ダブルクリック 買収完了なる

2008年03月25日(火)

[ 77 号]

 3月11日、米グーグルはオンラインのバナー広告の大手、ダブルクリック(DoubleClick)の買収が完了したことを発表した。これはEUの調査機関による審査を終え、独占禁止法に抵触しないとの結論が出たことによる。買収金額は約31億ドル。これによりグーグルはネット広告市場において、さらに地位を固めることになる。

グーグルとの合併を発表するダブルクリック (http://www.doubleclick.com/より)

グーグルとの合併を発表するダブルクリック (http://www.doubleclick.com/より)


 ダブルクリックはインターネットのバナー型広告を扱う企業としては最大手だ。業績不振から身売りを検討し始めたのは昨年3月頃で、その当時はマイクロソフト(MS)が名乗りを挙げていた。しかしそこにグーグルが参加したことで競争が激化。AOL、ヤフーなども参加したと伝えられたが、結果的にはグーグルに軍配が上がった形だ。31億ドルはグーグルの企業買収に関しては最高金額であり、ディスプレイ広告分野の強化が大きな意味を持つことを表すものでもある。

 現在、グーグルの持つ広告システムは「テキスト広告」と呼ばれる分野であり、確かにこの部分では他を圧倒している。しかしこれはインターネット上の広告売上の40%を占める分野であり、残りのうちの20%をメールやその他の広告、そして残りの40%をホームページ上にバナーを貼り付ける「ディスプレイ広告」が占めている。この分野ではヤフー、MSN、AOLなどの企業が強く、グーグルは十分なシェアを獲得していなかった。今回の買収はこのディスプレイ広告部門を一気に強化することが目的だった。さらにグーグルの持つ、ユーザーの検索結果に応じた広告を表示するターゲット広告などの技術をディスプレイ広告でも展開することで、より効果的な広告展開が可能になるというわけだ。

 問題となっていたのは、今回の買収で、グーグルによる広告市場の独占が起こるのではないかという点。これに関して昨年5月から米国FTC(連邦取引委員会)や欧州委員会などが調査を行ってきた。しかしようやく昨年12月にFTCが合併を承認。そして今回の欧州委員会での承認を受け、ようやく正式に買収合併となったものだ。

 今回の合併でさらに苦境に立たされそうなのはやはりヤフーだろうか。ディスプレイ広告の展開ではトップシェアにある当社だが、現在のMSによる合併騒動、そして今回のグーグルによる追撃により、その地位をさらに危うくする可能性はある。ましてやその企業価値が下がるようなことに関しては敏感に反応すべきであり、どことであれ合併に関して前向きに検討するのであれば、早めに手を打つべきであろう。

 グーグルの動きは素早い。承認が完了した翌日には、ウェブサイトパブリッシャー向けの無料広告管理ツール「Google Ad Manager」のβ版を発表。これは自社が管理している広告スペースに、グーグルが提供する広告を貼り付けることができるツールで、Google AdSenseや早くもダブルクリックのバナー広告を表示するコードが書き出せるなど、柔軟な広告管理を行うことができるようになる。現在のところ招待制のクローズドな環境だが、いずれ解放されるだろう。大企業のウェブサイトにとっては広告を取ることは簡単だが、中小企業などがそれらのスペースを売ることは難しいことを考えると、これまで販売してきた広告スペースにすぐ広告を埋められるというのは非常に有益なツールと言え、今後これらの動きは加速していくと見られる。

Google Ad Manager (https://www.google.com/admanager/)

Google Ad Manager (https://www.google.com/admanager/)


 さらにグーグルはダブルクリックの組織をグーグル内に取り込み、その過程で人員削減なども行っていくと発表されている。今回の合併に対して十分な準備ができていたということだろう。

 次々と足場を固めていくグーグルと、その動きを見ながらいまひとつ有効な手を打てない各企業。「グーグル帝国」の牙城を崩せる企業が登場することはないのだろうか?
( 矢橋司 )

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