「ダビング10」議論が火をつけたB-CASの問題

2008年01月29日(火)

[ 69 号]

 最近聞かれ始めてきた言葉に「ダビング10」(ダビングテン)というものがある。

 これまでデジタル放送からデジタルで録画されたコンテンツに関しては、複製物を作らせず、DVDなどのメディアに保存する場合はハードディスクレコーダーに録画した番組を消去して移動させる「ムーブ」で対応する「コピーワンス」を採用してきた。しかしこの技術は、バックアップを取ったディスクからの孫コピーも不可能だったり、ムーブを失敗すると録画したコンテンツ自体を失ってしまうなど、使い勝手の悪さが指摘されていた。

 これを受けて昨年、総務省主催の検討委員会が設けられ、総務省の情報通信審議会が策定したのがこの「ダビング10」である。ダビング10は、これまでのムーブのみという規制を緩和し、「コピー9回、10回目はムーブ」を可能にした。しかしこの規格でも孫コピーは不可能だったりと、単純に回数を増やしたということに過ぎない。記録メディアが次世代になってもディスクからコピーができず、コンテンツを継承できないということになる。

 そしてこの制度を根幹から揺るがす機器が登場したことで、局面は一気に変わる。コピーワンスなどの情報を制御するシステムであるB-CAS方式を解除する地上波デジタルチューナー「フリーオ」(Friio)の登場である。フリーオはB-CASカードを使ってデジタル放送を受信するが、その時点で行うべき暗号化を行っていないため、コピーワンス、ダビング10といった規制を一切受けない録画を行うことができるのだ。本来B-CASカードはCCIと呼ばれるコピー制御信号を含んでおり、これに従わないチューナーにはカードを発行しない。しかしフリーオの場合、発行されたカードを流用することでCCIに準拠しないチューナーでも受信を可能にしている。正式なカードであるため受信は問題なく行えるというわけだ。

フリーオの販売サイト(http://www.friio.com/)。台湾で生産されており、現在売り切れ状態

フリーオの販売サイト(http://www.friio.com/)。台湾で生産されており、現在売り切れ状態


 フリーオによってB-CASというスクランブル方式そのものに疑問が持たれるようになったが、さらに話は加速する。

 それはB-CAS方式そのものが、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(ビーキャス社)が提供するシステムであることだ。公的な規格であるB-CASの管理を民間企業であるビーキャス社が独占しており、これは独占禁止法の私的独占にあたると指摘されたのだ。

 これは1月17日に行われたMIAU(=インターネット先進ユーザーの会)のシンポジウムでも言及された点である。他にも公共性の高い無料の地上波放送にスクランブルをかけることの是非や、そもそもビーキャス社がNHKの天下りポストとなっていることも明かされている。

ハードの普及の妨げになる可能性も?

 ダビング10はB-CASに依存するシステムであり、見直しが計られるということになればダビング10という規格そのものがなくなってしまう可能性は高い。しかしこのまま録画形式の次世代規格が決まらなければユーザーに買い控えを起こさせ、ハードの普及にさらに悪影響を及ぼすことにもなる。地上波がなくなった時点で「テレビを見るのをやめよう」と話す人も少なくない最近。公共性を第一に優先した早急な解決策を望みたい。
( 矢橋司 )

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