【視点・論点】第1回 「食の安全・安心」何が問われているのか

2008年05月13日(火)

[ 82 号]

 2000年以降、牛乳集団食中毒事件、BSE問題とそれに伴う牛肉偽装事件、鳥インフルエンザと毎年のように「食の事件」が発生し、その都度大きく報道されてきた。なかでも、昨年から今年にかけて頻発した食品メーカーの数々の不祥事、および年初早々の「毒餃子」問題によって、消費者の市販食品・それを製造販売する加工食品メーカーに対する不信感は頂点に達したといえよう。

 しかしながらこの間、日本人の加工食品に対する依存率は(中食・外食などそれと意識されないものを含めると)一貫して増加していることも一方の事実である。事件や不祥事が何度繰り返されても、消費者は加工食品を利用し続けざるを得ないのであり、だからこそ加工食品メーカーに対して「食の安全・安心」を求める声は高くなり続けているのだ。

「食の安全」は「食の安心」に通じるか?

 ところで一般の報道などでは「食の安全・安心」とひと括りで語られることは多いものの、「安全」と「安心」という概念が本質的に異なることにお気づきであろうか。

 「安全」とは健康に対する具体的な危険因子(病原菌、有毒物質…)及び危険発生確率(温度・時間の管理、毒性の限界値…)をどれだけ/どのように制御するか、という問題であり、すぐれて技術的・科学的な課題である。一方「安心」とは具体的な危険性の有無や程度・確率に関わらず、受け取る本人の主観によって「危険ではない」と判断されるかどうかという問題であり、どちらかといえば文化的・感情的な問題であるといえる。

このように考えると、本来「安全」であることは「安心」のための前提条件でしかない。そして今日、消費者がほんとうに求めていることは、「安全であることの面倒な保証」よりも「無条件で安心できるような食品」なのかもしれない。

 今日の加工食品メーカーにとっては、「食の安全」をアピールする上で「自社の製品情報を正確に捉え、実態として開示できること」は、事業運営上の絶対条件になっている。但し、そこに留まって「食の安全対策=新たなコストアップ要因」とだけ捉えるのは勿体ない。「安全」が十分に管理されている実態を前提に、「安心」についてどのように消費者とコミュニケーションを取り、ブランドに対する「安心感」を醸成するべきかという戦略的観点が、これから重要になるだろう。

 本連載では、本来消費者が望んでいる「食の安心」のための「食の安全」、及びその先の対策に関して、5回にわたって話題を提供してゆく。

【セミナー開催のお知らせ】
 筆者らが所属する株式会社CDIソリューションズでは、JFEシステムズ株式会社と共催で、来る5月30日に「食の安心情報ニーズへの対応と、その先の展開」と題したセミナーを東京・虎ノ門琴平タワー(港区虎ノ門1-2-8)にて開催いたします。ご関心のある方は事務局(seminar@cdi-solutions.co.jp)までご連絡ください。追ってご案内をお送りいたします。
( 株式会社CDIソリューションズ 取締役 小川 克己 )


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