「室内改装OK」「大正末期頃に建築のレトロ物件」「かつては手塚治虫も住んでいた下宿」――そんな一風変わった不動産物件の紹介サイト「東京R不動産」が今、人気だ。月間PVは実に300万、メルマガ会員2万人を数え、この春からは金沢に引き続き福岡版もオープンした。

東京R不動産 個性的な物件情報が常にアップされる「不動産のセレクトショップ」。オフィス物件専門の「東京オフィス事情」、選り抜きのガジェットを販売する「密売東京」など、眺めるだけでも十分楽しいコンテンツだ。 (http://www.realtokyoestate.co.jp/)
LDKの枠に縛られない際立ったものばかり
一般に家探し、住まい探しというとすぐに「間取りは何DK、駅から何分」と考えがちだ。ところが「東京R不動産」の物件にはどれもそうした通り一遍の情報は出てこない。そもそも掲載されているのが「キッチンはガラス張り」「庭に鯉が泳ぐ」「天井の高さは5m」「米軍ハウス」というような、LDKの枠に縛られない非常に個性の際立った物件ばかりだ。
日本橋にある東京R不動産のオフィスも、元々は1階が駐車場、2階が倉庫だった場所。がらんどうのコンクリートの箱を、見違えるようなオフィスビルに作り変えた。

ブロックの壁面や天井をつたう配管など、ざっくりとしたテイストをそのまま生かしながら洗練されたオフィス空間に仕立てた
面白い場所には面白い人が住む
東京R不動産ディレクターの馬場正尊氏は「最初は路上観察の延長で、変わった建物を面白がるというコンセプトだった。初めから不動産を紹介しようとは思っていなかった」と設立当初を振り返る。ところがウェブを開設すると「あの物件は借りられないのか、という相談が舞い込み始めて(笑)。ユニークな物件に対する世の中のニーズというものを初めて知りました」。「不動産のセレクトショップ」としての方向性が5年前のこの時に定まった。

馬場正尊氏:東京R不動産ディレクター。1994年に博報堂に入社。建築カルチャー誌「A」の編集などを経て、2003年から東京R不動産を立ち上げる。「今でも趣味の延長でやっているような感じがありますね。逆にそういう感覚を忘れちゃいけないのかもしれない」と笑う
とは言え不動産取引に関する知識がほぼゼロからのスタート。不動産業者に飛び込み営業をしてもことごとく怪しまれたという。「当時はジーパン姿で『変わった物件ないですか』とやって来て、それでいて次にはちゃんとお客さんを連れて来るから、不動産屋からみれば相当変に映っていたと思います。業界のしきたりとか知っていたらこんなバカなこと、してなかったでしょうね(笑)」
目利きのバイヤーが、都内を中心に一癖ある、でも好きな人にとってはたまらない物件を収集する。情報はほぼ毎日更新され、成約率もきわめて高いという。「面白い物件には面白い人が住み、面白い物語が生まれるんです」と馬場氏は笑う。
東京R不動産立ち上げ以前には建築系カルチャー誌の編集をしていたという馬場氏だが、ウェブの特徴をこう語る。「雑誌のような紙媒体だと、あらゆる情報を編集者が受け止めて、編集してから出版する。すると情報の質は上がるかもしれないけれど、どうしてもタイムラグが発生し、お金もかかりフットワークが重い。物件にまつわる物語などの微細な情報をリアルタイムに発信することがウェブで可能となりました」
東京R不動産では、最初から情報を一極集中する仕組みを放棄した。
「ブログに近い仕組みですが、バイヤーが各自で物件情報を入力して公開できるようにしています。独立した個人が、東京R不動産というウェブサイトを共通軸にしつつ自由に動ける組織にしました。一人ひとりが責任をもって物件を探してくれば、物件に愛とコダワリを持ち、饒舌にも語ることもできる。バラバラに動きながら全体のまとまりが崩れないのが強みですね」
ウェブの運営は最低限のディレクションにとどめ、むしろ東京R不動産が持つ雰囲気、カルチャーを共有することに心を砕いているという。
「一人一人のバイヤーのセンスが高くないと絶対に成立しない。だから不動産を扱っているにもかかわらず、デザイナーや建築出身のスタッフが多いですね(笑)。僕らはいかに楽しく、面白く生活するかを追求している。東京R不動産はビジネスだけれども、文化を担ってもいる。だからこそ成立しているんです」
既存の不動産の枠組に縛られない、自由な空間設計が面白い。この7月からは「房総R不動産」もスタート予定だという。新しい住まい方を提案し続ける「東京R不動産」だ。
(
斉藤円華
)
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