東芝、DVD競争 撤退は好判断か?

2008年02月26日(火)

[ 73 号]

 2月19日、東芝はHD DVD事業を「終息」すると発表した。次世代DVD規格はブルーレイ・ディスク(Bru-ray Disc 以下BD)に事実上統一されることになった。HD DVDレコーダー、プレイヤーの開発、生産を中止し、3月末をめどに販売も終了する予定だ。これまで販売した製品に関しては引き続きサポートを行い、修理にも対応する。メディアに関しても、一定期間入手できるよう、メーカーと協議するとしている。

 プレスリリースの中で東芝は、「本年度初頭の大幅な事業環境の変化に際し、今後の事業計画を総合的に検討した結果、同事業を終息することを決定した」としている。これは年頭に行われたCESにおけるワーナーのBD支持表明-俗に言う「ワーナーショック」-に続く、一連の動きだろう。実際、このワーナーショックを受けて、ウォールマートやベストバイといった小売店もBD支持を表明し、流れは大きくBDに傾いていた。東芝もプレイヤー価格を大幅に下げてシェアの獲得を目指したが、やはり事業としての存続は難しかったということだろう。

覇を競っていたふたつの規格もとうとう終焉を迎えた(昨年のCEATECより)

覇を競っていたふたつの規格もとうとう終焉を迎えた(昨年のCEATECより)


 東芝の西田社長は会見で「ワーナーの判断は寝耳に水」と語っている。実際、CESではワーナーはHD DVD支持を表明するはずだったと言われていて、最大のソフト数を持つワーナーがHD DVD陣営についていれば、白黒は逆になっていた可能性も高い。ただ、ハードのシェアではBDが圧倒していたことも事実であり、遅かれ早かれBDに軍配が上がっていたのではないかとも思われる。

 今後に関しては、東芝はBD製品の展開をまったく予定していないという。しかしHDDレコーダー製品を展開する東芝としては、保存用メディアに既存のDVDしか持たないことになり、これは圧倒的に不利だ。おそらく早い時期でのBDへの転換が行われると見ていいだろう。

 次世代DVD規格競争はこれで終了した。BDとの規格並立によって価格競争などが起こったということはあるかもしれないが、結果的には、規格統一が遅れたために普及が遅れ、しかも消費者の混乱を招く事態となった。しかも、すでにHDDを使ったiVDRや最大1.6TBの容量を持つホログラム・ディスクといった次世代光ディスク規格が策定され始めている。フラッシュメモリも価格が大幅に落ちたことによって、大容量メディアとしての選択範囲に入ってきた。BDの容量は、すでに次世代規格と呼べる魅力を失いつつあると言える。

 そしてかつてiMacの発売時にフロッピードライブを搭載せず、フロッピーの終焉を予見したアップルは、光学ドライブを搭載しない話題の製品、MacBook Airを投入してきた。iTunesストアではHD品質の映画レンタルも開始し、いずれはソフトウェアもiTunes経由で販売されることが予想されている。アップルはもう「光学ドライブ」の終焉を視野に入れた製品デザインを行っているのだ。

 回線速度とサーバの増強というインフラ部分の大きな課題は残っているが、時代はすでに光学ディスクというハードを配布する時代から、ネットワークを介して必要なデータを入手するソフトの時代へとシフトしつつあると言える。

 こうして見るとBDの時代は長くは続かないだろう。東芝が不毛な次世代DVD競争から即時撤退したことは、かえって良い判断かもしれない。実際、最初の報道があった18日は株価も上昇し、投資家もこの決定を歓迎していることが窺えた。東芝はこの発表と同時に、NANDフラッシュメモリの製造強化のために2兆円近い投資を行うことも発表。より将来性のある事業へ注力することで、この失敗をプラスへと転化させることができるかもしれない。真の「次世代規格」へ向けて、正しい「選択と集中」が行われることを望む。
( 矢橋司 )


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