3分映画「セリウッド」。新たなメディア革新

2007年08月07日(火)

[ 48 号]

 iPodや携帯から好きなテレビ番組や映画をダウンロードしたり、ユーチューブを利用してオリジナルビデオを放映できるようになった今日、もはや自宅や映画館で楽しむだけが娯楽ではなくなったようだ。新進の映画監督やフィルム製作会社、そして大学生らが、目まぐるしく変化を遂げるエンターテイメント業界に、新たなメディアの革新を生み出したのだ。通常の2時間強の映画を携帯で見るには長すぎる。しかしiPhoneの登場も加わって、これだけ人々の生活に根付いた携帯を利用しない手はない。ならば敢えて携帯用の映画を作れば良い、ということで生まれたのが「携帯で楽しめるほんの数分の映画」。このモバイル映画、業界ではすでにニックネームがつけられており、映画の大御所ハリウッドにちなみ、携帯(Cellphone)版のハリウッドという意味から「Cellywood(セリウッド)」と呼ばれている。

 セリウッド映画の特徴は、まず数分で完結するためちょっとした待ち時間にでも楽しめる気軽さと、主に映像と音楽のみが主流のため、言葉の壁を気にせず楽しめる点である。逆にフィルムメーカーにとっては、既存の映画概念から全く外れた感覚で、携帯という小さな媒体のみで制作することになるので、制作費や時間など全ての条件が限られている。その中でいかにクリエイティブに仕上げ、観客を惹きつけるか、映画制作能力が問われるというわけだ。

 セリウッド映画が世に出始めたのは2005年。ニューヨーク州にあるイサカ大学コミュニケーション学部では2005年高校生と大学生を対象に30秒のモバイルムービーコンテスト「CellFlix」を開催。学生対象のフィルムフェスティバルでは世界初となった。当初はかなり革新的なアイディアだったため半信半疑な反応が多かったが、今年2007年には、テキサス・インスツルメンツ(TI)のスポンサーも得て、合計で1万ドルの賞金が出されるほどの盛況となった。学部長のダイアン・リンチ氏は、「常に次世代のコンテンツを見極め、メディアの展望には目を見張る。そして学生がそれに対応する能力を備えているよう育てるのが私たちの役割」と、新たなビジュアル媒体に恐れず挑戦する姿勢と、そこから得られる刺激について語っている。

※ CellFlix Festival (http://www.cellflixfestival.org/)

※ CellFlix Festival (http://www.cellflixfestival.org/)


 今年2007年にはアメリカのインディペンデント映画を支援するサンダンス映画祭の協力により、バルセロナで開催された携帯電話業界のイベント「3GSMモバイルワールドコングレス」にて、プロによるモバイルムービー5作品が初公開。同5作品は、現在サンダンス映画祭のウェブサイトよりダウンロード閲覧可能となっている。同映画祭を主催するサンダンス・インスティテュートの代表、ロバート・レッドフォード氏は、このモバイルムービーの出現と普及について、「携帯はテレビ、映画、コンピュータに続き四つめのスクリーン」とプレスリリースで語っており、「この機会をこれからのフィルムメーカーたちがどう料理していくか楽しみ」と携帯市場の急速な成長に期待を膨らませている。公開された作品は、アメリカの人気ドラマ「Without a Trace」の作家、マリア・マジェンティ氏によるものなど、ドラマやCMで活躍するプロのフィルムメーカーによる作品が集まっており、この2年間でどれだけモバイルムービーがフィルム業界に旋風を巻き起こしているかが窺える。

サンダンス映画祭のサイト上で作品リストが公開されている (http://sundance.gsm.org/より)

サンダンス映画祭のサイト上で作品リストが公開されている (http://sundance.gsm.org/より)


 2005年から2006年の1年間にかけてモバイルビデオ/ムービーサービスから得られた収入は、世界規模で200億円と3倍以上にも膨れ上がり、2010年には利用者4600万人に達するとも予測されている。
( 松本貴子 )

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