《Webの将来像についてジョン・アルソップ氏語る》 “デザイン”でなくサービス“手法”が重要

2008年07月01日(火)

[ 89 号]

 Web上に点在する情報の取得を効率化する技術「マイクロフォーマット」(※)。その第一人者として活躍するジョン・アルソップ氏らを招いたカンファレンス「ザ・ハッピー・ウェブ・ウィークエンド」(アクトリンク株式会社主催)が、6月15日にVision Center(東京・千代田)で開催された。カンファレンスに集まったのは、約100名。Web制作者向けの専門的な内容ではあったが、Web2.0以降の変わりゆくWebの世界を垣間見ることができる貴重な時間だった--そして、会場は終始活気に満ちたものとなった。

ジョン・アルソップ 1966年オーストラリアシドニー生まれ、ソフトウェア開発エンジニア。Web黎明期から最前線で活躍し、現在もマイクロフォーマットの第一人者として世界各地で活動を続ける

ジョン・アルソップ 1966年オーストラリアシドニー生まれ、ソフトウェア開発エンジニア。Web黎明期から最前線で活躍し、現在もマイクロフォーマットの第一人者として世界各地で活動を続ける


 「デザイン重視。Webは優れた“デザイン”を提供することが技術の主流とされていたが、これから先は、ユーザーに優れたサービスを提供する“手法”が重要となる」--カンファレンス後の本紙インタビューでジョン・アルソップ氏が最初にいった言葉である。

 カンファレンス全体の講演の内容は、Web制作の現場に携わっていない者にとっては、少し難解ではあった。しかし、Webクリエーターであるか否かではなく、同時代人としてWebに親しみ、日々活用している一一ユーザーという立場からこのカンファレンスを聞いてきた。

 その6時間後に聞いたこの言葉がとても印象的だった。

会場はWeb制作に携わる企業や個人の交流の場となった

会場はWeb制作に携わる企業や個人の交流の場となった


カンファレンスは、Web標準化を目指す三者の熱き講演

 カンファレンスの内容を振り返って紹介しておこう。

 まず、カンファレンス午前の部では、日本のセマンティック・ウェブ技術研究者である神崎正英氏が、Web上に点在する情報を効果的につなぎ合わせるための手法を紹介。

神崎正英氏。午前の部でセマンティック・マイクロブログについて講演を行った

神崎正英氏。午前の部でセマンティック・マイクロブログについて講演を行った


 セマンティック・ウェブとはWebページ内に埋め込まれた情報をコンピュータが効率的に収集できるようにするための概念。これが普及すればWeb上に散らばっているデータが自動で収集され、欲しい情報がクリックひとつでブラウザに表示されるようになるというものだ。

 また、昨今のモバイル機器に標準的に搭載されているGPSを使えば、ボタンひとつで現在地をリアルタイムでブログに掲載することも可能になるといい、その事例も併せて紹介した。

 午後の講演ではWeb技術の規格統一を進める組織であるW3Cのマイケル・スミス氏が壇上に立ち、同団体が提唱する今注目のHTML5を解説。XMLはデザインをする上では非常に有効な言語だが細かなミスひとつでレイアウトが崩れてしまう。対してHTML5は曖昧な記述も許容し、誰にでも扱える手軽さがあるほか、セマンティック・ウェブやマイクロフォーマットなどの新技術との融和性も高いのが利点であると語った。

マイケル・スミス氏。今注目度の高いHTML5の講演を行った

マイケル・スミス氏。今注目度の高いHTML5の講演を行った


 そして、トリを飾ったアルソップ氏の講演ではマイクロフォーマットの概念について触れられながら、Webの将来像についても話を展開した。

「PCとモバイルなど、以前は異なる世界に存在していたWebは、ブラウザやデバイスは関係なく、ひとつのWebとして存在する。身近なものとなり現実と情報を共有するようになった」。Webが我々のリアルな生活と切り離せないものになったと語り、その上でWiiや携帯電話などPC以外からのアクセスも意識し、そのデバイスに合った利便性の高いコンテンツやサービスを生み出すことの必要性を唱えたのだ。マルチデバイスの考え方と、より生活に役立つ情報を提供する手法こそがWebの今に求められていることだ。

Webをひとつの巨大なデータベースに

 カンファレンス後の本紙インタビューでは、アルソップ氏にマイクロフォーマットやWebについて尋ねた。

 まず、「Webの変遷をどう感じているか」という質問に対し、彼は「インターネットエクスプローラーとネットスケープのブラウザ戦争などを経て、再びWebの本質であるオープンな環境が現れた。ブラウザやOSが何であろうと関係ない。本質はどんなサービスをWebで提供できるかだ」といい、「Webが進化を求められる部分はどこか」という質問には「どこからでもアクセスできるようになったWebだが、今後は個人が必要とするデータ(情報)が自動的に端末に落ちてくるような仕組みを構築することが大事である」と語った。とても夢のような話である。

 マイクロフォーマットの本質を聞いてみると、「ユーザーや企業がこの技術を使い、データをWebに書き込むことで、個々の情報がひとつのデータベースとなる。そのデータベース化した情報をJavaScriptなどのシンプルな技術で引き出すことで、より高度な情報サービスを生み出すこともできる」と締めくくった。

アルソップ氏。インタビュー後「日本の生ビール大好き!」といい、某居酒屋へ消えていった

アルソップ氏。インタビュー後「日本の生ビール大好き!」といい、某居酒屋へ消えていった


 アルソップ氏のインタビューを通して見えたことは、これからのWebに必要なことは、「小さな情報でもマクロな考え方で共有」「情報をシンプルな手法で効率的に取得」「取得した情報をブラウザ上でユーザーに必要な形にして表示」という3点だ。

 それを示す事例として、マイクロフォーマットはYahoo!などのポータルサイトで採用されており、従来の操作で多くの情報が得られることを、我々は既に体感していたのだ。

 次回の来日については、「11月に再来日し、都内で開かれるWeb Directions Eastで講演を行う」と述べた。そちらも心待ちにしたい。

■場所:東京、日時:11月上旬、形態:カンファレンス(1日) ワークショップ(2日)、スピーカー:Eric Meyer, Dan Cedarholm, Jeremy Keith, Jeffrey Veen

(※)マイクロフォーマット:Webサイトで人やイベント、タグを記述する際に用いるマークアップ方法。たとえば、ブログに書いてあるコンピューターには判断できない文脈に、一つの記述を意味付けするだけでコンピュータにも正しく情報として取り扱うことができるようになる。例えば、氏名、住所、会社名を伝える「hcard」やイベントの場所や時間の「hCalendar」、商品やサービス、レビューやコメントを扱う「hReview」などをタグ付けすることで、googleの検索結果にも、それらの定義された情報や写真が、上位ランクのテキストリンクより理解しやすく、また目立つ表示が可能となるというもの。
( 文:C&R 宮田雅章、写真:藤村徹 )


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