今年は「ネット専業生命保険元年」だ。本紙6月3日号で、戦後初の独立系で開業したライフネット生命保険の出口治明社長を取材したが、今号ではライフネット生命より1月早い4月7日に開業したSBIアクサ生命保険株式会社(東京・港)の木村真輔代表取締役社長にインタビューする。同社の大きな特徴は、契約から解約に至るまでの全てのプロセスがネット上で完結する点にある。一方で「なりすまし」の危険性なども指摘されているが、万全の対策で防いでいるという。

きむら・しんすけ SBIアクサ生命保険株式会社代表取締役社長。三和総合研究所などを経て2000年にSBIグループに入社、今年3月から現職。「インターネットの持つ『革新性』とともに、生命保険 が本来お客様に提供すべき『安心感』を大事にしていきたい」
全プロセスがネットで完結
「なりすまし」の危険性について木村氏は「ネットで契約手続きした場合、契約者の告知内容は全て記録として残る。一般論として虚偽の告知は少ない」とした上で「本人確認をクレジットカードの本人認証で行うほか、保険証書を自宅へ郵送している。また、契約確認や支払い確認を随時行い、悪意のある契約者に対して監視の目を光らせている」と万全の対策を敷いていることを強調した。
ネット専業での生保商品販売は、どのような顧客層を見込んでいるのか。
「主に20代から50代で、インターネットを使う人が中心。保険商品をネット上で比較して、情報を吟味してから購入する人が増えている」(木村氏)
同社の親会社のひとつ、SBIホールディングスが運営する保険比較サイト「インズウェブ」のユーザー数が増えているのが背景にあるという。これまで門戸が開かれていなかった生命保険についても「機は熟した」と判断した。
「生保業界では現在、職域営業、すなわち保険外交員による対面販売が以前と比べて低調という現象に直面している。個人情報保護の問題などさまざまな要素が考えられるが、例えば地縁のつながりで保険商品を買っているような人は、引越しや転勤で関係が切れてしまう。地域と関係の薄い、あるいは収入の低い若年層ではそもそも保険にアクセスできないという問題もある。そういう人達を顧客層と捉えて、ネットを使ってアプローチできないかと考えている」(同)
これまでの生保市場では十分に捉えきれなかった若者などの層を顧客として獲得したいという考えだ。ところで、特に20代前半までの若者はケータイからネットに繋がるのが中心と言われるが、モバイルコンテンツとしての展開は考えているのだろうか。
「検討はしているが、約款の閲覧やダウンロードをケータイで行うのは画面が小さくて見づらいだろう。すぐにとは行かないが、対応できるようにしたいと考えている」(同)
ちなみに同社によれば、契約数は開始以来順調に推移しているという。その指標として、ウェブ訪問者が保険料金試算画面まで到達した数を示す「試算画面到達数」は5月時点で前月の倍近い4万6000件に達したとしている。

SBIアクサ生命のウェブサイト。「契約から解約までネット上で完結」が特徴 http://www.sbi-axa.co.jp/
ネット専業の強みについて、木村氏は次のように語る。
「やはり何といってもコストを圧縮できたこと。営業員を使うことによる巨額の販売コスト、従来までの紙を使った契約業務による管理コストをいずれもほぼカットすることに成功した」
契約手続きにおけるデータ入力をユーザーがブラウザ上で行うことで、事務手続きの大幅な合理化が実現したと木村氏は指摘する。同社の現在の従業員数は50名ほどだ。もう一方の親会社が運営するアクサ生命保険の従業員数が7000名以上であるのと比較すれば、その陣容の小ささがわかるだろう。
こうしたコストダウンにより、これまでより3、4割も安い保険料を実現したことに業界からは、驚きの声が上がっているという。
10年毎の更新時、健康だと減額も
また、ウェブ上で契約を完結するためには保険内容が複雑でもいけない。保険商品が極めてシンプルなことも、従来の保険に「分かりづらさ」を感じていた消費者にとっては大きなアピールになるはずだ。「弊社はネットマーケティングにおいて相当の強みを持っている」と木村氏は自信を見せる。
同社のユニークな点はほかにも、ユーザーが10年ごとの契約更新時に健康で所定の要件を満たしている場合、保険料の増額が低くなる「健康チャレンジ」があり、好評を博しているという。
「これまでもユーザーから、『健康なのに更新時に保険料が上がるのは納得がいかない』と不満の声を頂戴していた。今回、健康なユーザーにはコストダウンの恩恵を還元できる仕組みを作ったことで、そうしたニーズに応えたものと考えている」と木村氏は語る。
ライフネットは「同志」
また、ネット専業の同業者であるライフネット生命に対しては「市場を共に開拓する同志と感じている」と話す。
一方で「我々の強みは契約から解約まで全てのオペレーションがネット上で完結していること。一部保険で健康診断書などの書類の郵送が必要なライフネットさんと違って、弊社はそもそも面倒な健康診断の受診も必要ない」といい、あくまでネット上で手続きができることへのこだわりを強調する。

「ネット専業による生命保険の契約数は、2015年までに全生保契約数の10%に達すると見込んでいます」
先日発表された国内生保主要九社の2008年3月期決算では、保険金不払い問題の影響により実に8社までが減益を記録した。業界はこれから、生命保険に対する消費者の信頼を回復し、新たなニーズに対応できるか。「ネット専業」で業界に一石を投じたSBIアクサ生命の今後の行方が注目される。
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文:斉藤円華、写真:岡部ユミ子
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『 ウェブ専業生保のパイオニア SBIアクサ生命保険・木村 真輔 社長に聞く 』に対する
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