施設運営の救済に一役 「ネーミングライツ」という収益モデル

2008年01月22日(火)

[ 68 号]

 近年、ネーミングライツの対象が広がりつつある。ネーミングライツとは、数ある命名権の中でも、施設に対する権利を指すとされる。始まりは1970年代のアメリカで、国からの補助金が少なくなった公共施設が収益を求めて、一般企業へ開放したことが世界中へ広がっていったと言われる。そして、今回、このトピックを取り上げたのは、ほかでもない、横浜市の野毛山動物園が、国内の動物園としては初めてネーミングライツを開放したというトピックが話題になったからだ。

 市は「年間5000万円以上で、5年契約が可能な企業を希望。入場料が無料であるため、その運営費を少しでもまかなえれば」(同市・動物園課)としているが、果たして、行政・企業の双方にはどれほどのメリットがあるのだろうか。そこで、その筋の専門家である「命名権.com」の藤原氏に“査定”を行ってもらった。

命名権.com(http://www.meimeiken.com/)

命名権.com(http://www.meimeiken.com/)


 「まず、横浜市は横浜国際総合競技場を日産に開放する(年間4億7000万円)など、とにかく市長がネーミングライツにご執心。トップダウン方式で各部署に話が降りてきているようだ。これは人が集まり、公共施設を多数、擁するエリアだからこそ、成り立つ行政方針でもある。野毛山動物園については、みなとみらいのそばにある立地、年間来場者数50万人を考えると、金額的には妥当なラインで、入札額も突飛な数字は出てこないと思う。歴史ある無料動物園なので、企業のメリットは少なからずあるだろう。また、水族館では品川アクアスタジアムがエプソンに開放していたように、次は動物園という流れがあったことも補足しておきたい」

自治体施設だけでなく民間にも押し寄せる流れ

 ネーミングライツの開放というと、自治体所有の施設のイメージがあるが、その流れは民間にまで押し寄せてきている。例えば、大阪ドームは「株式会社大阪ドーム」が運営しているにもかかわらず、現在の名称は「京セラドーム大阪」。また、 民営道路では箱根タウンパイクは「TOYO TAIRES(東洋タイヤ)タウンパイク」となっている。「道路の流れは逆に行政側へ火をつける可能性を秘めている。自治体にしろ、民間にしろ、施設を持っていないことには始まらないが、ネーミングライツという収益モデルが、徐々に認知されているのを肌で感じている。というのも、地方の文化ホールに、地元の中小企業の名前がつけられた例もあるし、具体的には明かせないが、弊社では施設の規模や場所を問わず受け付けているので、ここにきて、意外なところから問い合わせが増えている」

 余談になるが、同氏への取材は記者の勘違いから始まった。というのも、動物園のネーミングライツが開放されるなら、所属する動物それぞれに開放した方が中小企業も参入しやすいのでは? という質問を投げかけた訳である。「確かに、中国の動物園で生まれた赤ちゃんパンダの命名権をオークションで販売する事例があったように、あり得ない話ではない。ただ、日本の場合、倫理観や市民感情が表に立ち、かえって企業にマイナスイメージを与えることが容易に想像できる。実際、大阪ドームの件でも、当初は《京セラドーム》だったのが、市民から《大阪》という名前を消さないでほしいという要望が多数集まり、現在の名称に落ち着いたという経緯がある。このあたりが難しさであり、そのための調整やリサーチを行うために弊社は存在している」

ネーミングライツの浸透で危機に瀕した施設の救済へ

 最後にまとめると、ネーミングライツの浸透によって一番、嬉しくもあり、メリットがあるのは、施設そのものなのではないだろうか。例えば、某県立総合文化センターなどは、大企業名を冠としたことで、地元からは格段にイメージが向上したという声も届いている。今日びの施設はクリーンが当たり前で、利用されてナンボ。一方で危機に瀕しているところは全国にたくさんある。こういった施設の救済も、「命名権.com」が担う使命となっていくことだろう。
( 板垣威史 )

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