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企業で導入進む「テレワーク」、少子高齢と地震多発の時代迎え高まる期待

会社の事務所以外で勤務する「テレワーク」が普及段階に入りつつある。子育てや介護を抱えながら働いている人々の離職を防ぐとともに、災害時にオフィス外でも業務が継続できるため、企業の危機管理面からの効果も期待されている。一部の会社や官庁、自治体が導入を始めており、今後は中小企業にも広がりそうだ。インターネット時代ならではのテレワークは、日本の労働人口減少という課題解決につながる仕組みとして急速に期待が高まっている。

月末の多忙週も会社内は閑散


月末で多忙な月曜日だというのに日本MSの品川本社はテレワーク実践中のため閑散

 先月27日の夕方5時、普段は約2500人が働く東京・品川にある日本マイクロソフト(日本MS)の本社ビル内は、人の姿を見つけ出すことが難しいほどに閑散としていた。ビル入口の受付スタッフと警備員がいなければ、臨時休業日といった様相だ。

 マーケティングや営業部門の270名が勤務するという24階のフロアにいた社員は3~4人。

 週明けの月曜日、なおかつ「月末の追い込みで忙しい時期」(同社)にもかかわらず、日本MSはこの日から5日間、全社員にテレワークを推奨する“強化週間”に入っていた。

 「ほとんどの社員は自宅や外出先でテレワークをしている。私は夜に近くで会合があるためオフィスへ来た」と織田浩義執行役常務は明かす。

日本MSなど20社以上が一斉に実践


日本MSでは樋口泰行社長(画面内)自らがテレワークを実践し、Web会議システムを通じて役員らとコミュニケーションを図った

 これまで日本MSは、社員に最大週3日のテレワークを認めるだけでなく、年に一度は全社的に取り組む期間を決めて運用ノウハウを蓄積した。3年目となる今年は、KDDIやNTTコミュニケーションズなど全国20以上の企業や自治体と連携。ノウハウを共有しながら、共同で推進する形に発展させた。

 そのため、期間中は日本MSのオフィス内をテレワークスペースとして開放。連携企業の社員が同社内で“勤務”する様子も見られた。

 日本MSがテレワークに積極的なのは、自社が販売するクラウド型ソフト「office 365(オフィスサンロクゴ)」の有効性を実証したいとの思惑も見え隠れするが、「いつでもどこでも業務を可能とすることで、スピード感あふれる仕事を実践する」(同社)との目的が大きい。

 「テレワークは特定の人だけの制度ではなく、あらゆる人が活躍してもらうためにある」(同)といい、働き方を変えること自体が目的ではなく、社員が成果を出すための最適な仕組みとして導入を選んだようだ。

大震災後に脚光、国も助成金で後押し

 テレワークは「tele=離れた所」と「work=働く」をあわせた造語。ITを活用し、場所にとらわれない働き方を意味する。自宅で仕事を行う「在宅勤務」や「ノマドワーク」(自由な場所で働くこと)もそこに含まれる。既に言葉自体は1990年代から使われ始めており、“古くて新しい仕組み”といえる。

 2011年に起きた東日本大震災後、首都圏でも外出や出勤が困難になったことから、企業の事業継続(BCP)の観点から再び脚光を浴びた。国も女性の活躍を促す目的もあって導入を支援。最近では、公的な助成金制度も設けられている。

 また、スマートフォン(スマホ)やタブレットが急速に普及したことで「いつでもどこでも仕事ができる」という意識がビジネス界に浸透しつつあり、テレワーク導入への追い風となっている。

思いがけないビジネスも生まれる


ミサワホームではテレワークの普及を見込み、在宅勤務に適した住宅設計を提案する

 テレワークの実現には、インターネットに接続されたパソコン(PC)をはじめとしたIT機器が欠かせない。

 これらを管理したり、スムースに業務を行えるようにしたりするための基盤整備や関連ソフトウェアを提供する側のIT市場も成長が期待される。IDC Japanの調べでは昨年は前年比6%増の1828億円超の規模と推定され、今後5年間は5%以上の成長を見込む。

 また、IT分野以外でも「テレワークによって思いもかけぬビジネスが生まれる」(日本MS)と言われる。

 たとえば、カラオケボックスは、電話やWeb会議を気兼ねなく行えることからテレワークを行う際にも適しており、思わぬ需要が生まれる可能性もある。自宅で快適に仕事を行うため、個人が機能性チェア(椅子)や机を新たに購入することもありそうだ。既に商機を見越し、テレワークに最適な作業部屋を設けた住宅を提案するメーカーもある。

課題は管理や意思疎通をどうするか

 一方でテレワークの導入には、まだ壁があるのも事実だ。多くの企業では、顔の見えない場所にいる社員の仕事ぶりをどう管理し、サポートするかに頭を悩ませる。

 コミュニケーション手段として、電話やWeb会議、メールといったネット(通信)を使わなければならず、従来の「フェイス・トゥ・フェイス」を前提とした業務スタイルを変える必要もある。

 生活と仕事の場所が同一化したり、近接化したりすることで安易な休日勤務や長時間労働が起こりかねず、労務管理面でも懸念が残る。

 PCやスマホ、タブレットを通じた業務であっても、そこにオフィス内と同じ環境を作り出せるかが課題だ。

 とはいえ、テレワークによって、通勤や移動時間が短縮され、働く側の生活環境改善が期待できるのも事実。企業側も業務効率化や経費削減にもつなげられ、BCP対策上でも有効な手段となる。

 地震の多発期に突入し、加えて少子高齢化も迎える日本。そんな時代に従来の業務スタイルに固執し続けることは、決して得策ではないはずだ。

【参考記事】IT時代に脚光浴びる佐賀県 自治体で初めて全庁テレワーク導入(2014年11月12日)

【参考記事】会社のオフィスだけが仕事場ではない!再び脚光浴びる「テレワーク」(2014年1月10日)

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