【視点・論点】第3回 変化を始めた食品企業の事業戦略

2008年05月27日(火)

[ 84 号]

食品事業の環境変化

 一般に食品メーカーは、あまり大きな企業でなくとも生き残りやすい/参入も容易な業界であるといわれてきた。今でも特に地方の地場スーパーに行けば、その土地で長年愛されてきたメーカーの商品が結構見られるであろう。また、ナショナルブランド(NB)であっても圧倒的なトップメーカーが国内市場全体を支配しているという分野はあまり見られず、3~5社程度のメーカーが市場を分け合いしのぎを削っている/共存しているという分野のほうが多いのが、わが国の現状である。
 しかしながら、この構造は川下/川上の両面の変化を受けて大きく変わろうとしている。川下の変化とは、流通の寡占化のことである。今や日本全国どこへ行ってもイオングループや地域一番のチェーンによる大型SCが郊外に巨艦店を並べて競い合い、あるいは全国チェーンのコンビニが津々浦々に林立し、どちらも地場のスーパーを窮地に追い込んでいる。これら広域チェーンの店頭に商品を並べる為には、全国を相手に商品を供給し、寡占化した彼ら広域流通の厳しい要求に応えるだけの体力のあるメーカーが必要である。

 一方、川上側の変化とは、特に07年秋以降いっそう加速した穀物・砂糖などの原材料や輸送・包材に使われる原油価格の高騰である。食品メーカー各社は規模においてはるかに勝る原料メーカー/商社の値上げ要請を断りきれず、かといって値上げによる顧客離れを恐れる強大な流通に対して全面的な価格転嫁も行えず、減量や小幅な値上げによってなんとか収益を守ろうとするものの、いずれ今の規模では限界が見えている話である。

 客観的に見れば、強大化する川上・川下の圧力に対抗するために、食品メーカー自身も淘汰や統合を進め自ら大きく・強くなる道を選ばざるを得なくなってきているのだ。

安心・安全対応力が企業の命運を左右する

 そこに「食の安心・安全対策」という新たな経営課題が浮上してきている。食の安心を担保するための安全対策、すなわち衛生設備や検査体制の増強、あるいはITを駆使した安全情報管理、正確な表示の維持、さらには得意先・消費者向けの説明という一連の作業に「これでいい」という限界はなく、突き詰めるほどに膨大なコストを要する。たとえ「看板」の信用で今まではこういった作業に無頓着だった企業であっても、今日ではその「看板の信用」を守るために多くの労力とコストが必要となっているのだ。

 この負担に耐えられるか否かで、そのメーカーが消費者・流通から安定的に信用を獲得できるかどうか、すなわちその企業が(規模の大小に関わらず)継続的かどうかが試されることになる。この場合メーカーにとって必要なことは「相応のコストを払って、看板を磨き上げること」であって「コストを回避すること」ではない。そしてその「相応のコスト」とは、商品数の多さや原材料・商品流通の複雑さに対応して加速度的に増大するのだ。この問題に対する取組みをどこまでやりきるのかが、これから淘汰が進むであろう食品業界を見るうえで重要な視点になってくるものと思われる。
( 株式会社CDIソリューションズ 取締役 小川 克己 )


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