ヤフー買収提案 広がる波紋と懸念

2008年02月13日(水)

[ 71 号]

 2月1日、衝撃的なニュースが駆け巡った。マイクロソフト(以下MS)が米ヤフーに対して446億ドル(約4兆7000億円)という巨額の買収提案を行ったというのだ。もし実現すれば2社を合わせた売上高は100億ドルを越え、グーグルに対抗できる規模となる。

マイクロソフトはサイトで今回の買収に関する公式発表を掲載(http://www.microsoft.com/presspass/default.mspx)

マイクロソフトはサイトで今回の買収に関する公式発表を掲載(http://www.microsoft.com/presspass/default.mspx)


 とはいえこの買収話は何度か浮上していた話だ。MSのスティーブ・バルマーCEOも18ヶ月にわたって交渉を続けてきたと語っている。今回のこのタイミングは、ヤフーの今期第4四半期の決算を受けてのものと言われている。ヤフーは今期の売上は上がっているものの、純利益で13%の減少となっており、人員削減や事業縮小を行っていた。株価も下がっていたところに、MSが1月31日の終値に62%上乗せした額を提示したとされている。取締役会はともかく、株主には魅力的な提案だ。

 MSがヤフーを買収した場合、MSにとっては立ち後れていたネット事業を一気に充実させることができる。そして両者にとってもっとも重要なことは、ネットサービスの雄であるグーグルに対抗しうる規模になれるという点だ。現在グーグルのネット検索市場におけるシェアは58%。ヤフーが23%、MSは10%程度。単純に市場規模でいけば、グーグルに対抗できる数字を確保できるだろう。

 この発表を受けて、「仮想敵」であるグーグルは2月3日に正式に懸念を表明した。内容はMSの非オープン性を責め、インターネットの発展を阻害するのではないかというものだった。これに対しMSは、現在インターネット検索と広告市場を握るグーグルこそ支配的立場にあることを指摘した。そしてMSとヤフーが一体となることで競争原理が生まれ、健全な市場が形成されるとしている。確かにネット検索市場の50%以上、それに付随する広告ビジネスで大成功している、グーグルという「独占企業」に意見されることではない。

 さらにグーグルはこの買収を防げるのであればと、ヤフーに対して提携を持ちかけているとも言われる。ヤフーの広告部門をアウトソーシングして広告売上を上げることなどで、協力を惜しまないと語ったというのだ。

 これらの動きを見て株式市場もヤフー株が上昇している。MSが提示した1株31ドルは安いと言い始めた株主もいるようだ。

 この買収劇が成功するためには幾つかのハードルがある。ひとつはこの合併が独占禁止法に抵触する可能性があること。米連邦政府はすでに審査を行う構えだ。「ナンバー1に対抗するためにナンバー2と3が合併するというのは説得力がなく、市場の集中度が高まることで競争が阻害される可能性が高い」というのがその理由だ。

 もうひとつは、MSとヤフーという企業風土の違いを吸収できるのかという点だ。グーグルも言うように、非オープン性の高いMSという巨大企業が、自由な気風を持つシリコンバレーの企業を買い取ることが良いことなのか、MSの文化がヤフーに受け入れられるかどうか。シリコンバレーの企業にはMSに対してアレルギーを感じる者が非常に多い。買い取りが完了する頃には、多くの人材はグーグルや他のハイテク企業に流出している可能性もある。

 オープンソース思想を旗頭に走るグーグルに、新生MSが本当に対抗できるのか。これはスケールメリットだけの話だけではない。かつて多くの買収劇によって様々なサービスを飲み込み、独自化し続けてきたMSだ。ヤフーとMSのIM(インスタント・メッセージ)を統合してその他のサービスを閉め出す可能性がないとは言い切れない。

 いずれにしろこの買収劇はまだまだ決着がつきそうにない。しかしもし成功すれば、IT企業の勢力地図が大きく書き換わる。MSがヤフーの遺伝子によって、オープンな企業へと変貌することを期待したい。

(※本記事は、2月7日現在の情報を元にしています)
( 矢橋司 )

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