「モバイルCMS 成功の鍵」 ユビキタスエンターテインメント・清水亮代表取締役社長に聞く。重要なのは運用コスト抑制とリアルタイム性
2008年06月10日(火)
[ 86 号]
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インタビュー
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さらなる成長が見込まれるモバイルコンテンツ市場。野村総合研究所が昨年発表したIT主要市場予測でも、2007年から2012年にかけて110%の拡大が予想されている。市場が拡大すれば、モバイルコンテンツ事業者においてはそれだけ新規参入者=コンペティターが増えることになり、勝ち残るための熾烈な戦いを繰り広げなければならない。今後さらなる激戦区になるであろう同市場において、勝ち残るための方法はあるのだろうか? 携帯電話向けのCMS「ZEKE(ジーク)CMS」や、ケータイコンテンツ「メルルーの秘宝」などを展開する株式会社ユビキタスエンターテインメント(UEI、東京・文京)代表取締役社長の清水亮氏に話を聞いた。

しみず・りょう 電気通信大学在学中に米Microsoft Corp.の次世代ゲーム機向けOSの開発に関わり、1998年末に株式会社ドワンゴ入社。99年に同社で携帯電話事業を立ち上げる。02年に退社し、米 DWANGO North America Inc.のコンテント開発担当副社長を経て03年独立。05年、独立行政法人情報処理推進機構により、天才プログラマー/スーパークリエイターとして認定される
「兵站」の発想欠落した業界
清水氏は開口一番、「現在のモバイルコンテンツ業界には『兵站(たん)』の発想が欠落している」と言い放った。兵站の発想とは、どういうことか。
「ケータイのウェブデザインは、PCと比べて小さいから簡単と思われがちだが、大違い。端末一つ取っても画面表示の仕様が機種ごとで細かく異なるし、例えばグラビア写真をトリミングするにしても事務所の許可を得られる形で行うには、人の手を使わなければならない」という。
そうした事情から、モバイル向けCMSは各種の細かい機能や、導入のための初期費用にばかりに目を奪われがちだが、「むしろ初期コストは安くなっている。一番重要なのは運用コストをいかに抑えられるかだ」と清水氏は説く。
「お客さんが見に来るサイトだったら、最低でも毎日1回、多いところだと5回、6回と更新しなければユーザーは付いてこない。というより、ケータイサイトはリアルタイム性が売りだから毎日更新しないなんてあり得ない。それを3キャリア対応で1時間ごとに更新しようとしたら手動では絶対に不可能だ」とした上で、「コンテンツごとに完成されたCMSを個別に作るのでは、最初は良くても後で運営に行き詰まる。大手コンテンツプロバイダに在籍していた時、ばらばらな仕様のCMSをいくつも同時に運営するのは大変だったし、何かあったときの引継ぎも困難だ」と言う。
複数のコンテンツを標準化された仕様で効率的かつ継続的に運営していけるような、大局的・俯瞰的な視点がモバイルCMSにはこれまで欠落していたのではないか、と清水氏は指摘しているのだ。
「つまり、戦略の発想が欠如している。戦略という言葉を誰もが好んで使いたがるが、本当の意味を理解している人はほとんどいない。日本が第二次大戦で負けたのも、目先の技術に振り回されて兵站を極端に軽視していたからだ」と断じる清水氏。では、氏が考えるモバイルにおける戦略と兵站とはどのようなものなのか。
モバイルの兵站担うのがCMS
「1兆円規模のマーケットを数万のプレイヤーが分け合う日本のモバイル市場は世界的に見ても激戦区だ。ここで戦い抜けられるシステムを構築すれば、世界でも十分に通用する」としたうえで、清水氏は「そんなモバイルコンテンツ業界で生き残る戦略を考えると、どうしても軍事用語に頼らざるを得ない」と苦笑しながら前置きし、次のように続ける。
「CMSは言うなれば兵器であるが、ソフトウェアとして単体で見てはいけない。兵器であると同時に兵站、ロジスティックそのものだということだ。一度開拓したユーザーに対してケアを継続できるかが勝負であり、コンテンツを切れ目なく供給する補給線をなすのが、CMSだ」
一度サイトを立ち上げれば、成功させようとする限り常にコンテンツを更新し続けなければならない。ウェブ上で繰り広げられるコンテンツの『消耗戦』に耐えられるシステムこそが、求められるCMSだと清水氏は言うのだ。では、そこでのキーポイントとは何だろうか。
「まず、コンテンツサービスで一番コストがかかるのは運営コスト。開発コストの約10倍、億単位の費用がかかるので、クオリティは保ちつつ低く抑えたいところだ。次に柔軟な拡張性が保たれていること。CMSの完成度は高くなければならないが、かといって作り込み過ぎないのも大事だ。将来の変化に対応できるかが重要で、最初に作って終わりという発想ではいけない」
運用の柔軟性が保たれているということは、例えば期間限定サイトを運営したり、あるいは不人気なコンテンツを早期にたたんで撤退したりするような『機動戦』を行えるということでもある。
戦略的な視点に立ったCMSの条件とは、完成度と柔軟性、および『持久戦』に耐えうるコストパフォーマンスをいずれも高い水準で満たしていることだ。
(
文:斉藤円華、写真:更科智子
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