映像配信シェアもiTSが制するか

2007年09月19日(水)

[ 53 号]

 米国三大ネットワークの一つであるNBCは現地時間9月4日、Amazonと手を組み、UnboxにてTV番組コンテンツの販売を開始すると発表した。

 AmazonのUnboxは2006年9月から始まった動画配信サービスで、すでに映画会社、テレビ局30社以上が参加し、iTunesストア(以下iTS)と同じくテレビ番組1.99ドル~という価格で販売している。対応するフォーマットはWindows Media。

 しかしこの発表にいたるまでに、NBCは動画配信でも最大手になりつつあるアップルと一戦交えている。

 ことの起こりは8月31日、NBCがiTSへの番組の配信契約を更新しないことを発表したことに端を発する。アップル側の発表によれば、「NBCは番組の価格をこれまでの倍以上に引き上げる要求を出してきたため」とし、まだ3ヶ月残る契約にも関わらず番組の配信を中止。NBCはこれに対して反論したもののiTSからの撤退は変わらず、今回のUnboxとの契約が発表されたという経緯だ。

 NBCはユニバーサル系列であり、ユニバーサルもまた今年7月にiTSとの楽曲の包括契約の更新を拒否していると伝えられている。どうやら今回の動きはメディアへの支配力を強めるアップルへの懸念の現れと言えそうだ。

 iTSの米国での音楽配信のシェアは70%以上にも及ぶ。さらにリアル店舗を持っていないiTSが、米国音楽販売実績において第三位となり、その影響力は非常に大きくなっている。DRMフリーの波が起こりつつあるのがジョブズのコメントによるものであることを考えても、それは明らかだ。

 そして今回の新型iPodの発表で、アップルが次に力を入れる先は明確。そう、それは映像配信事業においてもそのシェアを確立しようという動きだ。新型iPodは最軽量のshuffleを除いて全て動画再生ができるようになり、容量、ディスプレイも大きくなって、動画を持ち歩ける環境になってきた。さらに聞くところではアップルが近々映画レンタルを安価で開始するようであり、TV番組配信も音楽と同じ99セントへ値下げとの噂もある。永久保存するのではなくタイムシフトとしての番組配信であれば、99セントは妥当な価格とも思える。

 NBC/ユニバーサルの動きはこれに対応するものであろう。しかしシェア70%超のiTSを排除するということは、それを使うユーザーにとっては迷惑な話だ。iPodではWindows Mediaフォーマットは再生できないし、動画はDRMフリーで提供できるわけでもない。ユーザーに不利益を強いることがどのような結果になるのか、今後の動きが注目される。

 これに対し日本は、相変わらずお寒い状況だ。iPodは日本でも販売が開始されているが、iTSで購入できる映像コンテンツは未だミュージックビデオのみ。キラーコンテンツであるはずのアニメやドラマのほぼリアルタイムの配信などはいつになっても始まらない。逆に、米iTSでは手塚プロの「火の鳥」「ブラックジャック」といった作品の配信が開始された。日本のアニメが海外のiTSでしか買えないアンバランスはどうなのだろうか?

 ストリーミングによる動画配信はTSUTAYA DISCASなどでも開始されてはいる。しかしストリーミングは持ち出したり、PC以外のメディアで見ることはできない。それが権利者側の狙いでもあるのだろうが、動画を持ち歩くことがこれからのトレンドとなる中で、動画配信の方法も変わる必要がある。権利ばかりを叫びトレンドに乗り遅れる……音楽配信の時と同じ轍を踏まないためにも、早急な対応が期待されるところだ。
( 矢橋司 )

キーワード


記事についてのご意見・ご感想

東京IT新聞 特集ラインナップ

専用サーバ・専用レンタルサーバーは at+link におまかせ!

Apple Store(Japan)

東京IT新聞HOTキーワード
東京ITイベント情報

イベントカレンダーを見る カレンダーを見る