情報通信研究機構が携帯型の音声翻訳技術を実証実験

2008年09月09日(火)

[ 98 号]

 情報通信事業の支援などを行う独立行政法人情報通信研究機構は、8月8日から開催された北京オリンピック期間中に、北京市内で日本人旅行者50名と北京在住の日本人50名をモニターとする日本語と中国語の携帯型音声翻訳技術の実証実験を行った。この実験は、今年度より開始された多言語音声翻訳や音声対話などの音声・言語処理を統合的に研究開発し、成果展開を推進するための『MASTARプロジェクト』の一環として行われた。

 今回、同プロジェクトで開発された携帯電話音声翻訳技術は、サーバを使った音声認識による翻訳結果を音声で返す機能に加えて、世界初となる翻訳結果を逆方向に翻訳して確認できる機能を搭載。日本語から中国語に翻訳された文章を、改めて別の翻訳プログラムで逆に日本語へ翻訳し直した結果が同じ内容であるかどうかを確認できるというものだ。特に中国語は同じ単語でも、「四声」という微妙な発音の違いによって全く意味が変わるため、この翻訳結果を確認できる機能が非常にありがたい訳だ。同プロジェクトリーダーの中村哲氏によれば、「色々な研究をしたが、四声を聞き分けることは困難。現在のシステムでは、文脈の中で単語を識別して翻訳している」とのことだ。

小型PCを使った音声翻訳専用機は、北京在住の日本人が日常生活で評価。携帯電話とは違って通信が不要なので翻訳処理時間が短い

小型PCを使った音声翻訳専用機は、北京在住の日本人が日常生活で評価。携帯電話とは違って通信が不要なので翻訳処理時間が短い


 また、滑舌や声質などの関係で音声認識されにくい人に合わせて認識の性能を上げる機能を搭載しているほか、固有名詞辞書が整備され、数分の発声でユーザーの声の特徴を登録する機能や、シーンに応じて固有名詞を切り替える機能などがある。

 今回の実証実験ではNTTドコモの音声処理機能を搭載した905iを使用。日本国内にある音声翻訳サーバとネットワークで繋ぎ、日本人旅行者の移動や観光、ショッピングなどにおけるコミュニケーション手段として利用してもらって満足度を調査分析した。オリンピック終了後、同氏に今回の実証実験について尋ねた。

 「昨年からシステム構築を始めた実験ですが、人によって方言や異なる声質など様々な話し方を音声認識する上で、実際の場面ではどのように発話されるのかを調べるのが今回の目的でした。モニターからは非常に好評で、旅行会話が大体伝わったという声が目立った。今回の実証実験から得られたデータを参考にして更に性能を高めていく予定です」

北京語は語彙が多いので、現在は発話から翻訳までには通信時間を含めて4~5秒ほどかかるが、最終的にはスピードアップする予定だという

北京語は語彙が多いので、現在は発話から翻訳までには通信時間を含めて4~5秒ほどかかるが、最終的にはスピードアップする予定だという


 実際に同氏自身も北京で実験を行ったところ、今後の課題が見えたようだ。

 「まだ携帯電話での翻訳システムが広く認知されていないので、相手に自分が持っている携帯電話に向かって話してもらうまでに苦労した。今後はこの点を解決したい」

 現在は日本語・英語・中国語の翻訳に対応しているが、将来的には更に対応言語を増やすという。このように手軽な携帯電話翻訳機の普及によって、海外はもっと身近な存在になるはずだ。
( 石田絢子 )


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