
夏野剛氏 プロフィール:ベンチャー企業副社長から1997年、「iモード」立ち上げのためNTTドコモに転進。わずか5年間で、4000万人を超えるユーザーを獲得した世界最大級のインターネットサービス「iモード」育ての親として世界的に知られる。2001年、ビジネスウィーク誌にて世界のeビジネスリーダー25人の1人に選ばれる。現在は、複数の上場企業の取締役、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授として活躍中
「IT革命」はどれだけ進んだのだろうか? 結論を先に言うと、まだ、半分以下。このことを語るときに一番大事なことは「つながる」ということだ。
以前には「スーパーコンピューター」「専用線」「集中管理」「内製」「企業内研究所」などが重要だと考えられていた。また、「つながる」以前は、社長が偉いと思われていた。技術ではネット革命以降は「独自技術」から「標準技術」に変わった。これは大きな変化だ。「つながる」ためにコンピュータ間の標準的な会話方式が必要になり、優れた技術を開発したら、自社内に留めておくことが難しくなった。だから、オープンにしなければ意味がない。スーパーコンピューターから分散処理が盛んになり、専用線に対し「ネットワーク上での処理」、片方向のコニュケーションに対し「双方向」、内製に対し「外製」、秘密プロジェクトに対し「オープンソース」という具合だ。
また、社長よりファウンダーが偉くなった。年功序列に対し「学生ベンチャー」だ。企業経営を担当するには企業内で経験を積み、役職を上がらなければならなかったが、学生は経験も年季も積んでいないのに起業ができる。日常生活でも「渋谷あたりで7時」とアバウトに決めておけば携帯で「今どこ?」と待ち合わせできるようになった。このように「つながった」以降は、技術、経営、ライフスタイルまで変わったのだ。
産業革命に匹敵する変化
この変化は、18世紀の産業革命に匹敵する。あと100年位経つと、「あの時が転換期だったのだ」と振り返る時代に我々は生きている。
技術のコモディティ化が起きた。これまでの研究者は企業内の研究室で人生を賭けていたが、今や技術は市場にある。ネットで検索すると何でも出てくる。だから技術を使って付加価値をどうつけるか? 技術が何をお客さんにもたらすのか?研究開発力よりもビジネスモデル構築力が重要となったのだ。
また、情報は瞬時に伝わり、隠せない時代になった。スピードが大切で「眠らないウサギ」でないと勝てない。一方で社長より一般社員の方が情報が多いということが起こっている。管理監督者が情報を持っていて、情報が限定されている下を管理するという構図は成り立たなくなった。このため「IT革命」下では従来の中間搾取者の存在価値が厳しく求められる。これまで経営者も中間搾取者だったが、今後は、リーダーシップ、会社の方向を具体的に示せないと経営者でいる意味がないのだ。
「情念」が込もっているか
WebやIT技術でもう一つ大切なことは「魂を埋める」ことだ。超アナログ的だが、皆が同じ技術を使うようになると、どれだけ個人の意志を込めたか、情念が入っているかで、サービスの結果が異なってくる。
私は11年間、ドコモで新しいサービスを立ち上げ続けてきたが、他のNTT出身の役員との違いは、命を込めて、魂を込めて、自分の信念にこだわっていただけだ。これは芸術と同じだと思う。テクニックだけでは、人の心を打てない。「熱意」といったものがビジネスモデルに適応される時代になってきた。
「IT革命」はこれからますます本番を迎えるが、ここに出席していらっしゃる方がその先端を走って行くわけで、皆さんがキチンと利益を取れることが大切だと思う。
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文:丸山隆平、写真:藤村徹
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