サービス残業・名ばかり管理職問題(2) 【IT業界の労務管理シリーズ】 固定残業手当制度の導入へ

2008年07月08日(火)

[ 90 号]

 今回は、総額人件費を増加させることなくできるサービス残業対策として経営者が一番望む手法のひとつでもある「固定残業手当制度の導入」についてみていきましょう。

 固定残業手当とは、毎月の残業手当の額を固定することですが、この制度を導入する際に一番注意することは、労働者に対して制度の仕組みや詳細を明確にすることです。そして、トラブル回避の為には次の5点に気をつける必要があります。

 1.固定残業手当は何時間分に相当するのか明示する、2.基本給などと固定残業手当の額の内訳を明示する、3.固定残業手当の算出方法を開示する、4.就業規則など賃金規程にその旨を記載する、5.雇用契約書などにもその旨を記載する。

 また、重要となってくるのが、固定残業手当の算出方法です。どのような方法で算出されているケースが多いのかを見ていくと、導入の際にトラブルが一番多い算出方法でもあるのですが、安易に用いられやすい方法で、(総額)から(固定残業代)を逆算する方法です。

 具体的には次の計算式にそれぞれの値を入れると、固定残業代が逆算できるようになっています。総額から計算するので、経営者としては総額人件費の枠内での設定が可能となりますので、こちらの方法をとられる会社が多い傾向にあります。

 その計算方法は次の通りです。

 (総支給額-固定残業代)÷1ヶ月平均所定労働時間×1.25×固定残業時間=固定残業代(※注:総支給額には割増賃金の算定基礎から除外される手当は除きます)。

 ただし、この逆算方法を採用する場合の注意点としては、労働者にとっては労働条件の不利益な変更となりますので、労働者の同意が必要となります。また、この方法では最低賃金に気をつける必要があります。

 たとえ、総額が最低賃金以上であっても、基準内賃金が最低賃金を下回ってはいけません。基本給が減額されるので、賞与や退職金などを算定する際に、基本給に一定の係数を乗じるようなケースは、結果として賞与や退職金まで大きく影響してしまうので注意が必要です。また、賞与などの算定には「基本給+固定残業代」に一定の係数を乗じるといった対応などが考えられます。

 いずれにせよ経営者側の正しい制度運営と、労働者側の理解によってはじめて受け入れられる対応策であるということを忘れることなく導入していただきたいものです。

 次回は「甘くみないで労働基準監督署の恐るべき権限」について詳しく解説いたします。

淺野 寿夫 社会保険労務士法人JIC 代表社員
社会保険労務士の法人組織をいち早く立ち上げ、現在は首都圏を中心に全国へ「サービス残業問題」など人事労務管理に関するサービスを多数提供、人事労務のセカンドオピニオンとしても多くの企業に携わる。

サービス残業・名ばかり管理職対策センター
http://www.zangyou.net

( 社会保険労務士法人JIC 代表社員 淺野寿夫 )

記事についてのご意見・ご感想

関連記事

東京IT新聞 特集ラインナップ

専用サーバ・専用レンタルサーバーは at+link におまかせ!

Apple Store(Japan)

東京IT新聞HOTキーワード
東京ITイベント情報

イベントカレンダーを見る カレンダーを見る