《UGCと自社配信、動画サイトの分水嶺》 ワーナーがユーチューブとの提携解除

2009年01月13日(火)

[ 107 号]

 米四大メジャーのひとつであるワーナーミュージックは12月20日、ユーチューブとの提携を解除し、ユーチューブから数十万件に及ぶ自社のビデオを削除することになった。ユーチューブから得られる収益が非常に低かったことから、今回の決定となったようだ。期待した広告収入を得られないのであれば、今後、ユニバーサルやソニー、EMIと言った大手にも広がっていくものと思われる。

 一方で、自社の音楽・動画配信サイトを立ち上げる動きも見られてきている。EMIは12月17日に自社音楽サイト、EMI.comを開設。同社に所属するアーティストのプロフィールや新曲の検索、ビデオの公開を行い、将来的には楽曲の販売も行う予定だ。

EMI.com (日本国内からはアクセスできない)

EMI.com (日本国内からはアクセスできない)


 また、NBCユニバーサルとNews Corpが立ち上げた動画サイトHuluも、ここにきて成長を遂げつつある。当初はユーザー数の差やコンテンツの量などからユーチューブが圧倒的と思われていたが、公式に公開された質の高いコンテンツを得られるという点で、ユーザーを獲得しつつあるようだ。

Hulu (http://www.hulu.com/)。やはり良質なTV番組の配信がポイントになりそうだ

Hulu (http://www.hulu.com/)。やはり良質なTV番組の配信がポイントになりそうだ


 ユーチューブとこれら配信各社の差を見て分かってくるのは、ユーチューブのコンテンツの多くがUGC-ユーザーが作ったコンテンツ-であるのに対して、公式展開される動画サイトのものは高品質な正規品であるという点だ。かつてまだ動画配信サイトが少なく、ユーチューブが無法地帯であった時代には、コンテンツの多くはユーチューブで見つけることができたが、著作権処理が進み違法コンテンツが減るにつれて、テレビ番組などを求めるユーザーは公式サイトに移行しつつある。インフラが整ってきたことで、動画配信サイトを運営しやすくなったことも理由のひとつだろう。ワンクリックでコンテンツを販売できたり、自由にサイトの管理ができる自社サイトの方がコントロールしやすいのは自明だ。配信サイト運営のハードルが下がれば、そこに参入することでユーチューブからの分配ではなく自社だけの利益とすることが可能になることも、このような自社運営への移行が起こっている理由だろう。

 日本でもニコニコ動画(ββ)に多くのコンテンツホルダーによる公式チャンネルが12月から開設されたが、運営側はニコニコ動画はあくまでも「コミュニティ」であることを主張している。これも以前の違法コンテンツに頼らず、マッド映像や「演奏してみた」などのUGCを最大限に活かそうという姿勢の表れだろう。

 ユーチューブやニコニコ動画などの動画配信サイトはこれから、UGCを活かした文化としての側面を強調していくことになるだろう。コンテンツホルダーがこれらで提供する公式動画が収益を上げられないことも、つまりユーザーが動画配信サイトに求めているものが変わってきていることを示している。それでも角川グループのように、ユーチューブのコンテンツから得た広告収入が月間1000万円の大台を超えているところもあるが、動画配信に早くから積極的に取り組んできた角川の成功は、ユーザーコミュニティに支えられている部分も多い。

ニコニコ動画の公式チャンネル (http://ch.nicovideo.jp/) は果たして成功するだろうか?

ニコニコ動画の公式チャンネル (http://ch.nicovideo.jp/) は果たして成功するだろうか?


 NHKは12月1日から民放に先駆けて放送番組をネット配信する有料サービス「NHKオンデマンド」を開始している。これまでオンデマンド向けの番組を配信するサービスはあったが、放送番組の配信は初めて。著作権処理の問題は未だ残るが、いずれTV局各社で始まることになるだろう。
( 矢橋司 )

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