので、一般ユーザーが手に触れることはまずない。そもそも建材のアスベストと比較すること自体、無理があるのでは」ということだ。
確かに、あらゆる科学は使い方ひとつで毒にもなれば、薬にもなる。ただ、カーボンナノチューブに限っては、本格的な実用化はまだ先。この研究よりも、「そうなるころには人体への影響に関する研究も進んでいるだろうし、廃棄時の回収まで考慮された製品化がなされている」という富士通の見解に説得力を感じるのは記者だけではないはずだ。

カーボンナノチューブは、炭素原子が六角形に配置されたシート状構造(画像のイメージ)が円筒上に丸められた形をしている。細い・軽い・強いといった性質のほか、構造などにより様々な種類・性質をとり、新素材としての期待は大きい
さて、このような期待が高まる中、カーボンナノチューブを吸引した場合、アスベストと同様に作用し、悪性中皮腫を引き起こす可能性があるという研究結果が、5月20日、アメリカのネイチャー誌に英・米の研究者らによって発表された。実験方法は、長繊維状と短繊維状のカーボンナノチューブと、長繊維状と短繊維状のアスベストファイバーを、それぞれマウスに投与。その結果、長繊維状のカーボンナノチューブは、長繊維状のアスベストファイバーと同様の作用を示したという。ただ、大気中のカーボンナノチューブが吸入可能かどうか、また、吸入された場合、肺まで届くかどうかなどは分かっていない。なお、短繊維状のチューブや湾曲したチューブにはアスベストのような働きは確認できなかったという。
この報道に対して、研究開発・製造にかかわる国内各方面へ水を向けると、発言にナーバスというか、答えるべき筋の問題ではないといった様子。
「弊所におきましては、生体へのカーボンナノチューブの影響評価、安全性についての研究は行っていません。従って取材への対応も致しかねます」(産業技術総合研究所・広報担当)といった答えが主流で、突然の横やりに戸惑いを隠せないようだ。
現状の体制は万全
そんな空気の中、富士通は以下のようにコメントを寄せてくれた。
「今の段階で人体への影響に関しては分からないが、弊社の研究室では定期的に粉じん調査を行い、外部へ漏れることがないよう、万全の体制で取り組んでいる。もちろん、研究員もマスクや手袋の着用をしっかり行っている」
一方、冷静に分析してくれたのは昭和電工。まず、富士通と同じ体制を強調した上で、マウスに直接吸引させていない点が「想定される危険にそぐわない」と話してくれた。「しかるべき状況下にいれば吸引することはあるだろう。ただ、衣類の上から体内へナノチューブが入り込むことは考えづらい。無論、研究は否定するものではないし、今後も継続されるべきと考えている。その結果を我々は冷静に見つつ、健康への配慮が必要であれば行っていくだけ」。また、ナノチューブの製品への応用については、「現在、弊社ではリチウムイオンバッテリーくらい。パッケージがしっかりしているので、一般ユーザーが手に触れることはまずない。そもそも建材のアスベストと比較すること自体、無理があるのでは」ということだ。
確かに、あらゆる科学は使い方ひとつで毒にもなれば、薬にもなる。ただ、カーボンナノチューブに限っては、本格的な実用化はまだ先。この研究よりも、「そうなるころには人体への影響に関する研究も進んでいるだろうし、廃棄時の回収まで考慮された製品化がなされている」という富士通の見解に説得力を感じるのは記者だけではないはずだ。
(
板垣威史
)
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『 カーボンナノチューブと中皮腫 本当に関連はあるのか? 英・米の研究者らがネイチャー誌に発表 』に対する






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