《モバイルマーケティング活用術》 最前線で活躍の3氏が語る、リッチ化で著名企業が相次ぎ参入

2008年08月26日(火)

[ 96 号]

 モバイルを取り巻く環境が変わり始めている。端末の進化や通信環境の変化で、シンプルなテキストだけだったモバイルサイトでもリッチコンテンツが提供できるようになり、企業がマーケティングツールとして認識し始めている。モバイルマーケティングの最前線で活躍するトリムタブジャパン有限会社の中谷健一代表取締役、株式会社イオスの吉田悟美一(さとび)代表取締役社長、株式会社EBAの前田庸行CEOの3氏に、モバイルマーケティングの活用術や戦略立案のヒントとなる事例を語ってもらった。

左からトリムタブジャパン・中谷氏、イオス・吉田氏、E.B.A.・前田氏

左からトリムタブジャパン・中谷氏、イオス・吉田氏、E.B.A.・前田氏


―今年に入ってから、モバイルのコンテンツが活気づいていますね

吉田 そうですね。Flashや動画を使ったリッチコンテンツが大幅に増えています。リッチコンテンツが増えたのは、周辺状況の変化によるところが大きいでしょうね。パケット定額化、FOMAなど通信速度の高速化、大画面表示が可能な端末の登場、Flash2.0の登場、さまざまな要素が組み合わさってリッチコンテンツの利用が可能になりました。また、XHTMLなどで動的なページを生成するものなど、これまでのようなテキストベースのコンテンツだけでなく、PCに近い表現ができるようになってきました。

株式会社イオス代表取締役社長 吉田悟美一(さとび)氏。1998年、株式会社イオス設立。モバイルサイトのデザイン化を提唱。次世代モバイルサイト構築プラットフォームを開発提供する。著書に「ケータイ小説がウケる理由」(マイコミ新書)がある  http://www.e-o-s.net

株式会社イオス代表取締役社長 吉田悟美一(さとび)氏。1998年、株式会社イオス設立。モバイルサイトのデザイン化を提唱。次世代モバイルサイト構築プラットフォームを開発提供する。著書に「ケータイ小説がウケる理由」(マイコミ新書)がある  http://www.e-o-s.net


中谷 企業の意識が変化し始めましたね。CMを動画で配信するなど、他メディアとイメージを統一したいという企業が増えています。2008年4月にNTTドコモが企業のモバイルサイトを奨励するという方針を打ち出してから、モバイルに対して積極的な取り組みを始める企業が増えています。

トリムタブジャパン有限会社代表取締役 中谷健一氏。情報誌の編集者、アニメのライセンシグ/商品化を経て、2000年からモバイルに携わり、女性向けファッション情報サイトの立ち上げ、eコマースの立ち上げを行なう。2006年同社取締役に就任   http://www.trimtab.jp

トリムタブジャパン有限会社代表取締役 中谷健一氏。情報誌の編集者、アニメのライセンシグ/商品化を経て、2000年からモバイルに携わり、女性向けファッション情報サイトの立ち上げ、eコマースの立ち上げを行なう。2006年同社取締役に就任  http://www.trimtab.jp


―モバイルの使われ方の変化を指摘する声もありますが

吉田 ワンセグなどの影響で、モバイルでTVや動画を見ることが当たり前になり、録画しておいた番組をモバイルに転送して楽しむようになっています。また、ケータイ小説やモバイルショッピングを一人で楽しむように、一人で動画を見るという使い方が増えてきており、メディアのパーソナル化が進んでいることをうかがわせます。

中谷 企業側もこれまでは多機種への対応重視でテキスト中心のコンテンツを配信していたのですが、3Gモバイルによるインターネットアクセスが中心になったことで変わりました。マクドナルドの成功事例も大手企業が注目するきっかけになっており、GUCCIやポルシェなど高級ブランドの参入は1年前には考えられませんでした。

―リッチコンテンツの使われ方について

吉田 エンタメ、求人関係、地方企業など様々な分野でリッチコンテンツのニーズがあります。インディーズレーベルなどは、着うたからヒットが生まれることでプロモーションビデオのモバイル配信を考えています。求人では、特に若年層や女性に対してPCを使わずに情報を提供しようと考えています。また、地方都市ではPCの利用頻度が低く、モバイルでさまざまな情報発信を行っているケースも見られます。

中谷 PCはだめでもモバイルなら使える、という高齢者が増えてますよね。PC離れが進んでいることも、モバイルが注目されている理由の一つです。また、ASPの拡充でモバイルの参入コストが下がり、これまで参入を躊躇してきた企業が一斉にモバイル層をターゲットに仕掛けてきたという面もあります。

