Wi-Fi 2.0 電波オープン化計画

2008年04月08日(火)

[ 79 号]

 米グーグルが3月24日、米国の通信を管理する連邦通信委員会(FCC)に対して、テレビ局の未使用周波数帯――俗に言われる「ホワイト・スペース周波数帯」――を次世代ワイヤレス機器向けに解放することを求める提案を提出した。グーグルはこの周波数帯を使用して、「Wi-Fi2.0」と呼ぶ無料かつライセンス不要の無線通信を計画している。

ホワイトスペースが活用されれば、TV用の電波を使って無料でオープンなネットワークが実現する可能性もある

ホワイトスペースが活用されれば、TV用の電波を使って無料でオープンなネットワークが実現する可能性もある


 グーグルがFCCの主宰した700MHz周波数帯のオークションに破れたのは3月19日のこと。グーグルは早い段階で「最低46億ドル以上で入札」など大きな花火を打ち上げた。さらに使用するデバイスやアプリケーションに制限を課さないという「オープン化」を条件にしていた同社だが、結局落札したのはベライゾン(Verison)だっ た。しかもグーグルはいくつかの地域で分割されて売り出された周波数帯のどのブロックも落札していない。グーグルは最初に大きな「見せ金」を見せることで、700MHz帯のオークションで主導権を握り、自社が条件にしていたオープン化が帯域使用の正式条件になった時点でその目的を果たしたのだ。この帯域がオープン化になったことで、自社の進めるアンドロイド(Android)携帯に対する制限も一切かけられなくなるというわけだ。

 そのグーグルがオークションに破れてわずか数日。さらなる「オープン化」を目指して意見書を提出したのが、このホワイト・スペース帯域だ。アメリカでは2009年にはテレビ放送がアナログからデジタルに移行を完了するが、このときに空くチャンネルのことをホワイト・スペースと呼び、以前から通信への開放に向けての議論が行われてきた。ポイントは、免許不要かつ無料で使える周波数帯というところで、モバイル機器や家庭内LANでの利用が可能な点だ。テレビ局側は、この帯域は他のチャンネルとの電波干渉が大きいとして、解放に消極的どころか反対キャンペーンを行っている。

 対するPC業界はというと、マイクロソフトやデルといった大手もこの帯域の利用には積極的で、すでに“White Space Coalition”という、ホワイト・スペース利用を検討するための組織も結成されており、FCCでも対応機器のテストを開始している。

 今回グーグルは、空いたチャンネルの一部を使用することでこの電波干渉の問題は解決できるとしている。「電波」という限られた資源を独占するテレビ局と、それを解放することでユビキタス社会を目指そうとしているグーグルと、どちらに是があるかは火を見るよりも明らかだろう。そして「電波のオープン化」はグーグルにとっては常に利益に繋がる。それはアンドロイド携帯の普及障壁が取り除かれるだけでなく、アンドロイド上で稼働するアプリが問題なく稼働できるということでもあり、ネットワークさえあればグーグルが必ず活用されるということにもなる。こうして見てみると、電波=ネットワークのオープン化こそがグーグルのこのところの戦略と言えるだろう。

 一方日本では、このホワイト・スペース帯域は2011年のアナログ波停波とともにやはり空くことになる。2007年6月には、総務省が情報通信審議会の報告書において、このホワイト・スペースをテレビ以外の「通信」にも解放することを発表している。しかし実際のところ、日本でアナログ停波が本当にできるのかどうかに関しては懐疑的な声も上がり始めている。デジタルチューナー内蔵テレビの普及率は未だ低く、2011年にはまだ移行の準備が整わないのではないかとも言われる。低価格なデジタルチューナーの投入も計画されてはいるが、果たして本当に間に合うのだろうか?
( 矢橋司 )

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