筧さんはお世話になった大学の先輩である。しかし自分がろくでもない広告代理店で道草を食っているうちに、金城武主演で全国公開の35ミリ映画を撮ってしまうとは。学生時代、『美女缶』をみて「こんな自主映画を撮れる人がいるなんて」と感じ、筧さんは行くところまで行くなと思ったが、事態がそこまで進んでいたとは。悔しさも半分胸に抱えつつ吉祥寺の鳥良にて。

筧 昌也
1977年東京生まれ。大学在学時の自主製作映画が、映画祭で連続入選。卒業後VP制作会社に入社し、その後フリーディレクターとして活動。03年、映画『美女缶』がぴあフィルムフェスティバル企画賞などを受賞し、翌年劇場公開される。「世にも奇妙な物語 春の特別編」にて妻夫木聡を主演に迎え『美女缶』をセルフリメイク、またノベライズの執筆も自ら行う。07年劇場公開映画『恋するマドリ』(主演:新垣結衣)の原案を担当。08年、初の長編映画『Sweet Rain 死神の精度』が劇場公開される。原案、チーフ監督、脚本を勤める連続ドラマ『ロス:タイム:ライフ』(CX系23:10-)は2月2日(土)放送開始。映画の他にもイラストレーション、文筆と幅広く手がける。
和田: 筧さんが『死神の精度』を監督すると聞いて、まず『美女缶』の雨のシーンを思い浮かべたんですよ。『死神の精度』って全部雨の設定の小説ですよね。雨のシーンをきれいに撮ることを評価されてロボットのプロデューサーに起用されたのかなーと思ったんですが。それほどまでに世にも奇妙な版の『美女缶』の雨のシーンがきれいだったんで。

筧: そんなこと一言も言われてない(笑)。長編映画の話は「死神の精度」の企画開発が始まる前から進んでたし。言われたのは、ファンタジーってとこだね。『美女缶』も『ロス:タイム:ライフ』も一応ファンタジーでしょ。なんでも撮る職人的な監督はいるけど、日本人でファンタジーを専門に撮ってる人なんていないし、なんていうか個性っていうと安い言葉だけど、オリジナルでファンタジーを作れるっていうところを評価してもらったのかな。恥ずかしくないファンタジーを撮れるっていうか。日本でCGにやたら凝ってるとかそういうの主張しているのって恥ずかしくなったりするじゃない(笑)。年代もあるのかもしれない。70、80年代のハリウッドものだけに影響されてる年代の日本人がそれを実際撮ると、きついのかもしれない。
和田: 筧さんの作品はファンタジーという枠組みに入るのかもしれないけど、VFXに頼るんじゃなくて、演出で勝負してますね。
筧:『美女缶』のときにある人が言ってくれたのが印象的だったんだけど、日本人に馴染むSFとかファンタジーは手塚治虫じゃなくて、本当は藤子不二雄なんだっていうこと。やっぱアトムみたいに空飛ぶよりも、ちょっとした道具だったりとかそういうディティールにいかないと、なんか厳しいんだよね。SFはあくまでもドラマとかテーマを語る装置にしか過ぎないっていうぐらいにしとかないと。『ロード・オブ・ザ・リング』くらいできればもちろん成立するけど、できないしね(笑)。
和田: 筧さんの作品は、確かに藤子不二雄の系譜かもしれないですね。前から思ってたんですが、筧さんは他のスタッフとかを信用してる感じがするんですよ。言うこともちゃんと聴くし、スタッフのいうことを盛り込んでもっとおもしろくしていく。その辺の感覚はどこで培ったんですかね?
筧: それは、14、5歳ぐらいから漫画描いて雑誌に投稿をしてたからだろうね。若い頃から編集者の人の言うこと聞いていたし。今でもそうだけど初心に戻ろうといつも思ってて。15歳の頃の僕のイメージだと、30歳の僕は漫画家として印税生活をしてるイメージだったから(笑)。漫画家なんて人気投票の世界だから、大人の言うことは一理あるわけですよ、絶対。言われて直して、自分の個性がなくなるようだったら、そんなのたいした個性じゃないっていうのがどっかにあるから。わりといろいろ意見は聞くようにしてますね。
クリエーター新作紹介
■映画
「Sweet Rain 死神の精度」 監督:筧 昌也 2008年3月22日公開予定
■フジテレビ 土曜ドラマ
『ロス:タイム:ライフ』 原案、チーフ監督、脚本:筧 昌也
〈2008年2月2日(土)より 毎週土曜23時10分~23時55分 放送〉
インタビュアー 和田宗衛門

2007年、メディアアート作品DVD『東京ヌードル』リリース、好評発売中
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【インタビュアー】和田宗衛門
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