吉田 ただ、ターゲットがPCからモバイルに変わっただけで、その違いを意識していない企業も多い。ユーザーの使い方と企業の意識には、まだまだギャップがあります。ユーザーは、企業担当者が考えている以上にモバイルを使いこなしているのにも関わらず、企業担当者の方がモバイルを理解できず、どのような情報提供を行なえばよいか迷っているような面もありますね。

―企業が対応できていないのはどのような部分ですか

吉田 Web担当者が兼任していることがほとんどで、特にモバイルに詳しいわけでもないため、モバイルユーザーへのアプローチが不慣れかもしれません。PCサイトの方法論をそのままモバイルに適用することになり、結果として失敗するケースが多く見られます。モバイルマーケティングの情報も少なく、中小企業に有用な情報がない。大手企業ほどコストはかけられないから「やめよう」となってしまうこともあるようです。

中谷 企業担当者だけの責任でもないと思います。モバイル広告やマーケティングがビジネスとして成り立つには、どの位のレスポンスが得られるのか、ROIはどのくらいあるのかなどの効果測定が重要。しかしソリューション企業にその発想がないことがある。これについては株式会社EBAの前田さんが、興味深いソリューションをお持ちだとうかがいました。

前田 モバイルを活用したマーケティングリサーチにより、低コストで確実なデータが得られる方法を模索しています。主にイベント会場などで、配布するチラシにQRコードやURLを印刷し、モバイルサイトにアクセスしてアンケートに答えることでプレゼントが当たるという仕組みです。いくつか事例をご紹介しましょう。

株式会社E.B.A.CEO 前田庸行氏。1990年、物流会社株式会社アクセル創業。海外通販ソリューション、DMなどのメール便事業を展開。2002年に全事業から撤退後、06年から現職。商業印刷とモバイルによるマーケティング事業を中核に、「便利な社会創造」を目指したビジネスモデル構築に取り組む

株式会社E.B.A.CEO 前田庸行氏。1990年、物流会社株式会社アクセル創業。海外通販ソリューション、DMなどのメール便事業を展開。2002年に全事業から撤退後、06年から現職。商業印刷とモバイルによるマーケティング事業を中核に、「便利な社会創造」を目指したビジネスモデル構築に取り組む


(1)女性アーティストのコンサートでの調査
 中高年に人気のある、女性アーティストのコンサート会場で行なったマーケティングリサーチの事例です。ファンクラブメンバー対象に、オリジナルオルゴールのニーズについての調査でアンケートを取りました。5000人中200数十名の回答者による結果では、「オリジナルオルゴールが欲しい/興味がある」が合計で97%にもなりました。限られたマーケットの中で、この結果を元にすれば売れ残りは出ないと考えられます。

(2)手芸関連イベントでの調査
 団塊の世代や主婦層をターゲットとした趣味のイベント会場でのマーケティングリサーチ事例です。30代から60代が中心で、3日間で10万人の来場客。イベントでのモバイルの使い方についてフリーアンサーで聞きました。特筆すべきは、回答者の中に60代が含まれていたことです。この年代が携帯電話でアンケートサイトにアクセスして答える時代になったのです。フリーアンサーは紙のアンケートよりも詳細な答が多く、アクセス時間帯も夜中でした。

―モバイルならではの面白い結果が得られた

前田 モバイルによるマーケティングリサーチは、ハガキや紙のアンケートをモバイルに置き換えたものと考える企業が多いようですが、モバイルを使ったマーケティングは全く別のものです。他のアンケートとは違って、かなり本音で意見を語ってくれています。

中谷 確かにそれは言えますね。モバイルではダイレクトに相手の意見が伝わってきます。例えば、PCのアドレスに送信したメールはいつ開封されるか判りませんけれど、モバイルなら送ればすぐ相手に届くような、ダイレクト感があります。ある食品メーカーのエリア限定テスト販売では、ハガキをQRコードに替えてモバイルサイトでのアンケート入力にしたところ大幅にR&Dコストが下がった。そればかりでなく、ユーザーの参加意識が高まり、企業評価が向上したそうです。

吉田 アンケートハガキは書く手間や集計の手間がかかったり、リアルな意見が取れずに販売結果とマッチしないなどの問題がありました。モバイルによるマーケティングは直接ユーザーから生の意見が聞けることや、カメラなどでその商品の使用状況を撮影して送信してもらうなど、これまでにないメリットがありますね。

前田 例えば、紙のアンケート用紙に書かれたフリーアンサーを入力するとなると、かなりのコストがかかります。その他の情報も同様にデータ化するにはコストがかかります。ところがモバイルでアンケートを取ると、属性をそのままにデータに紐付けして分析することが可能です。モバイルという特徴を活かすことで、低コストで質のよいマーケティングデータを収集でき、確実な売上を見込むことが可能になります。ぜひ中小企業の方も、モバイルマーケティングにチャレンジしてみることをお奨めします。
( 聞き手:勝山尚武、写真:岡部ユミ子 )


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